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絵本日記DAY13 知りたくなかったこと

『事実を知った』ということの直後に起こる思考パターンの例。

①知りたくないのに知ってしまった。がーん。

②知れて良かった。うれしい。

③いつかは知ることになっていた。そこには良いも悪いもない。

この絵本を読んだ直後の私は、もう圧倒的に、①。知りたくなかった。がーん。です。それはほとんど絶望にも似たかなしみ。

何を知りたくなかったかというと、『ふしぎなおきゃく』の正体。

この何者なのかわからない、白くてもちもちしていそうなほっぺたで、はふはふ麺をすする『ふしぎなおきゃく』のままでいてほしかった。絵本の次の頁をめくったのは、他でもない私だというのに。

「とんちんけん」のけんさんが作るラーメンは美味しいと評判で、いつも大行列。店内はL字型のカウンターで7席のみ。座面が赤いスツールは、床にがっちり固定されているタイプのもの。すごくレトロで懐かしい店内で、食べたことはないのに、でもけんさんの醤油ラーメンの味が想像できる。

みんなひとしずくも残さずスープを飲み干すのに、『ふしぎなおきゃく』はひとくち食べると何も言わずに帰ってしまう。次の日も、またその次の日も。自分のつくるラーメンはそんなに不味いのかと夜も眠れなくなったけんさんは、ある日その『ふしぎなおきゃく』を追いかけることにした。

<するととつぜん、めの まえに・・・・>

ここで私は、絵本を閉じることができただろうか。

ぜったいに笑ってはいけません、と言われると笑いたくなったり、廊下を走るなと言われると走ってみたくなったり。そもそも、人類が禁じられた林檎を食べてしまったことからはじまっていると考えると、ねぇ。

けんさんのラーメンと、この『ふしぎなおきゃく』に会うために、たぶん私はまたこの絵本をひらいてしまうんだろうな。

つまるところ、ほとんどのことは③いつかは知ることになっていた。そこには良いも悪いもない。なのかも。

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ふしぎなおきゃく 2006年12月

作/肥田美代子 絵/岡本颯子 発行所/ひさかたチャイルド


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