風船配りのピエロ 【地底帝国の詩 112】
どうして戻るのさ。
── 段城矢真十
ヤマトが不服そうにアサツキへ八つ当たりした
きみはその勾玉光輪でバリアを張って
刃の攻撃を防ごうとしたかもしれないが、
そんなことしてたらきみの首は
こう、だぞ。
── 公社の研究員、アサツキ
アサツキは首を掻っ切るジェスチャーをした
やってみないと分からないじゃないか!
── 段城矢真十
世の中にはあえてやる必要のないことだってある
ということを覚えておいた方が良い。
あのままだときみは確実に死んでただろう。
── アサツキ
でも…!
── 段城矢真十
いいか?
オトナの言うこともたまには聞くもんだぞ?
── アサツキ
ヤマトの言葉を遮って
アサツキは語気を強めて言った
ヤマトたちは
再度下の階へと戻り、装備を整えた
やはりか。
「あれ」はどうやらきみたちが隠れていた
「培養カプセル」から放たれた検体のようだ。
昨日はそこに居た。
今朝も居た。
居なくなったのは、ついさっきということだ。
きみたちを疑いたいのはやまやまだが、現実的に考えると可能性は低い。
そのまま戦闘になって、ここら一帯は破損するだろうし…、
何より警報だって鳴るはずだ。
それに、ここにあった検体は三体だ。
あそこには何体居た?
── アサツキ
…四角に四体.。
── 段城矢真十
ということは、
うち一体は別の場所から来たか…、
何者かが擬態した可能性が高い。
特に気をつけた方が良い。
…ところでダンジョウくん。
風船は好きか?
── アサツキ
…え?
── 段城矢真十
風船は好きか、と聞いている。
── アサツキ
いや、別に嫌いじゃないけどさ…。
── 段城矢真十
* * *
上の階でエレベーターの扉が開くと、
明るい笑顔で手を振りながら
ヘリコプターのついた風船を操るヤマトたちが居た
113へつづく
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