テンパリング

最近の仕事は、テンパリングで溢れている。1年で最もテンパリングをする時期に入ってしまった。

テンパリングというのは、簡単に言うと「チョコレートの結晶を安定させるためのもの」で、作業自体はチョコを温めたり冷やしたりして温度をあれこれ変えるだけである。
何でチョコレートに関するものをせっせとやっているのかと言えば、言わずもがな来月のイベントのためなのだけれど、まぁそれは置いておいて。

実は私は職場において「チョコがけのきょく」という二つ名を持っている。

「チョコがけ?じゃあ、きょくさんよろしく」

いつからか何故かチョコがけの仕事がほぼ回ってくるようになった。最初は「かけ専門」だったはずなのに、いつの間にかチョコ全般の仕事がくることになった。暗黙のうちにテンパリングの仕事も大抵私(かもう1人)がやることになっているのである。

このテンパリングという作業。名前は何かカッコイイけれど、正直、作業自体はとても地味である。

ケーキ屋ではスポンジ等々に綺麗にクリームを塗る「ナッペ」という作業があるわけだけれど、「ナッペ」は「冬のナッペ祭り」と表現しても違和感がないものの、「冬のテンパリング祭り」というと何か違う気がする。

ナッペはシャシャッと常に手を動かすし、その分完成していくのが見て分かる。綺麗に塗られたスポンジ台たちがそこにはズラッとあるわけである。まさに祭りに相応しい華やかさがある。

しかしテンパリングは、常に手は動かすものの、ひたすらチョコ(と温度計)とにらめっこなのである。温度計を使わないならば、チョコの状態だけを見て判断するわけで、そこには職人技が見え隠れするかもしれないが、そんな冒険をして失敗するくらいなら素直に温度計を使えばいいと思う。つまり、ただチョコを溶かして、一定の温度まで下げて、また上げる(テンパリング剤を使う時は上げなくていい)だけの作業なのである。それを指定の数ができるまで、延々何度も繰り返すわけである。

これは決して「祭り」ではない。どちらかというと。

「『○時間耐久テンパリングレース』って感じですよね」
「あーわかるー」

一緒に作業していた手がうにょうにょのAさんの賛同は得られたので、たぶん他にもわかってくれる人はいると思われる。

いやもちろん、その後チョコにいろいろ乗せるとかね、コームとかスプーンでシャーっとするとかね。あれば違うんですけどね。冬はとにかくすぐにチョコが固まるし、あんまり一回に大量に作れないし、テンパリング役はひたすらテンパリングし続けないと作業効率が悪いわけですね。チョコにも華やかな部分はある。ただテンパリングだけだと地味だよなぁという話。

まだまだテンパリングの日々は続く。今年はもっとチョコと仲良くなれそうです。


ではまた明日。