独白

　私は特別ではなかった。いたって凡人だった。ある日突然才能が開花するものだと思っていた。等身大に生きようなんて志してもやっぱりどこかで背伸びをする自分がいた。心に決めたこともできないまま日々を過ごすことがいっぱいあった。失敗を繰り返して変わったかと、成長したかと思う度に同じようなミスをして、つまらない人間で惨めで惨めで仕方ない。自分は何かになれるかもしれない、という羨望が自分を洗脳して、いつからか自分は何者かになれるものだとばかり信じていた。違った。凡人だった。耳障りのいいお世辞に甘えていただけだった。

なりたい自分を思い描くことに一生懸命で、今の自分を全く見てなかった。周りも見えていなかった。ただ虚像の理想の自分を眺めているに過ぎないだけだった。失ってから気がつくことが多くて、喉元過ぎれば熱さを忘れて、何も変わっていないばかりで、つくづく自分が嫌になる。誰が好きになってくれるのだろう。自分なんかが生きていていいのかと思うことが多々ある。周りの期待に応えたいと思っているだけで何もしていなくて、誰のなんのどんな期待なのか知らないし、もしかすると自分で自分に向けて作った期待を他人からの期待だと置き換えているだけなのかもしれないのに。

失敗を恐れて、失敗を馬鹿にして、挑戦すらしないで立ち止まったままで、自分を特別視してそう思い込んで、そんな人間になってしまった。人に言いたくないような過去がいっぱいある。偉そうに語れるほど、何も修めてなどいないのに。他人は私が思うほど私にきっと興味無いのだろう。だが私の中の世界の他人はそうでは無い。常に怯えて自分らしく生きるなんて二の次で、どう思われるかで精一杯でとても自分のために生きるなんてできない。

あぁなんと苦労の絶えない人生だろうか。
あと何度同じミスをするのだろう。何も学ばない何も変わらない弱く惨めで見るに堪えない人間になっている。なりたくないと思う側になっている。
あぁ他人が羨ましい。酷く羨ましい。羨みながらも他人に自分の虚像を映している。つまるところ、やはり自分が1番可愛いと思っているだけなのだろう。だから他人を顧みず自己を最優先するのだ。自分が可愛くて生きてきたはずなのに、自分が憎い。憎くて憎くて大嫌いで引き裂きたくなる。結果、可愛がれない。皮肉なものだ。こんな滑稽で無様で醜態を晒してのうのうと生きている。何をしなくとも腹だけは1人前に減る。

他の人は私の失敗を気にもとめないだろうが、私自身がそれに囚われてしまっている。私自身がそれを許していない。いつまでもそれを反芻し、嫌な気分になって乗り越えられない。不安と憂慮に駆られてグルグルと同じ円を廻っている。

辛い時こそやらなければならないことをやらねば。
いつかこの独白がそんなこともあったな、と言える日を切に望むばかりだ。