まいける

結婚して7年弱。夫は結婚当初と変わらず、今でも私に対する褒め言葉(?)を頻繁に口にしてくれる。

普通に「好き」とか「結婚して良かった」とか。あとは容姿に対して「可愛い」とか「綺麗」とか。変わり種で「ちょっとその角度で止まってて!その角度いいよ!」という謎のものもある。

何となく私のイメージで、男性はそういう言葉は滅多に言わないものなのだと思っていた。だけど我が家では逆で、圧倒的に夫が言う方が多い。これは素直に夫の「すごいところ」だと思っている。

しかし、である。

特に容姿に対する褒め言葉に、付随する言葉があるのである。それが

「まだいける」。

例えば

「きょくさん、今日も綺麗だね。まだいける」

という風に使われる。

いやいやいや。

「『まだ』って何。『まだ』って。何で衰えるの前提で言うの!?」

何度言っても直らない。折角褒めてくれるなら褒め言葉だけでいいやん!何で余計な言葉をつけるのさ!

本人的にはそれも褒め言葉の一部らしく、衰える前提では言っていないそうなのだけれど、「まだ」ってことは「いずれ」があるってことなのである。

人間、生きていれば年をとる。身体はたるみ、シワも増え、白髪も増えていくだろう。見た目はどうしても、年齢と共に変わっていくのである。いつまでも若々しい見た目ではいられない。

しかし私はその年齢なりに全力で生きていくつもりだし、最終目標として「なりたいおばあちゃん像」は存在している。「まだ」では無いのだ。「いつも」いけてる人でいたいのである。

言われる度に「それは褒め言葉じゃないよ」と言っているけれど、全然やめる気配が無い。そこまでして言いたい言葉なのか?夫がよくわからない。


ある日、視線を感じた。視線の主は夫。しばし見つめ合った後、夫は言った。

「まいける」

「?? マイケルって何?」

「『だ』をのけてみた」

…………。

『 ま (だ) い け る 』  ってことか … !

そこまでして言いたい言葉なの!?言わなきゃいけない言葉なの!?

私にはわからない。しかし、この場面でこの言葉を使うのが夫という人なのだと思う。

おそらくこれから何十回、何百回と「まだいける」「うん、その言葉はやめようね」という会話は繰り返されるだろう。ふたりとも元気で、私が夫の「まだ」基準にいる間しか繰り返せないわけで。ある意味、幸せの象徴と言えなくもない。でもね。何度でも言うけれど。

人を褒める時は、純粋な褒め言葉だけでええんやで。


ではまた明日。