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チカシラ街5〜パクチーおもてなしおじさんとWhiskey Apple

彷徨えるチカシラ街では、どうしても時節柄ひと気のない場所、それでいて異教を強く感じさせる食事を求めていることがわかった。人寂しいのであれば、賑わっている立ち呑みで串でもつまめば良い。線路沿いの奇しい鈍い光を放つ店が目に留まった。「台湾料理」とある。

 07年春にFlight Of Idea興行にて台湾ツアーに出張ったことがあるが、団体行動であり独りブラブラと行動してはない。

台湾SpringScreamでのワンシーン。初期の名曲「Focus In The Mirror」

当時「夜市」で屋台料理を買い込み、タイワニーズ音楽仲間たちと公園で酒食を愉しんだものである。当時の記憶はちゃんと旧ブログにしたためてある。なぜそこから離れたか?ログイン不能が解消出来ずゆえとある時期から、ドン引きキャラを貫くのも自分で冷めてしまったからもあるが、07年〜12年ごろまでの生活記、当然忘失彼方な記憶も多々あり。

貴重なセルフアーカイヴにて電子書籍化の準備だけはしては、いる。

いつか。

「女教師に引率されTAIWANを巡る」全14回シリーズ。よければ。

このシリーズ我が身の現在、過去、未来を行ったり来たりする。今に戻る。

踏入した「台湾料理屋」先客は1名だけ。2人掛け2席、カウンター3席。平時は2階席もあるようだが、当然閉鎖。闇市感というか異境感はマックスだ。

「ひ、ひとりですけどいいですか?」

「ああいいよ」

70前後のマスターが一人、狭い厨房から応える。カウンター下には石油ストーブ。暖かい。メニューから食したことのない定番メニューを指す。

「台湾行ったことがあるのかい?」

「はい15年ほど前に一度」

「ま、ゆっくりしていきな」とは言われなかったが、お互い探り合いの一見客と店主のプロレスでもあるが、向こうの警戒感は少し解けたのだろうか。ビールの付け出しが出てくる。うまい。台湾メンマと牛骨煮付け。

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「パクチー大丈夫かい?」

「はい、もちろん!」

頼んだ料理二品、台湾牡蠣のオムレツetc、料理名書き留めずいたが、美味。

先客はストレンジャーの私に構わず「あさり」使った台湾料理をつまみながらJINROボトルをちびちび飲んでいる。

出された料理にいちいち私が「美味」であることを伝えると店主は嬉面となり、追加でサービスの応酬。メインのルーロウ飯を頼む頃には既に満腹近し村。私が一度だけ台湾を訪れたことを申告したからか、最初から誰にでも招き入れた客にはそうなのか、等しく客人にはサービス満点なもてなしなのだであろう。

会話の流れで「台湾出身なんですか?」と問うと

「奥さんがね」とこの日不在の相方のことを教えてくれる。

デザートにドラゴンフルーツ、スターフルーツ、台湾小菓子の土産まで持たせてくれる。地域で20年以上愛されている理由は言うまでもない。

台湾興行時旧ブログに登場するKikiが声で参加してくれている逸品「Whiskey Apple」と云うナンバーがある。

この詩曲のアイデアを映像化させたり、制作当時2013年〜2014年当時にスピード感を持ってアウトプット出来ていたらな、と私としては珍しく悔やむことありだが、今の世界情勢の中でこそ響いて欲しいものである。明確にこの曲のことを言語化してインフォすること初めてかもしれない。

英語、フランス語、スペイン語、中国語、ドイツ語、朝鮮語、そしてロシア語。世界の女たちと声で響宴したフラットに言えば、ジョン・レノンのイマジン的立ち位置のナンバー、異種混合の世界を認め合えるのならと云う理想のシャングリラを描く。各種配信で是非。このアルバムの中に。

Whiskey Apple誕生秘話は一部コアな読者には馴染みあるやもしれぬロシアのDariyaが2013年に来日し、Flight Of Idea興行でも顔見せ登場したのち、ボヘミアンホテルでささやかな豚汁パーティーを開いた。彼女との妄想と逸話はこのアルバムに結実したのだが

一度きりの逢瀬の際に、Whiskey Appleと云う飲み物の美味しさを伝授してくれたことから始まった。「混ぜようとして混ざることが想像できない」ものも「混ぜる」うまくいくことあるよね。そうした心持ちで誰もが居られれば、紛争、戦争、闘争、何もかもない世界、それは叶わぬ妄想だ。音楽だけでもそうありたい、と云うささやかな抵抗なのである。今、彼女はどうしているのだろう?たまにやり取りしているけど、遠い。

一度だけ彼女にクリミア紛争のとき2014年頃?

「どう思う?」と尋ねたことがある。

「あそこは元々ロシアなの!」

「じゃあ北方領土は?」

「あそこも!」

現実は詩曲の理想通りはいかない。

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帰り際店主が次は「これとこれを食べに来なさい」と送り出してくれた。

混ざる日、混ざらない日、あるとするなら混ざる日で終わった。

逗留先に戻る前、スーパーマーケットに立ち寄る。

「旅ではないし、新しい引越し先」でもない滞在の日々、

まだ街にチューニング出来ずに居た。





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