12/2(日)

曇り

寒い。目は覚めちゃいるんだが、ゴロゴロする。朝ごはんを作ろうにも布団から出たくない。今日は2号が先に動いた。やるね、速攻のスタイルはアトレチコマドリードを彷彿させるぜ。そんなグリーズマン、いや、2号は薬缶に水を入れコンロに火をつけた。どうやら自分のコーヒーを淹れているようだ。こうしちゃおれんと俺も頑張って起きてみる、とりあえず洗顔料を手のひらに取り顔をぷるっとしてみる。寒いねこりゃ。そのあと今日は2人ともご飯にした。あとシュレッドチーズと創味のつゆを入れた出汁入りチーズスクランブルエッグ。それに味噌汁だ。味噌汁はいつもの要領で冷凍庫から、小松菜、ねぎ、油揚げ、などを取り出し、我が家の大ヒット商品業務スーパーの赤味噌(298円/kg)と本だしに乾燥ワカメからおりなされる最強のハーモニーこと赤だし。美味しいよね。ていうか昔読んだ美味しんぼで山岡の野郎が、忙しい合間を縫って栗田さんが頑張って作ってくれた味噌汁の具がたくさん入りすぎていてバランスが悪いだ、じゃあ別の日に豆腐とわかめかなんかの2種類のみの具材の味噌汁を作ってやったら、次は豆腐の切り方が悪いだと?山岡てめえ、料理できんだから栗田さん手伝えやボケが。などと思いつつも、ほほう、みそ汁の具は1~2種類がベストなんだ!知らなかったサンキュー山岡!って言いながら今日の味噌汁を作る。ネギや小松菜など緑の野菜は本当に香りもよく栄養もあるだろきっと。野菜なんだし。ワカメが入っているんで食物繊維も豊富な感じがする。そして油揚げだ。これは言ってみれば味噌汁のメインディッシュであり、特に味噌汁を十分に吸った油揚げが実に美味しい。これだけでも売り物として良いんじゃない?こんなにも凄まじい料理の腕があるのなら、店を出してみるのも良いかもしれない。ターゲットは上京したての20代前半のサラリーマンだ。駅前にホームセンターで作成した屋台と赤暖簾で大きく油揚げの文字。早朝のラッシュアワーで身も心も荒み、朝ごはんなんてまず食べる時間も無い。そんな若人の為に会社に着く前のちょっとしたオアシスのような物を提供してあげたい。ならば、屋台を置く駅は溜池山王か虎ノ門らへんが良いって事なんで、俺頑張る。早朝5時、俺は頑張って起きて、味噌汁の染みた油揚げが入った寸胴を載せて屋台を家から引きはじめ、早朝の外濠環状線を駆け巡る。朝6時に虎の門駅に到着し、いそいそと開店準備をするのだ。すると、朝から先輩と今後の行動や目標の共有などという訳の分からない給料にもならない作業をするために若者が駅からでてくる。仮にこの若者の名前を太郎とすると、普段見かけない屋台が気になる太郎は、ついつい魔が差してしまい、俺の屋台に顔を出す。『ここは何を売っているんですか?』俺は満面の笑みで『世界一のものさ』と答える。太郎は赤だし香る寸胴の中身に心を躍らせながら『じゃあ1つください』俺は寡黙な大将を演じるためにそっけなく『あいよ』という。持ち運びが便利という理由で油揚げと少しの赤だしを透明のポリ袋に入れて渡す。このスタイルはタイなどに行くと朝のお粥屋台などでよく見る光景だ。さすが世界をフラフラしていただけにこういう事に抜かりはない。我ながらいい仕事だ。いい仕事ついでに、トッピングも用意しておく。毎日同じ味じゃ顧客はすぐに離れていってしまうので、東京浅草のやげん堀で特製に配合した七味唐辛子、刻みニンニク、しょうが、ついでにガリなんかも壺に用意しておいて、購入していただいたお客様に好きなように使っていただこう。よし、これはいよいよビッグビジネスを開発してしまったわけだが、太郎はそんな事を知る由もない。太郎はそのままオフィスに向かい先輩との給料にもならない擦り合わせとかいう謎の会議を行うまでの短い時間に油揚げを食べる。アツアツの汁でなみなみになっている揚げを一口噛むと俺のテクから生み出された極上の赤だしが口いっぱいに広がり太郎の顔が恍惚としたとほぼ同時に、噛み切った際に飛び散った汁が凶悪な先輩のスーツに付いてしまい、激高した先輩から殴る蹴る、喉などを凶悪に掴まれるなどの暴行を受けて涙ながらに東京の恐ろしさを体験する太郎。都会ってこんなもんだよ、とか何とか思っていたら鍋は沸騰していたので火を止める。さぁ朝ごはんだってんで、2人でいただきます。毎朝毎朝美味しいんだもんで、特にこの4種類も具が入っている味噌汁がとにかく美味しい。4種類?30秒ほど絶望な気分を味わっていたが、まぁ俺は雁屋哲じゃないし良いかって事でごちそうさま。
で、その後に中野坂上のフリマに行こうかって話ししてたんだけど、手袋がないだコートが決まらないだで、坂上に着くともうフリマは終わっていて、クソでかいテディベアみたいな落ち込み具合の2号をみたら、かわいそうだったんで、しょうがない枝豆と生と紹興酒の熱燗グラスでっ!

気が付くと真っ暗な冬が満面の笑みで帳を下すもんだから俺は少し悲しい気持ちになった。けどまぁ真っ黒ばっかじゃつまんねえなって感じで、今夜は大根多めの湯豆腐にシュウマイも入れて、これでもかってくらい鍋を白くしてやったら世界は平等になった。

今日も浦霞がおいしいわねぇ、そうですねぇ。なんつってたら、え?もう夜も終わっちゃうの?

おやすみ、太郎。

どうもありがとうございます。 今晩のおかずが増えまっす。