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"水力発電が日本を救う”を読んで

読んだ理由

パリ協定により、カーボンニュートラルが一世風靡する時代となった。国はカーボンニュートラルのために様々な方針(Link)を打ち立てているが、どの方針も多額の税金を投入しないとできないものに見えた。既存のリソースのみで、なにかできないか考えているときに、この本に出会った。

概要

海に囲まれ、山間部が多く、雨が良く降る日本は水力発電に適した地形である。
水力発電開発は以下の4つの方向で考えるべき。
 ①多目的ダムの運用変更
 ②既存ダムのかさ上げ
 ③発電に使用されていないダムに水力発電を設置
 ④砂防ダム・農業用水路などにおける小水力発電の設置

興味

巨大ダムをもう増やすことはできない。

⇒巨大ダムの建設には、大規模な工事が必要となるため、環境や地域住民への負荷が大きい。巨大ダム建設の候補地があったとしても、日本経済が衰退している現状、そのような負荷は時代にそぐわない。

多目的ダムには水が半分程度しかたまっていない。

⇒「特定多目的ダム法」により、ダムの目的は「利水」と「治水」である。水を利用する利水と、水を貯めておく治水は矛盾するため、半分しか水を入れておけない。
 水を半分しか入れておけないから、発電量が減ってしまう。天気予報が発達した現在では、水の嵩の調整は容易であるため、もっと水を貯めておけるようにすべき。日本はダムから海までの距離が短いため、放流しても翌日には海まで水が流れる。

多目的ダム法は制定(1957年)以降改定されていない。

⇒多目的ダム法は50年前の技術レベル(天気予報)を反映しているため、現在にそぐわない。現在の技術レベルを考えれば、水の嵩を上げても問題ない。
 多目的ダム法の親玉は「河川法」である。河川法は時代に則して改定を続けており、制定当初は治水を目的としていたが、現在では治水・利水・環境保全が目的となっている。ここに”エネルギー利用”の項目が増えれば、多目的ダム法も変わってくると予想できる。
 ただし、法律の改定には予算をとれないため、環境省の誰もがやりたがらない。そして法律の改定は省庁を横断的に行う必要があるため、国会議員が動かない限り、内部からは改定の動きは出ないだろう。

日本のダムは強固であり、数百年を超えて運用できる。

⇒コンクリートのみで作られているため、都会の建造物のように鉄筋によるさびなどを気にしなくてよく、ダムは天然の岩と同じである。
 硬い地層に直接コンクリートを打って基礎にしているため、地震が起きても壊れることはない。
 ダムのコンクリート厚みは数十mを超えるため、山と一体となっている。
⇒日本は地震大国であるが、全国の何千というダムで、ダム本体が壊れたことはない。

ダムの建設費は高くない

⇒ダムの総事業費の3分の1がダム本体の土木費用。そのほかは、住民への補填費用、代替道路・代替鉄道の建設費用などに掛かっている。そのため、ダムのかさ上げには、土木費用のみを追加すればよいため、効率的に発電量を上げることができる。

感想

 原子力に反対し、資源がないのに火力に頼る日本には、水力発電が最も有効な発電方法に思える。筆者の書くことがすべて本当ではないかもしれないが、水力発電にはまだまだ伸びしろがあるなら、それをやらない手はないように思える。
 数年後の票集めばかりをせずに、国会議員は10年後の未来を考えて動いてほしい。

読書期間 2022/4/18~2022/4/21


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