見出し画像

くじらの夢【発掘音楽調査ファイル 5】

みなさま、ごきげんよう。

私、ぴよむにだがお送りする「発掘音楽調査ファイル」はインディーミュージックシーンの海に飛び込み、人々が未だ見ぬお宝ミュージックを発掘するブログ企画である。

第五回目はくじらの夢を見るために…、おやすみ…。ぐぅ。

寝ている場合ではない

くじらで思い出したが、私は少し前に韓ドラにどハマりし観漁っていたのだが、
初めて観た韓ドラがパク・ウンビン主演の「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」というドラマだ。
自閉スペクトラムの主人公ウ・ヨンウ弁護士が弁護する中でさまざまな人びとと関わり成長していくヒューマン・ドラマなのだが、ウ・ヨンウ弁護士は海洋生物(主にくじらとイルカ)が好きで、彼女がアイデアを閃く時にくじらのCGが流れる演出がある。
社会問題に切り込んだ現実的な内容にも関わらず、現実世界に不釣り合いなくじらのエフェクトが現れることで、まるで夢を見ているかのような映像を体験できるのでおすすめ。
もちろん、内容もとても面白いドラマだ。

前置きが少し長くなったが、今回はくじらにまつわる素晴らしいバンドを紹介する(私はくじらという単語はひらがなで書きたい)。

夢みる海岸 - EP / くじら座

くじら座東京の3人組バンドだ。

大学時代の音楽サークルのメンバーを中心に結成され、2024年より本格的にライヴハウスでの活動を開始する。

現在は新宿Marbleを中心に精力的にライヴ活動を行っている。

そんな彼らが今年2023年5月23日にリリースした1st EP「夢みる海岸」。

現実的な街にくじらが浮かんでいるジャケットが印象的だ。

空もどこか非現実的な色をしており、まるで夢の中が可視化されたような絵画である。
ジャケットなどのイラストはすべてドラムの細川氏が手掛けており、どれも独創的で見るたびに味のある絵画だ。

1. 恋の歌

ヴォーカルの中性的なやさしい声からはじまるナンバー。

彼のヴォーカルは私の敬愛する草野マサムネ氏に次ぐ稀代の声だと思っている。

この曲の主人公はシャツの散らかった部屋で、淡い恋の歌を口ずさみながら二度寝するのだろう。昨夜ゆうべのことを思い出しながら。

昨夜振られたけれど、まだ彼女を好きな気持ちが残っている。いや、遺っている
ふたりの関係はわからない。付き合っていたかもしれないし、これから付き合おうと思って告白したかもしれない。

恋の歌という題名だが、恋は恋でも失恋の歌な気がする。

いい意味で捻くれている感じが、たまらなく好きだ。

主人公が流行りの映画を見るのも良いかもと思ったのは、振られた相手が若い子だったからかもしれない。

気晴らしに冷やかしで観にいく意味も込められているような気もする。

最後の「もういっそ灰になってしまえば」というフレーズ。もしかしたら「ハイになってしまえば」かもしれない。

2 .クチナシ

カーテンを揺らす生ぬるい風は「きみ」の前髪を静かに揺らしている。
恋人かはわからないけれど、窓辺のテーブルに頬杖をついて外を眺めている風景が浮かぶ。

街ではクチナシが咲いている。

クチナシは漢方薬の山梔子サンシシとしても用いられるようだ。
サンシシという名前は知っていたが、これがクチナシだとは知らなかった。

着色料にも頻繁に用いられる。

紫陽花も咲く雨上がりの街。

主人公が天気予報はあてにならないとぼやいていることから、6月ごろの梅雨時期なのだろうか。

突然の天気雨にうんざりしている主人公の姿が思い浮かぶ。

夢みる海岸という単語はこの曲で登場する。

主人公はこの季節あるいは今の状態にうんざりしているが、その中にも何かを見出しているように感じる。

3. 春

出会いと別れの季節。

切なさと期待感と焦燥感。

ついでにわずかな怒りも混ざっているように感じる。

冬が終わった直後の、まだ少し薄ら寒い風の吹く季節。
冷たい水と言っていることからも、まだ雪は溶け切っていないのかもしれない。

主人公がいちごジャムの空き瓶を濯いた水は、指先を伝って知らない場所へ流れていく。
離れ離れになった人の行方を暗示しているのかもしれない。

サビの「いちごジャム〜」の部分は一度聴くと頭からなかなか離れなくなる。
中毒性のあるフレーズだと、個人的に感じる。

私は特にこの曲の間奏のベースラインが大好きだ。

春の嵐がうねるようなベースライン。
その後ろで静かに暴れるディストーションギターが楽曲のスパイスとなっている。

イントロとアウトロのやさしいクランチギターの音も好きだ。

4. ユートピア

Aメロはユートピアを目指し散歩しているかのような、しかしながら若干不穏な雰囲気だ。

Bメロでリズムが切り替わると同時に雲間を切り裂いて太陽が出てくるような風景が思い浮かぶ。

重金属の太陽という単語も、ジリジリ暑い日差しが差しているということを想起させる。

主人公または主人公たちは海を目指して歩いているのかもしれない。

とても情景が思い浮かぶ曲だ。

アウトロで疾走するのは、ユートピア(海あるいは砂浜)を見つけて走り出し、そのまま飛び込んだからなのではないかと妄想する。

おわりに

いかがだっただろうか。

くじら座の曲はすべてに想像する「余地」がある。

曲自体が音楽を含め「詩」だ。

私は意味がかっちり決まっている曲よりも、想像する余地のある曲の方が大好きだ。

また、彼ら3人それぞれの個性がうまくブレンドされて1つのバンドとして凝縮されているスーパーグループだと思う。

初ライヴ以来ライヴに行けていないので、近々ライヴに行きたい。

私は余裕で売れるバンドだと思う。

バンドのX(旧:Twitter)では主にライヴ情報がポストされているので、興味を持った方はぜひチェックしてみてほしい。

それでは、また次回の調査でお会いしよう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?