見出し画像

最新調理テクニック紹介『焼葱の土』

最新調理テクニック紹介。ここ数年、情景を表現する料理が増えたこともあり、土を模した料理(のパーツ)が増えました。(ティラミスを作ったときの植木鉢に使ったチョコレートの土もそうですね)今日、紹介するのは『焼葱の土』です。

とりあえず土だけでは料理にならないので、用意したのは牛すね肉(黒毛和牛) 500g。真空パックにして湯煎にかけます。スチームコンベクションオーブンがあればそちらでもOK。

いつもの繰り返しになりますが、タンパク質の変性について復習しましょう。ものすごくざっくり言うと、肉のタンパク質は50度~70度のあいだで変性し、6 5度くらいから水分が失われていきます。また、コラーゲンがゼラチン化する温度は 70度~80度。例えば『オックステールの赤ワイン煮込み』では肉から水分が失われることには目 をつむり、コラーゲンがゼラチン化する温度で加熱をしました。肉から水分は失われたものの豊かな風味がとけだしたソースが出来上がります。しかし、赤身の部分のタンパク質が変性することによって水分が大幅に失われることも事実。

恒温調理器具を使ったテクニックでは、低温で長時間加熱することでコラーゲンをゼラチン化させます。今回の温度は65度。(実際はもう少し低温で加熱することもできますが、充分に低温殺菌するために調理時間が長くなるので現実的ではないかも)時間は24時間です。コラーゲンがゼラチン化する目安は61度で24時間~48時間と覚えておいてください。

24時間、経過したものです。加熱温度が高かったので若干離水しています。この液体はそのままでは美味しくありません。しっかりと煮詰めてから赤ワインやブイヨン、ジュ、水などを加え、沸騰させるとタンパク質が凝固し、それを漉すとソースになります。

断面はピンク色でとてもジューシー。すね肉に入り込んでいるコラーゲンがゼラチン化していることが見た目にもわかります。

手で簡単に裂ける状態です。

さて、今日の本題に移ります。低温長時間加熱だと表面に黒い色がつきませんし、香ばしさもありません。それをカバーするのが『焼葱の土』です。長ネギを120度のオーブンで40分焼いてから、次に170度で焦げ目がつくまで焼きます。

こんな感じで黒焦げになって水分が飛ぶまで加熱します。

ミキサーにかければ

焼葱の土の完成です。基本的には同量の塩を混ぜます。ネギによって重さが異なるので分量は出していません。ネギが10gなら塩も10g。場合によっては塩は5g〜7gでもいいでしょう。

肉の表面にまぶします。これでちょうどよい塩味もつきます。この焼きネギの土、ス テーキなどにもよくあいます。

好みのソースと茹で野菜を添えます。ソースはデミグラスや赤ワインソースなどの煮込み料理を想像させるものがいいでしょう。

低温調理における安全性については下記の記事を参照してください。

低温調理における安全性、リスクとどう向き合うか(その1)
低温調理における安全性、リスクとどう向き合うか(その2)

モダニストキュイジーヌチームのネイサン・ミアボルトは72時間加熱した牛肉というレシピを発表していますが、こうした調理法ではパスチャライズされているため出来たてを食べるなら普通の料理よりもかえって安全なくらいですが、憶えておきたいのは殺菌される時間と温度の関係です。肉は54.4℃以上で加熱するべきということも憶えておきましょう。もちろん汚染されていない肉を選び、清潔な台所で調理するなど基本的なルールは遵守する必要があります。

撮影用の食材代として使わせていただきます。高い材料を使うレシピではないですが、サポートしていただけると助かります!