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アスパラガスのゆで方を復習

今日のテーマはアスパラガス。種を植えてから収穫まで3年かかるという不効率な野菜です。農家の方が手間をかけて育ててくれた野菜、せっかくなら美味しく食べたいもの。基本の茹で方をマスターして春の味を堪能しましょう。

今日、用意したのはグリーンアスパラガスです。他にホワイトアスパラガスがありま すが、これは品種ではなく栽培方法の違いによるもの。そのまま育てるとグリーンア スパラガスに、遮光して育てるとホワイトアスパラになる、というわけ。

まずは茹でる前に付け合わせの準備です。

市販の温泉卵を準備しました。卵の黄色が春を感じさせますし、卵とアスパラガスは相性抜群。このままでは盛り付けなどをするときに扱いづらいので沸騰した湯で表面を固めておきます。

30秒ほど加熱すればOK。温泉卵を使う理由は黄身に濃度がついているので、アスパ ラガスに絡みやすいから。絡みやすい、といえばこのアスパラガス。表面がつるつるしていてソースがのりにくいのが弱点。そこで今日はもう1つパーツを用意します。

香りパン粉です。

パン粉 20g
レモンピール(市販品) 10g
塩 1g

フライパンに植物油大さじ2を中火で加熱し、パン粉を炒めます。

香ばしくなりました。

キッチンペーパーを使って、油を切ります。二枚のキッチンペーパーで挟みこ むようにするといいでしょう。

レモンピールは包丁で細かく刻みます。レモンピール以外にも最近は柚子ピール、オ レンジピールなどスナック菓子として様々な柑橘の皮が売られています。製菓用のオ レンジピールを使ってももちろんOK。

炒めたパン粉、刻んだレモンピール、塩を混ぜ合わせます。パン粉が卵の黄身を受け 止め、アスパラガスに絡みやすくなります。この香りパン粉、肉料理に添えることもできますし、スパイスを混ぜても面白いです。フランスを代表するシェフの一人、ミシェル・ブラスは子羊や鶏肉にオレンジとカルダモン風味の香りパン粉を組み合わせた料理を発表しています。

さて、アスパラガスの下処理に入ります。アスパラガスはよほど鮮度のいいものは別として半分から下の部分の皮をピーラーで剥く必要があります。

収穫後のアスパラガスは糖質(ショ糖)を消費し、かわりにリグニンという木質繊維を生成していきます。リグニンは野菜繊維の主成分セルロースと違い、加熱をしても柔らかくならないので剥いてしまう必要があるのです。

皮を剥く時には最後まで剥かず、途中でとめておくのもちょっとしたコツ。こんなふ うにしてから、、、

ぽきっと折ってしまいます。皮が散らからないので後片付けが楽になります。剥いた皮は鍋に入れ、一緒に茹でます。

1つ重要なポイントは適切な量の湯で茹でることです。理由は後述しますが、今日は1lの水を使います。

塩分濃度は1%。今日は1Lの水なので、10gの塩を使いました。ちなみにジョエル・ロブションは1lに対して12gの塩(つまり1.2%)で茹でるよう指示しています。アスパラガスやサヤインゲン、インゲンマメといった野菜を茹でるときの塩の量は案外重要。表面に塩が乗らないので、塩を浸透させておく必要があるからです。

さて、火にかけていると湯に色がつきます。これはグリーンアスパラガスの芳香化合物や成分が流出している証拠。皮と根本を入れたのはよく言われる香りづけのためではなく、あらかじめ液体の濃度を高めておくことで、アスパラガスからの成分流出を抑えるのが目的です。 以前、ブレゼという調理法をご紹介したときにも同じ説明をしましたが、濃い調味液のなかで加熱をすることで浸透圧による成分の流出を抑えることができます。(鶏もも肉のブレゼで肉料理の科学を理解する

ここからは時間の勝負です。盛り付けにつかう皿を温めておきましょう。鍋の蓋に使えばすぐに熱くなります。

沸いているところに、アスパラガスを投入します。ところでフランス料理の教則本に載っている正式な調理法は、縛ったアスパラガスを立てた状態で鍋に入れ、根本を先に茹でてから、頃合いをみて倒し、全体を加熱するというもの。縛る理由としては太さを揃えることで加熱を均一にすること、繊細な穂先を守ることなどが挙げられます。また根本と先をわけて加熱することで、全体を同じ固さに仕上げることができるというメリットも。
しかし、今日は一気に入れています。そうすることで穂先は柔らかく、根本は歯ごた えがある、という食感のグラデーションを出すことができるからです。目指す料理によって調理方法は選択する必要がありますが、いずれにせよ茹でるのは短時間で、あまり柔らかくし過ぎないことが肝心。

茹で時間はアスパラガスの鮮度と太さにもよりますが、僕の場合、小指くらいの太 さで1分20秒、薬指くらいで1分30秒、中指と人差し指の太さが1分40秒、親指で2 分を目安にしています。人によって指の太さは当然、違うのでこの数字は参考程度に受け止めていただきたいのですが、要は何度か試して自分の基準を持っておくと便利、という話です。
ところで野菜の茹で時間は鮮度に大きく影響を受けます。これは水分の含有量の違いによるものです。水は熱を伝えやすいので、水分を多く含んだものはすぐに火が通り、逆に水分が失われてしまうと火の通りが悪いのです。皮を剥いている段階で「これは瑞々しいな」と思ったら、加熱時間は短めに。

時間になったので、とり出します。表面に透明感が出てきて、指で押すとすこしへこ むくらいがいいゆで加減。あまり固いのは困りますが、シャキシャキ感は残してください。

キッチンペーパーやさらしにとって水気をとります。サラダなどに使う、または茹で 置きしたいという場合は冷水にとりますが、やはり時間を置くと味は落ちていきます。アスパラガスは茹で置きがきかない野菜なのです。

表面に少しだけ塩を振ります。すでに塩味はついていますが、表面にも振ることで味 を強調することができます。この場合の塩はやや粒が大きい物がいいでしょう。

温泉卵と一緒に皿に盛り付けます。香りパン粉を振りかけます。

ーラーで削ったパルメジャーノチーズも一緒に。なくても平気ですが、旨味が加わ ります。付け合わせが温泉卵ではなく目玉焼きだとビスマルク風というイタリア料理 になります。これもなかなかいいものです。
オリーブオイルを少量ふりかけました。熱々のうちにどうぞ。

ところで茹でた湯をなめてみてください。アスパラガスからかなりの量の旨味と風味が流出していることが わかるか、と思います。アスパラガスの風味化合物は水溶性なのです。イギリスのシェフ、ヘストン・ブルメンタールさんは著書 「キッチンサイエンス」のなかでこうした理由からアスパラガスを茹でるという選択は合理的ではない、と述べています。次回はヘストンさんが薦めるアスパラガスの調理法をご紹介します。

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