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アスパラガスの垂直ローストの作り方

アスパラガスのゆで方を復習
アスパラガス、茹でるべきか、焼くべきか

と続いたアスパラガス特集の3回目。今回はまったく参考にならない調理法をご紹介します。料理名は〈垂直のアスパラガスLes asperges à la verticale〉考案者はパリにある野菜料理で有名なシェフalain passardさんです。

ある程度の量のアスパラガスが必要です。下部の固い部分を2cmほど切り落とします。

計量カップなどにアスパラガスを立ててタコ糸で縛ります。

ほどけないように三箇所ほど縛ります。結構、きつくしばっておくことが最初のコツです。

厚手の鍋に80gの塩バターを入れて、弱火にかけます。量の多さにびびりますが、食べるわけではないのでいいでしょう。

バターが溶けてきたら、アスパラガスを立てた状態のまま入れます。この調理法のユニークなところはアスパラガスを立てたまま焼き上げるところ

上部にはバターをかけることで、火を通していきます。火加減は常に弱火を保ち、バターは決して焦がしてはいけません。100度~110度くらいの火加減でゆっくりと加熱してい きます。

泡だってきました。火をさらに落とします。さて、頭に入れておきたいことはバターが色づく温度は120度前後ということで す。お菓子に使う焦がしバターは150度と覚えておきましょう。温度計を使えばいつ もおなじクオリティを再現することができるので、一度くらいは測ってみるのもいいかもしれません。

またバターには水分(15%くらい)があるので、それが蒸発しないうちは100度を維 持できます。魚のムニエルをつくるときに小さく切ったバターを足しながら焼いてい くのはそうした理由です。

ただし、低温でも色づきは完全には止まりません。バターの色をつけているのはカゼ インというタンパク質。タンパク質が色づくメイラード反応は低温でも進みます。澄 ましバターにして、カゼインを除去すれば焦げることはなくなりますが、風味は失わ れます。バターの風味を形成している大部分がこのカゼインだからです。

アスパラガスの根本が泡立っているのがわかります。この小さく泡立っている状態を なるべく維持します。

さて、油をかけながら焼いていき、20分経ちました。バターは色づいていません。 「(ほとんどの野菜の調理において)バターはノワゼット(焦がしバター)にしない こと」とパッサールさんは事あるごとに強調しています。野菜、それぞれの香りを活 かすためです。

この形で加熱をしてもアスパラガスがバターを吸って......というようなことはないので、ご安心を。油の分子は水よりもかなり大きいのです。カゼインを含んだ水分は幾分、吸い上げるかもしれません。スプーンで掬いづらくなったら途中でバターを足します。

40分、経過。常に溶かしバターをスプーンでかけ続け、そのあいだコンロの前 から離れられません。触って、火の通り具合を確かめます。穂先に行くほどしゃきしゃきと、根本はコンフィのようにとろりとした食感を目指します。

60分、経過。もう少し太ければ90分が目安......ではありますが、実際はアスパラガスの鮮度などによって異なるのであくまで目安です。火から外します。ホワイトアスパラの場合にはあと90分以上かかります。

この立てた状態をプレゼンテーションしてから(鍋は移したほうがいいですが)切り分けます。今回はそのまま盛り付けましょう。

タコ糸を外します。香りをつけたい場合はアスパラガスと一緒にタイムやローリエ、 新ニンニク、レモンなどを一緒に束ね、オーブンペーパーでくるんで同様に加熱します。ペーパーで包むと加熱時間は短くなります。時間のかかるホワイトアスパラなどは必ず紙で包んでから加熱しましょう。

出来上がりです。調理に使ったバターを少量かけます。茹でていませんから旨味成分 の流出もありませんし、食感のグラデーションも味わえます。とくに香ばしい根本が 絶品です。ただ調理時間がかかるのが難点でバターをかけ続ける作業はかなり大変です。つくってみよう、とは思わない料理なので「こんな料理法もあるんだな~」くらいの参考に。

撮影用の食材代として使わせていただきます。高い材料を使うレシピではないですが、サポートしていただけると助かります!