マガジンのカバー画像

コズエの鬼ゴリ絵本日記

37
出逢った絵本の考察や感想をここに書きためています。(鬼ゴリ:動詞。鬼のようにゴリゴリと書く、の意。いまだ鬼はあらわれておりません)
運営しているクリエイター

#日記

絵本考察日記#06/谷川俊太郎さんがつむぐ「生きる」

こんにちは。皆さまお盆休みいかがお過ごしですか。 わたしはというと、今年も91歳になる祖母と父と弟と迎え火をし、線香花火をしました。母は家で天ぷらを揚げていました。ぱちぱちと鳴るそのちいさな光を、耳のおおきかったおじいちゃんはきっとにこにこしながら見てくれたはず。いささかこどもじみている、とおもいながらも、来年もおばあちゃんと線香花火ができますようにと至極真剣に、お願いしました。 小雨が迎え火用のよく燃える木(正式名称知らず)を濡らしましたが、わたしは左手でおばあちゃんに傘を

絵本考察日記#04/こまったさんシリーズ「こまったさんはこまってない」(前編)

こんにちは。今回はちょいと趣向を変えまして、絵本ではなく児童書について書きたいと思います。鬱々とした梅雨時、元気を出すには食べ物の絵本について書きたいなーと。そこでピーンと閃いたのは『わかったさんシリーズ』でした。 このシリーズは小学3年生の頃、もう大大大好きで、表紙を見ると「なつかしい!!」と口に出さずにはいられない本たちです。そして、同世代の、かつて女の子だった女性の中にも、そういうかたはたくさんいるだろうと思います。 そんなわけで、今回は、まるで特別な日のごちそうを作る

絵本日記DAY30「ロバのシルベスターとまほうの小石」/愛おしいってこういうこと

ハッピーバレンタイン!みなさま、いかがお過ごしですか。 バレンタインだからといって、今日わたしは何かとくべつなことをしたわけではありませんが、知り合いの本屋の店主さんから、女性の乳房型のチョコレートをいただきました。ふたつ。たべるのがたのしみです。 そうそう、その本屋さんでは今日からホワイトデーまでの一ヶ月、私が主宰する「絵本研究室」の本棚から一部絵本のコレクションを販売することになりました。 盛岡駅、開運橋から歩いて3分くらいのところにある「ponobooks&times

絵本日記DAY28「クリスマスの三つのおくりもの」/林明子さんってやっぱりすごいよなぁ、の回

こんにちは。みなさまお元気ですか。 なんと、前回の絵本日記、最終更新日が7か月前、と表示されていまして、げげ、とたいへんに驚いた次第です。 さて、最近活動している、「絵本研究室」の出張絵本屋。 今週末の土曜日には、友人の営む素敵な商店(おばあちゃまから受け継いだたばこ屋さんで、ふるく味がある店内には気仙沼の毛糸やフェアトレードやオーガニック商品が並ぶあたらしいお店)のスペースをお借りして、絵本の古本販売とおはなし会をさせてもらうことになりました。あ、絵本ずきのあなたならピン

絵本日記DAY26「ぐりとぐらのかいすいよく」/はじめまして英語版のぐりとぐら

こんにちは。みなさまお元気でお過ごしでしょうか。きのう、おとついと私の住む街は30度近くまで気温が上がったところもあり、全国ニュースに知っている景色が登場したりなんてしていました。あまりに暑かったので、おひるはつめたい納豆蕎麦をいただきました。わんこそばで有名な老舗のお蕎麦やさん、新入社員と思しきスーツ姿の若い女性と男性が、お蕎麦を待つあいだ上司らしき男性と差し障りのない会話をしていて、なんだか私のほうもどぎまぎしてしまった。あたらしいスーツと黒髪の彼らは、眩しかったです。蕎

絵本日記DAY25「うるさいぞ・・・」/Someone、の正体

このまえの金ようび、宮沢賢治の絵本について書きたい記事があり、最近いいなと思っているミキハウスから出版されている絵本をもとめて大手チェーンの本屋さんへ行きました。ところが、宮沢賢治の本はおろかほとんどがわたしの苦手なタイプのしつけ絵本。がっくりとし、でもきょうはカレーだ、とおもったらさいご口のなかがもうカレーになっているのとおなじことで、すこし意地になっていたわたしはそのまま別の本屋さんへと車を走らせたのでした。 15分ほど運転し、たどり着いた本屋さん。ここは観光施設や市場

絵本日記DAY24「ベンジャミン バニーのおはなし/THE TALE OF BENJAMIN BUNNY」

今日は、おとこのこって、どうしてこうなのかしら、とおもわずにはいられない、ふるくてでも普遍の、うつくしい物語のことを書きとめていきます。 1、石井桃子さんについて ピーターラビットシリーズの翻訳は、石井桃子さんという翻訳家、児童文学作家により織りなされています。石井桃子氏による功績はたいへんに大きく、『プー横丁にたった家』『うさこちゃんシリーズ』、『たのしい川べ(岩波少年文庫)』など数々の名作は、私などが言及するまでもありませんが、日本の宝物です。 石井桃子氏は、101

絵本日記DAY23「そよ風とわたし」/絶賛魔女修行中によむべき絵本

こんにちは。きょうは魔法学校卒業生のわたしから、同志のみなさんへ、必読絵本をご紹介したいとおもいます。 この絵本は、とある駅ビルの、お洋服やさんのすみっこのほうに置かれていた、古本棚の奥のほうからひっぱりだしてみつけた本です。 こういうとき、わたしの魔女センサーがぴん、とはたらきます。そしてそれはたいてい外れません。この古本屋には、お宝の絵本があるぞ、というセンサーです。ついでにいうならば、ここのお店はおいしいぞ、も、ほとんど外れません。 それで、この絵本を奥のほうから

絵本日記DAY22「なめとこ山の熊」/登場人物の眼、について

あけましておめでとうございます。鬼のようにゴリゴリと絵本日記を更新する、というコンセプトのこのマガジンも、3年目に突入しました。未だ、鬼は現われておりません。どうせ来てくれるのなら鬼よりも福の神のほうがもちろんいいのだけど、今年は(こそ)、心を鬼にしてたくさん更新してまいります。と、ここに誓って2022年の絵本日記をはじめたいと思います。 1、宮沢賢治と猟師について 今日の絵本は、宮沢賢治作「なめとこ山の熊」です。岩手県民として、宮沢賢治の話を知らないのは恥ずべきことだ、

絵本日記DAY21 デリバリーぶた

たべものを描く絵本のなかでも、加藤休ミさんの作品は最近とくに好き。お名前からどうもカトちゃんを想像してしまうのだけど、北海道出身の絵本作家さんです。 同作者の『きょうのごはん』もよだれが思わずたれてしまいそうな作品ですが、今年の6月にでた『デリバリーぶた』に出てくるメニュウも、とてもとても魅惑的。 加藤さんの絵本をよむ前に、わたしから、ひとつお願いというか、注意を述べておきます。それは、「たべちゃだめ」という状況下にあるかたは、そういうのが終わってからよんでください。たと

絵本日記DAY 19 あたしもすっごい魔女になるんだ!

ひさしぶりの絵本日記。もうすぐハロウィンだからかな、図書館で面置きされていたので手にとってみました。 「すっごい」魔女、というのが、この物語の肝。 すっごい、っていう訳、とってもいい。 この絵本の原題をネットで探したけれど、見つけられなかった。金原さんは、なんの単語を「すっごい」、と訳したのだろう? 金原瑞人さんの和訳は、「いんづい」ところがないんです。えーと、標準語にするとなんだろう、なんというか、着心地がわるいところがない。ちくちくするところや、ちいさな違和感がな

絵本日記DAY16 はじめてのキャンプ

こんにちは。じりじり焦げつくような毎日が続いていますね。 なぜか「意外!」「夏は私の季節って感じなのに」などとよく言われることが多いのですが、私は夏の暑さがほんとうにニガテです。さらに冷房もニガテなので、毎日ほとほとこまっています。 でも、夏の行事は大好き。お祭りのお囃子には血がどくどく騒いでくるし、風鈴の涼やかな音色には手をとめてうっとりできる。 流しそうめんなんて、半ばクレイジーな夏のおたのしみ。 上からホースの水とともに、勢いよくそうめんが流れてきて、それを狂喜乱舞

絵本日記DAY14 緑黄色野菜絵本

今回は、ディック・ブルーナの『うさこちゃんの おうち』について綴ります。 この絵本を端的に表現するならば、「シンプル」「整然」。一切のムダがないのです。 絵は緑黄色野菜のようで、中性的な色味は使われていません。線のはっきりした黄色、緑、だいだい、紺、白の5色のみ。シンプルであることの、うつくしさ。 ‘‘おうち‘‘ときくと、つい私のあたまのなかにはほわんほわんほわん、と漫画のように吹き出しが現れ、理想のおうち映像が再生されはじめます。 庭にはラベンダーやバジルを植えたい

絵本日記DAY13 知りたくなかったこと

『事実を知った』ということの直後に起こる思考パターンの例。 ①知りたくないのに知ってしまった。がーん。 ②知れて良かった。うれしい。 ③いつかは知ることになっていた。そこには良いも悪いもない。 この絵本を読んだ直後の私は、もう圧倒的に、①。知りたくなかった。がーん。です。それはほとんど絶望にも似たかなしみ。 何を知りたくなかったかというと、『ふしぎなおきゃく』の正体。 この何者なのかわからない、白くてもちもちしていそうなほっぺたで、はふはふ麺をすする『ふしぎなおき