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安倍首相辞任が観光に与える影響

 安倍首相が辞任を表明されて大騒ぎになっていますが、観光産業への影響はどうなるでしょうか。

 辞任の観測が出てくる前までは、業界の潮目が少し変わってきたように感じていて、先週には主要国による「コロナサミット」が開催できれば追い風になると書いていたところ、今週はさらにポジティブな変化を予感させる機会が多く、年内の状況打開も可能ではないかという期待を持っていました。

 具体的には、まず25日(火)にGoToトラベルがなぜ必要である理由について、TwitterでChrokiさんという方が5chのまとめを引用して投稿したところ、28日22時現在でリツイートが7.3万件、「いいね」が14.4万件と非常に多くの賛同を得ています。

 内容は、ご覧の通り「なぜ観光業か」「観光業が潰れても問題ないだろう」「感染リスクがあるだろう」「直接給付でいい」といった点について簡潔かつ明快な反論を示したもので、25日に最初に読んだタイミングではリツイートが6000回程度でしたが、数日で大きく増えました。

 業界にいる身としては当たり前の内容なのですが、それだけ多くの業界外の方に観光の惨状や重要性が伝わったことは手放しで喜ばしいものです。(逆に言うと、それだけ旅行業界側の説明が足りていないということでもあり、情報発信を生業としてきた身としても、投稿されたまとめの有無を言わせない切れの良さは大変参考になります。)

 続いて、新型コロナウィルスの危険度を5段階の2番目から5番目に引き下げるというニュースも聞こえてきました。以前から、そのうちコロナの狂騒にも慣れるか飽きるかしてそのうち反応が鈍くなっていくはずと主張してきましたが、「コロナは(今や)それほど恐れるものではなし」という発信がなされれば、その予想が当たるのも遠くないのではないかと思っていました。

 しかし、それもこれも安倍体制を前提としたもので、これからのことを考えると、総裁選やら組閣やらが始まることも含めて心もとなくなります。安倍首相の能力云々ということではなく、普通に考えて局面をすすめるスピードは落ちるでしょうし、状況がより良くなると期待するのは誤りでしょう。業界としては壊滅的な状況のなかで、不確定要素はできる限り排除しておきたいところだったのですが。

 また、今後について考えると、社会の分断がどうなっていくか非常に不安です。首相辞任の一報を聞いてからSNSやヤフコメの投稿を見たのですが、右派と左派が強い言葉で罵り合っていて、興奮しているからという側面もあるのかもしれませんが、以前よりも激しさが増しているように思います。

 多くの個人が意見を発信できるようになったのはインターネットがもたらした変化のなかでも一番大きなものの一つですが、本名も明かさずに言いたいことを言えるために無責任な投稿が多かったり、言葉や主張について根拠や正確性ではなく過激さばかりが評価される昨今の風潮は、弊害としか思えません。

 聞きたいことだけを聞く、自分の考えや心情に都合の良い情報だけを信じる、敵だ味方だ、といった態度を取るのは、コロナよりもよほど悪い病です。しかも、以前は一部の層が目立っている印象でしたが、最近は良識ある方々もわざわざ侮蔑的な表現を選ぶようになっていて、不穏さを増しています。

 海外に目を向けても、米国はこうした分断が最もはっきりと表出しているような気がしますが(日本でメディアを通して見聞きする限り)、日本もそのような道を進むのでしょうか。

 振り子や螺旋のように、物事は片方に振れると次はもう片方に進むものですので、どこかでまた社会の流れが変わるであろうことは予想されます。しかし、現在が極限まで振り切った状態かは分からず、さらに悪化していく可能性も十分にあります。地震がプレートのひずみによって引き起こされるように、社会の分断も何らかの形で爆発しては一旦平静を取り戻すようなものであるかもしれません。

 観光は平和産業であり、国境や立場を超えて理解を促進する役割を担いますし、逆に社会が不安定になると今回のコロナ禍のように大きなダメージを受ける産業です。せめて観光に携わる我々は、感情や世の中の風潮に流されることなく、落ち着いて理性的な行動を示していきたいものです。(松本)


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