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酵素の力でさっぱりジャガイモのピュレ

マッシュポテトやジャガイモのピュレを作るのに〈ミキサーやフードプロセッサーは絶対に使ってはいけません〉という話を以前しました。(参考『究極のマッシュポテト』)ジャガイモの細胞が壊れ、遊離デンプンが出ることでネバネバになってしまうからです。

今回は現代料理のテクニックを使ってミキサーでノンオイルのジャガイモのピュレをつくります。鍵を握る食材は〈モルトパウダー〉です。

モルトパウダーは富澤商店で買えます。100g162円と安いのも嬉しいところ。(カルディコーヒーファームなどでも取り扱っているようです)

モルトパウダーは一般的な製パン材料で、主成分は麦芽。麦芽には多くのアミラーゼ(デンプン分解酵素)が含まれているので、デンプンの成分を糖に変えてくれます。パンの焼き色を強くする場合に用いますが、こんな風に料理に応用することもできます。

じゃがいもは500g用意しました。

小さく切り、3%の塩と2%の砂糖を入れた水を火にかけて、柔らかくまで加熱します。

やわらかく茹でました。

少量のゆで汁(おおさじ2)とミキサーにかけます。この時、温度を確認して、60℃以下になっていればモルトパウダーを3g添加します。

ねばっとしたピューレがモルトパウダーを入れた瞬間に腰がなくなります。反応が起こっている証拠です。

54℃で30分間、加熱。この工程によって麦芽に含まれるジアスターゼ酵素がじゃがいもから遊離した澱粉を糖に変えてくれます。それによってじゃがいものピュレの口どけは滑らかになり、また甘みも増します。澱粉の粒子は糖に比べるととても大きく、これが口当たりを損ねているのです。

30分、経過した状態。ジャガイモの粘りはなくなり、さらっとした感じになりました。

75℃以上まで加熱し、酵素を失活させておきます。これで味が変わりません。

出来上がり。ま、ノンオイルかつ乳製品を使っていないので軽い感じの味ではありますが、さらっとした口溶けが特徴。麦芽糖のかすかな甘みも感じます。

じつはこのモルトパウダーを使ったテクニックが一番、力を発揮するのはジャガイモを使った──例えばヴィシソワーズのような──スープ作りです。スープ作りにはミキサーを使いたいところですが、最初に述べた通りにデンプンが悪さをするので口溶けが悪くなります。そこでジャガイモを使ったスープの場合は、それだけを別に取りだして、裏ごし器にかけたりするわけですが、モルトパウダーを使うことでみんな一緒にミキサーにかけてしまうことができるというわけ。時間はかかりますが手間は減らせます。

撮影用の食材代として使わせていただきます。高い材料を使うレシピではないですが、サポートしていただけると助かります!