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マスターのコーヒー

「いらっしゃい」

ドアを開けるとマスターがくつろいでいた。
「暇かい?」と尋ねると「どう見える?」と聞き返してくる。
これはマスターの癖だ。いつも質問に質問で返してくる。
私は「暇そうだね、おすすめを。」と注文をする。
しばらくするとコーヒーの香りが漂ってきた。
「今日のおすすめはなんだい?」と聞くと「なんだと思う?」とマスターは返す。
「コーヒーは好きだけどそんなに詳しくないからさ。」と答えると、「ばっちり。」マスターはそう答えた。
「お待たせ。」と出されたコーヒー。一口。また一口。
飲みたかった味。求めていた味。
私は何となく、マスターが質問に質問で返してくるのはその人にピッタリのコーヒーを淹れるためなのではないかと、そう思う。
確信はない。聞いても「どう思う?」としか返ってこないから。
でも私は質問返しにとことん付き合う。
そうすれば、まごうことなく好みの味に出会えるから。

ーMAGOKOTONAKI COFFEE
      澄空町(すみそらまち)にある喫茶店。
      今の自分にピッタリな味に出会える。

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