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【就活】出版社に全部落ちた僕は大学4年生の6月1日から就職活動を始めました。|就活編

記事概要

1, 志望業界を出版社のみに絞り、全てからお祈りを貰った私の話。
2, 現在、私は社内にて新たな事業の責任者をしています。
3, 就活全落から責任者になるまでの経緯をお話しする内容。
以上ご興味あれば、ぜひスクロールしてください。

自己紹介

どうも。自己紹介があまり得意ではない二井駿です。現在トレンダーズ株式会社の事業開発部で新規事業開発を行ってます。得意ではないと言っても、まさか誰ともつかない人間が書き並べる就活記録など見る気も失くすと思います。(少なくとも僕はそう)

まず先に僕の就活はどうだったのかお話します。学生時代から大学四年に至るまでの経歴を振り返りは、「学生編」へご覧ください!

就活時代

好きなものをやり尽くし、就職活動で語るネタだらけな人生。僕は大学4年生になり、満を持して就職活動を始めました。

唯一の志望業界は斜陽産業ではありますが、いまだに倍率400倍以上の狭き門の出版業界。

年収は昔やっていた家庭教師ビジネスの半分以下になりますが、それでも大好きな物語に携われる仕事は低い収入や安定性や業界の今後、合格難易度を鑑みても魅力的でした。なにより、僕はとても自信がありました。

立ち上げたビジネスで培ったコミュニケーション能力。営業力。度胸。勇気。それに付随する年上の人との会話、笑顔、雰囲気作り等々。それらが同世代の誰にも負けない自信がありました。

そして何より。自分以上に「物語」に塗れ、愛している人はいない——そんな確信が僕にはあったのです。しかし、結果から言ってしまえば、それはもうあっけないほどに全部、全社落ちたんです。

心当たりはいくつかあります。いくつかある中で最もなものをピックアップするならそれはそうですね。大変、愚かなことですが、僕はあの場の質問「君はうちで何がしたいのか」それに対し、「御社を潰すことです」と答えてたからかもしれません。

「根本的に業界を変えなきゃいけない」

「もっとユーザーベースに」

「もっとクリエイターファーストに」

「もっと出版社を小さく、存在感を希薄に」

そんな言葉を、夢みがちに、幼く、目を輝かせながら。時には議論の中で必死に語っていたからかもしれません。そんな独りよがりかつ、破壊的で、未熟で、頭のおかしい若者など、企業において邪魔でしかない。

企業にとって、採用活動は「自身の夢を語る者」を採る場所じゃない。あくまでも「企業活動に貢献してくれる者」を採る場所です。その中で、「御社の事業を破壊したい」

なんて、本気で語る若者を採る人間などいるわけもないです。そんな事実を見ず、省みず、独りよがりに夢ばかりを語っていた人間は、ある意味、落ちて当然。当たり前のことでしかないでしょう。今思えば本当に僕は愚かだと思います。

そして、それから。しばらくたって。僕の気持ちは固まりかけていました。以下のセリフのところに収まりかけていました。

「……あー、もう塾講師のままでいいかな」

収入で言えば、きっとそれなり。熱をこめてやれば、お金にはなる。自分と同じ境遇で、成績が悪くて、困っている子たちを1人でも助け、導く。その人にとって、その人の人生にとって、最も大事な人間の1人になって尽力し、邁進する。素晴らしい。

なんと世のためになることじゃないか。とても誇らしい仕事じゃないか。そう思わないか? なあ。

そんな言葉。大手鉄道会社に就職が決まった同級生へ漏らす、5月末日の夜。居酒屋で酔いながら、呟きながら、半ば、その気持ちを固めつつ、決めつけつつ、僕は彼に背中を押してもらいたかったんでしょう。終電間近まで、同じような事を僕は彼へ言ってました。電車を待つホーム、別れ際。最後、そいつは僕へ言いました。

「でも、お前に塾講師は向いてないと思うな」

その夜。なんとなくその言葉が引っ掛かり、その同級生へ打つLINE。しかし既読無視。別に腹は立ちませんでした。ただスタンプを300ほど送りつけ、その後ブロックをしただけです。

そして翌日。土曜日。二井家では土曜日の夕飯を家族で囲むのが暗黙のルールなのでそこで一つ、肴として僕の就活話が出ました。きっかけは……確かテレビのニュース。

『明日から就活解禁』
『内定保持率72%』
『売り手市場』

そんな言葉がきっかけだったと思います。

「どうだ? うまくいってるのか?」

大学に入ってから放任主義をとったらしい両親。彼らは僕の就活に特に口を出すこともありません。だから、これが父から出た初めての質問だったと記憶してます。

「いんや、全く」

僕は答えました。相変わらず母の作る煮物は旨いと思いながらの返答でした。

「大丈夫か?」

「うん」

「出版社はどうだった?」

「全部落ちた」

「まじか」

「うん」

なんとなく、息が詰まった感覚になりました。同時、煮物の味が一瞬分からなくなった気がします。

「……本当に大丈夫か?」

「まあうん、大丈夫。最悪、塾講師になる。まあ、就職浪人ってのもあると思うし」

雇ってくれるだろう知り合いが経営している会社を言葉に出します。上場企業の名前もあったので母は安心したようになりました。反対、父は無表情のままだったと思います。それで、一応ひとまず。その場での会話は終わりました。

そして夜。ノックもなしに部屋へ侵入してきた父がいました。そのまま父は言いました。

「俺はお前ほどいい大学に通っていない」

「うん」

よく知ってる。自画自賛だが、偏差値で見れば、自分が通っている大学が頭のいいところなのは知ってる。

「ただ、俺は幸運なことに大企業に新卒で入って、出世して、それなりの額をもらっている」

「うん」

もちろん知ってる。四季報などでもやっぱりなんとなく親の企業は目に付く。その中でも超ホワイト大企業と人気が高いのが父の会社だった。

「でだ。俺は、さだまさしが好きでな。それで実は昔、さだまさしがやってるラジオの会社に入りたかったんだ」

「へえ」

それは……さすがに知らなかった。初耳。初めて聞く情報だった。

「だけど親父に『馬鹿野郎』と言われた。それ、なんでかわかるか?」

「それは……まああれじゃないの。将来性もないし、安定もないし、何より稼ぎだって悪いわけで」

「違うな」

「じゃあ、夢見がちで、現実感がなくて、若いから?」

「違う違う」

「わからないな。答えは?」

「安易に絞るなってことだよ」

なんでも無いことのように父さんは言って、続ける。

「新卒の就職活動ってのはいわば最高のカードみたいなもんなんだ。大企業に入れて、そこの偉い人たちと直接話すことができるボーナスカード。普通は話も聞いてくれないような人と一対一で話ができる貴重な場所なんだよ」

「……カード」

「チケットって言ったほうがいいかもだけどな」

父は少し笑った。

「それもこのカードの恐ろしいところが、転職とかと違って、業界の制限がない。本当に自由で制限がないチケット。受けるだけならどこだって受けることができる。会おうと思えば、鉄道だってインフラだって、銀行だって、出版社だって、自由にどんな人とも会うことができる。特に俺の時代は売り手市場だったからな、余計そうだった」

「……ふーん」

チケット。誰とでもあえて、どこの人とも話せるチケット。

なるほど、その発想はなかった。

「そんな美味しいチケットの効果を自分から絞り込むような事をする奴はやっぱりバカだし、アホだろ。それを親父に言われたんだ」

それに、と父は続ける

「ここからは俺の持論だけどな。若い頃の決断とか計画とか指針とか夢とかなんて、あっさりと変わるもんだ」

「……え、まじ?」

「ほんとほんと。お前だって、大学でなんか色々やってるみたいだけどさ。その中で計画通り行ったやつって何個ある?」

「…………」

確かに。何がどうして俺が事業なんぞやることになったのか、僕にも分からない。日本一周した理由も南アフリカに遊びに行ったわけも謎すぎる。なんなら4年で卒業できたことすら予定外だ。学生時代予想通りに行ったことはとても少なかった。

「俺だって、まさか銀行員として30年やって、家庭を持って、息子が2人もいる人生を送ってる、なんて就活しているときは思ってもなかった」

だからまあつまり、だ。そんな言葉と同時に呼吸を一つ挟む。

「人生に計画通りはない。基本計画外のことしかない。可能性は本当に無限にあるわけだ」

そして父は言った。

「だから、絞るな。自分からその可能性を絞るな。もしかしたら将来なれたかも知れない可能性を、自分から絞って失くして、人生の進路を勝手に決めるほどつまらないものはないぞ」

それから。分かりやすく単純に僕は就職活動を始めた。もちろん就職浪人をする——という選択肢もあった。なにせもう5月31日。もう数時間で6月になる。ほとんどの学生や企業は就職活動をやめ、来年度を視野に入れ出している頃だろう。当然、悪い勝負。分の悪い勝負だろう。

しかし、これも父の言葉で

「来年何があるか分からないから今の売り手市場で勝負してみろ」

「就活解禁は今日からだろう」

「諦めたらそこで試合終了」と。

もちろん反論はある。このおっさんは一体何を言っているんだとか、父さんの時代と今は違うんだよとか、スラムダンクよく知らねえんだよなとか、そう言った感情は当然湧いて溢れ出たが、しかし。それ以上に僕の心にあったのは別の感情で、別の言葉で、別のセリフで。

「……もしこれで就活上手く行ったら、結構面白いな」

そんな感情がほとんどだった。そしてそこから。僕は大量のエントリーシートを、それはもう大量の企業に片っ端から送ったわけである。事の結末だけを書けば僕は相当数の内定を得れた。大手商社、大手ネット広告会社、大手ゲーム会社等々。様々な場所から様々なルートで内定をいただくことができた。正直、ここまで上手くいくとは思ってなかった。

そもそも就職活動はオワコンで、優秀なら自分で稼ぐべきなのかもしれない。ただそれでも。本当に大事なことはそんなことではなくて。そんな表面的なことではなくて。もっと大事なことはたった一つで。就活で大事なことは「絞らないこと」だと思う。将来にわたって広がる可能性を、なくさないことだと思う。

どれほどな想いがあっても、どれほどの好きがあっても。若い頃に考えている夢は、所詮夢で儚い。将来というのは常に不安定なものである。現代ならより一層。だから、自分から絞ることなく色々な世界を見ることが何よりも大事。それさえやれば自分が進むべき道は見えてくるし、やりたいことは見つかるし、やるべきことは降ってくる。ダメなのは決め付けることだ。僕にはこれしかないと、私はこれで生きていくと。そんな風に決めてかかって、決め切って。人生全てを賭けてしまうことで。

その判断を「就職活動中」でなく「就職活動前」に行ってしまうことだ。それは夢がある人間も目標がない人間も同じ。自分の可能性を狭めてはもったいない。

父さんや爺ちゃんがいう「バカ野郎」でしかない。新卒というおそらく、その人の人生において最も良いカードを持っているのに、それを最大限に生かさないのは愚かでしかない。幸運なことに、僕はそれに気づけた。

結果、今、新卒の僕に事業責任者を任せてくれる最高の会社で働けている。好きな事を、好きなままに、好きなだけさせてくれる会社で働けている。こんな幸せで、糧になって、最高な環境を与えられた新卒は他にいない、

僕は今、日本で一番、魅力ある仕事をしている自信がある。だからこそ。そんな僕から『僕同様、きっと馬鹿野郎な君へ』最後、贈る言葉は一つ。世にありふれた皮肉と不幸と後全部を放り込んで。それでいて、誰も本心では願っていないドブ溜めのような言葉で。

観る人によってはトラウマにすらなっているその言葉で。だからこそ、それらすべてを上書きして、受け取っていただきたい。

『あなたの就職活動がより良いものになるよう、心からお祈り申し上げます』

以上。新卒兼、事業責任者兼、世界一の馬鹿野郎な「二井駿」から、きっと馬鹿野郎な「あなた」へ贈る、ありふれたエールでした。

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