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液体のラビオリ(冷凍逆球体化法)

人工いくらの技術を応用した液体のカプセルを以前、紹介しました。〈調理テクニック紹介〈Spherification〉〉
今回、ご紹介するのは冷凍逆球体化法。同じようにアルギン酸液にカルシウムが入った液体を落とす逆球体化法を用いますが、事前に液体を冷凍させることで効率よくスフィアをつくる応用技術です。

液体(今回はオレンジジュース) 200cc
乳酸カルシウム 2g
キサンタンガム 1g
アルギン酸液
アルギン酸 3g
水 600cc

〈前日〉から準備をはじめます。

『キサンタンガム』は〈サーモンコンフィ〉をつくる際のソースに使ったとろみをつけるためのゲル化剤。
『乳酸カルシウム』は初登場の添加物です。前回、紹介した『ヨーグルトのスフィア』の原材料であるヨーグルトにはなにも加えずともカルシウム分が含まれていますが、普通の液体をカプセルにする場合、カルシウム分を添加する必要があります。そこで登場するのが乳酸カルシウムです。間違って塩化カルシウムを添加しないでください。(塩化カルシウムはまずくて食べられません)

前回と同じようにアルギン酸液をつくります。水とアルギン酸をミキサーにかけて水和させ、冷蔵庫で一晩置き、空気を抜きます。(もしくは真空包装機にかける)

オレンジジュース、乳酸カルシウム、キサンタンガムも同じようにミキサーにかけて溶かします。キサンタンガムはただのとろみづけなので、手に入らなければ濃度は葛粉でつけても大丈夫。ただ、キサンタンガムを使うと非加熱でとろみがつけられるというメリットがあります。泡が大量に出ると思いますので、同様に真空包装機にかけるか、冷蔵庫で一晩置いて、泡を抜きます。

一晩経つとこんな風に泡が浮きます。それをスプーンで取りのぞけば準備完了。急いでいる場合には鍋で加熱して空気を抜いてしまうという荒技もありますが、キサンタンガムを使ってせっかく非加熱でとろみをつけたので、今回は時間をかけて泡を取りのぞいています。

前回はスプーンですくってアルギン酸液に落としましたが、今回は丸い型に流し込んでいきます。一つ一つ重さを量ることで球体の大きさを揃えることができる、というわけ。(写真は一個あたり5g)

冷凍庫で凍らせました。シリコン製の型を使えばこんな風に簡単に取り出せます。

さて、いよいよ球状化の作業に移ります。アルギン酸液を火にかけて50℃〜55℃くらいまで加熱しました。

そこにさきほど凍らせた丸キューブを落とします。

溶けたところから反応し、カプセル状になります。これが冷凍逆球体化法( Frozen Reverse Spherification)です。鍋を揺すって40秒から1分間。

前回のヨーグルトのスフィアは一つずつしか作れませんでしたが、この方法だと一気に入れても大丈夫です。

穴あきのレンゲやスプーンでとりだします。オレンジジュースのスフィアのできあがり。このままとりだして水につけておけば2〜3時間は持ちますがもっと長く保存したい場合は油のなかに入れておきます。

今回は香りをつけるためにエキストラバージンオリーブオイルに漬けました。昔、エルブジではグリーンオリーブ のジュースで球体をつくり、ハーブのオイルに浸けて香りをつけていました。

例えばヨーグルトソースに浮かべるとなんちゃって目玉焼きになります。卵の殻のなかにいれても雰囲気が出るかもしれません。

こんな感じ。球体化のテクニックも誕生してから十年以上経ちますが使いどころは難 しいですね。味の点でどれだけメリットが出せるか、もう少し検討の余地はありそう です。ちなみに乳酸カルシウムは液体の1%、アルギン酸は液体の0.5%が目安です。固める液体を変えて色々と試してみてください。

撮影用の食材代として使わせていただきます。高い材料を使うレシピではないですが、サポートしていただけると助かります!