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フレデリック・H・プリンスだったらどうしただろうか?

もう十数年前のこと。

TV番組でアメリカの大富豪フレデリック・H・プリンスの潔癖症と奥さんへの愛情をまとめた再現フィルムを見たことがある。


少年期に母と姉をジフテリアで亡くしていたフレデリックは細菌の恐怖に取り憑かれて、常に手袋をして、人と握手もしなかったという。
成人してから、フレデリックはアビゲイル・ノーマンという女性と出会い結婚したが、彼はアビゲイルにお金を触らせず、彼女の身の回りは常にメイドによって消毒されていた。
とある時、アビゲイルが風邪をひいた時、フレデリックは蒼白となり、以来衛生を徹底するためアビゲイルが毎日違う部屋で寝るように取り計らい、彼女が眠る部屋の壁紙を毎日張り替えさせた。アビゲイルは毎夜、フレデリックに連れられて揺り籠のような車輪付きのベッドに眠った、という。


これを一緒に見ていた母はかなりドン引きしていたのだが、十代の多感な私は別の衝撃を受けた。素敵なカップルだ、優しいご主人だと、そう受け止めたのである。

莫大な財力を持ってでも制圧することができないもの、フレデリックにとってそれは細菌への感染だった。だからこそ、その細菌から愛する家族を守るために細菌を封じ込めることに生涯心血を注いだのだ。
彼の潔癖症は家族への愛情でもある。


アラサーになった現在でも、その再現フィルムが昨日のことのように鮮明に浮かぶ。
最近、別の番組でフレデリック・H・プリンスについて特集があったようだが、残念ながら見ることができなかった。とはいえ、私ほど彼に感銘を受けてしまった人はいないとは思うが。


新型コロナウイルスが流行している現在。

世界的に消毒するためのアルコール、医療体制、生活できるお金、お互いを思いやる気持ちや配慮、その他色々なものが必要だというのに、満足にそれが手に入らない状態。

家族を、大好きな人たちを守ることが危うい状態となっている。
それも、世界中が。

今、家族を守るために何が必要なのか、何をすべきなのか。
もしフレデリック・H・プリンスが生きていたら、彼ならば一体どうしただろうか。

新型コロナウイルスが流行し始めてからというもの、私はフレデリック・H・プリンスのことばかり考えている。



2020年4月26日

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