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鍵の在処【天候術師のサーガ 37】

翌朝

ナナミとアガヴェは
アガヴェ家の面々とともに
朝食が用意されたテーブルについた


 はい、
 みんな揃ったわね。
 それでは手を合わせて。
 ── アガヴェのママ

 いただきます。
 ── みんな


朝食の席には
もちろんアガヴェのパパも居た


 ごちそさま。
 ── アガヴェの妹、アウトネ

 あら、もういいの?
 しっかり食べないと
 頭が働かないわよ。
 ── アガヴェのママ


アガヴェのママは
アウトネを説得したが
彼女は聞く耳を持たなかった


 ポリくんは偉いわね。
 しっかりご飯食べて。
 ── アガヴェのママ

 うん!
 だって、ママの作ったご飯、
 美味しいもん!
 ── アガヴェの弟、ポリドラス

 ま、なんて嬉しいのかしら!
 ママ、チューしたくなっちゃう!
 ちゅっ!
 ── アガヴェのママ

 やめてよ、恥ずかしいよ。
 お姉ちゃんたち見てるよ?
 ── ポリドラス


家族各々で様々なやりとりがなされるなか
ナナミとアガヴェは
常にパパの動向を監視していた

時折ふたりは目配せしながら
相槌を打ったり打たなかったりしていた


 なんだ?
 どうかしたのか?
 ふたりとも。
 ── アガヴェのパパ

 いやっ、なんでも、ないです。
 ── イノリゴとうの少女、ナナミ

 うん!
 なんでもない、なんでもない。
 ── しまギャル、アガヴェ

 学院アカデミーがないからって
 だらだらしていてはいかんぞ。
 ── アガヴェのパパ

 は〜い。
 ── ナナミとアガヴェ

 ご馳走様でした。
 ── アガヴェのパパ

 相変わらず、
 パパは食べるのが早いわね。
 ── アガヴェのママ

 ママ、
 後で私の部屋に来てくれ。
 ── アガヴェのパパ

 !
 は、はい…。
 わかり…ました。
 ── アガヴェのママ


この時のママは
明らかに先ほどとは
異なる表情を浮かべていた


 『やっぱり何かおかしい。』
 この家族には何かある。
 ── ナナミ

 ナナミや、
 あまり人の家の事情に
 踏み入るでない。
 ワシらはあくまでも
 居候させてもらってる
 身なのじゃからな。
 ── ナミナおばあちゃん


ナミナおばあちゃんは
腹話術のように
口を閉じたまま
小声でナナミに囁いた


朝食時の会話以外
パパに特別違和感のある部分は
見当たらなかった

ナナミはトイレに行くふりをして
席を立つパパの後をつけた


すいません…。
 トイレってどこですか?
 ── ナナミ


ナナミはパパの部屋の前にいるパパに
トイレの場所を聞きがてら
ドアの鍵の様子を横目で見た


 トイレは
 そこの曲がり角を曲がった先
 右側にある。
 ── アガヴェのパパ

 あ、ありがとうございます…!
 ── ナナミ


ナナミはトイレに入り
魔導デバイスで
アガヴェに電書メールを送った


昨日 アガヴェの部屋

 ナナミっち、
 もし何かあった時のために
 魔導デバイス魔デバ持っといて。
 ── アガヴェ

 持っといてったって、
 アガヴェちゃんはどうするのさ。
 一台あったって使えないでしょう?
 ── ナナミ

 あ、それ
 うちの前のやつだから大丈夫。
 今使ってるのはこっち。
 ── アガヴェ

 あ、そうゆうことね。
 で、これどうやって使うの?
 ── ナナミ

 そうだった…!
 ナナミっちは魔デバ
 使ったことなかったよね。
 今から簡単な操作だけ教えとくね。
 ── アガヴェ


ナナミはアガヴェに教えてもらった
電書メールの書き方を思い出しながら
トイレで一生懸命描いた


 け、んきゅう、しつ、の
 どあ、な、んだ、けど…。
 ── ナナミ

ピロン

アガヴェの魔導デバイスが鳴った

 『剣道室の胴小手面だけど
 指門うに醤油だった』
 は?
 ── アガヴェ


アガヴェは困り果てながら
ナナミに電書メールを送った

 『よくわからん( ;  ; )』
 ── アガヴェの文面

 え、なんで〜!
 ── ナナミ


ナナミはそのままトイレから出た


38へつづく

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