自分をプロだと思ったことは一度もないが

これと言って、noteに書くネタが無い。というわけで、たまにnoteを見ていると出てくるタグ、「#私の仕事」で私も書いてみようかと思う。

現在の私の仕事は、産休を挟んでかれこれ8年ほど続けているのだろうか。日々やっている業務をざっくり説明すると、フルーツを切ったり飾ったり、クリームをぬったり絞ったりである。まぁ、平たく言うと、ケーキを作る仕事をしている。

というと、大抵の人はこう言うのである。

「え、パティシエ!?すごい!」

「いやー。そんなすごいものじゃないですよー」

と言うこともあれば、曖昧に笑ってその場をやり過ごすこともある。自分では全くすごいと思っていないし実際にすごくもないので、相手からの尊敬の眼差しは素直に受け止めきれないのである。

そもそも私は、特別お菓子作りが好きなわけではない。子ども時代に人並みに家でお菓子は作ってきたが、これを職業にしたいと思ったことは一度も無かった。親戚にケーキ屋をしている人はいるが、だから私も!と思ったことは一度もない(この親戚は子どもの頃からケーキを作ろうと思い、製菓学校に行き、海外にも修行に行き、自分の店も持っているプロである)。

それなのになぜ、今ケーキを作っているのか。実は前職(全く関係ない工場系)の職場が無くなることになり、工場長から紹介されたのが今の職場だったのである。特別お菓子に思い入れは無かったし、製菓学校にも行っていない。知識も経験も全くゼロだったわけだが、この仕事をすることになった。何かを作ることは昔から好きだし、仕事もずっと何かを作る系だったので、ケーキを作る仕事も面白いかなぁと、そのくらいの気持ちだった。

お菓子を作ると言っても、その全てが専門性の必要なことばかりではない。最初はクリームをはかって乗せるだとか、フルーツを切って乗せるだとか、そんな誰でもできそうな仕事から始まった。とは言え、ゴムベラ1つとっても使い方にはコツがあるし、慣れていないうちは他の人ほど素早く綺麗にボウルからクリームを取れないのである。ただでさえ器用な方ではないし、周りは仕事の早い人ばかり。慣れないうちは大変だった。

そのうちゴムベラの扱いにも慣れ、フルーツを切ったり飾ったりにも慣れ、クリームを絞るのにも慣れ、ナッペ(スポンジの台に綺麗にクリームをぬるアレ)もできるようになり、プレート(お誕生日おめでとうとか人の名前を書いたりとかのアレ)も書けるようになり、ムースやクリームを作ったり、もっと言えば新商品のケーキを考えて提案するくらいにはなった。

そこまでできるなら、プロじゃないの?と思う人も中にはいるかもしれないが、上には上がいるし私は焼き場(スポンジを焼いたりとか)を経験していないし、知識は全然足りていないしで、とてもプロと名乗ることはできないと思っている。もちろん全くやっていない人と比べればできることは多いし知識もあるが、この仕事をしている人の中では下の下じゃないかなと思っている。始まり方が始まり方だったこともあり、他人から「すごいね!」と言われても、「あーまぁそうですかねぇ」と曖昧に笑うだけである。

そもそも、今の自分の仕事に対して「自分はプロである」と胸を張って言える人はどのくらいいるのだろうか。定義上、お金をもらっていればそれだけでプロかもしれないが。「プロ」という言葉には「一般の人よりも知識も経験もあり、すごいことができる人」というイメージがある。

自分でどう思っていようと、その会社に所属している以上、外から見れば皆プロかもしれないし、お金をもらっている以上、何かしら外に対して価値は示さなければいけないが。「○○のプロなんですね!」と言われてそれを素直に受け取れる人はどれだけいるのだろう。

お金をもらっている定義で言えば、世の中の仕事全てがプロの仕事なのである。コンビニの仕事ならコンビニ仕事のプロだし、レジ打ちならレジ打ちのプロである。オフィスワークな会社に勤めて何かしら仕事をしているサラリーマンやOLも、皆その道のプロなのである。

けれどその人たちの仕事を聞いても、「すごい!プロなんですね!」とはあまり言わない不思議。恐らく「ケーキを作っている」と言った時の方が「すごい」と言われる率は高い。皆それぞれに専門性があり、やったことがない他の人と比べれば仕事はできるはず。けれどより専門性があるように見えるのか、難しく見えるのか、「すごい」と言われる。

まぁ、自分が普段あまり触れないものを仕事としていると聞けば、「すごい」という気持ちはわからないでもないのだが。「すごい」と言ってくれる側の人の仕事を私はその人ほどできないし、どの仕事もそれなりに向き合ってやっていれば、専門性も身につくしある程度の技術は身につく。私に「すごい」と言ってくれるその人も、私から見れば「すごい」仕事をしているのではないかなぁと思うのである。

今の仕事をゼロからやってみて。他で使うことのあまりない専門的なことをやりはするけれど、慣れればある程度は誰でもできるものなのではないかなと思う。そしてそれは、どの仕事にも共通することなのではないかなと感じる。もちろん、その道のトップ集団に入ろうと思えば、それだけでは駄目なのだろうが。お金をもらって普通に生活する分には、他の仕事と何ら変わりはない。そう思う。

だからこそ、「パティシエ!すごいね!」という視線には耐えられないのだが。大抵ケーキは特別な日に食べるものだし、お客さんに「楽しい、嬉しい、美味しい」を提供するものだということを、忘れてはいけないなとは思う。相手に「すごい」と言われることを素直に受け取れる程、高みを目指そう!とは思わないが、お客さんが満足できる、安心して食べられる商品を、これからも作っていきたいなとは思う。

あまり自分の仕事内容に関する話ではなくなってしまったが。また書くネタがない時にでも、もう少しちゃんと、ケーキをの話をしようかなぁ。どうにも自分が思う以上に、人から「すごい」と言われることを気にしていたみたいだな。


ではまた明日。