ライブドア事件
こんにちは。
「いってらっしゃい」でおなじみのホリエモンですが、人工太陽とも呼ばれているフランスの核融合炉に行ってきた動画を見ていると、ドラえもんの「秘密道具ミュージアム」を思い出してしまったのは私だけでしょうか。
さて、誰もが知っているホリエモンですが、過去に起きたライブドア事件をめぐる裁判について詳しい人は少ないかもしれません。そこで今日は、ライブドアの株主たちが損害を被ったとして提訴した「ライブドア事件」(最判平成24年3月13日裁判所ウェブサイト)を紹介したいと思います。
1 どんな事件だったのか
東証マザーズに上場していた株式会社ライブドアは、その支配下にあった投資事業組合を通じて、実際にはすでに買収済みであったマネーライフ社に対して、株式交換比率を1:1とする株式交換、つまり自社株式で他社の株を買い付けました。このときマネーライフの企業価値が1億円とされていたにもかかわらず、4億円と過大評価したことが問題となりました。その他、ライブドアが実際には赤字
経営であったのにもかかわらず、売上げ計上が認められないライブドア株の売却益、その他架空の売上を売上高に含めて、経常利益を約50億円と虚偽記載を行ったことも問題となりました。そのため東京地方検察庁が、金融商品取引法違反の容疑で強制捜査を開始し、代表取締役のホリエモンらが逮捕されることになったのです。その後、ライブドアの株式が監理ポストに割り当てられ、最終的に上場廃止となったことから、ライブドア株式を保有していた投資家らが、ライブドアやホリエモンら取締役に対して、金融商品取引法21条の2に基づく損害賠償を求めて提訴しました。
2 投資家らの主張
金融商品取引法21条の2では、「有価証券報告書などの開示書類に虚偽記載などが存在した場合、その提出者に、流通市場で有価証券を取得した投資家に対する無過失の損害賠償責任を課すとともに、虚偽記載などの事実の公表日前1年以内に有価証券を取得し、公表日において引き続きその有価証券を有する投資家については、公表日前1カ月間の有価証券の市場価額の平均額と、公表日後1カ月間の有価証券の市場価額の平均額との差額をもって、虚偽記載などによって生じた損害の額と推定することを認めている。
なので、ライブドアに有価証券報告書の虚偽記載の容疑があると検察官が報道記者に伝達した2006年1月18日を公表日として、その前1カ月間の市場価額の平均額が1株720円で、その後1カ月間の市場価額の平均額が1株135円、その差額の1株585円が損害額となるはずだ。
3 ライブドアの主張
ライブドアの株式について、1月17日の終値596円から公表後1カ月間の平均額135円までの461円の下落に影響を与えたと考えられる事情のうち、ライブドアに対する強制捜査の開始、ホリエモンらの逮捕、代表取締役の解任、連日のマスメディアによるセンセーショナルな報道、フジテレビ幹部によるライブドアとの連携見直しの可能性の示唆、開示注意銘柄への指定や監理ポストへの割り当てなどは、虚偽記載などによって生ずべき値下がり以外の事情による下落と考えるべきである。よって金商法21条の2第5項に基づいて、約3分の2を減額した1株あたりの損害額は200円である。
4 最高裁判所の判決
金商法21条の2は、投資者の保護の見地から、一般不法行為の規定の特則として、立証責任を緩和した規定であると解される。そして、同条第1項にいう「損害」とは虚偽記載などと相当因果関係のある損害を全て含むものと解されるところ、同条2項にいう「損害」もまた虚偽記載などと相当因果関係のある損害を全て含むものと解するのが相当であって、これを取得時差額に限定すべき理由はない。
また金商法21条の2第5項にいう「虚偽記載等によって生ずべき当該有価証券の値下がり」とは、取得時差額相当分の値下りに限られず、虚偽記載等と相当因果関係のある値下りの全てをいうものと解するのが相当である。
よって、ライブドアは投資家らに約11億1000万円を支払え。
5 虚偽記載による損害
今回のケースで裁判所は、有価証券報告書等の開示書類に虚偽記載がある場合に、有価証券の実際の取得価額と虚偽記載がなかった場合に想定される市場価額との差額に止まらず、虚偽記載と相当因果関係のある損害も広く含まれるとして、ライブドア側に高額の損害賠償を命じました。
ただし、これに対してはそもそも投資にはリスクがあることが前提となっているにもかかわらず、投資家が保護されすぎているのではないかとの意見もあります。この事件を通じて、投資のリスクを考えるきっかけとなれば幸いです。
では、今日はこの辺で、また。
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