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旅行業界コラム、再開第1弾-必要とされる旅行会社に

 noteユーザーの皆様、はじめまして。旅行業界で働く方々をターゲットとしたウェブメディア「トラベルビジョン」の編集長を10年超務めてきた者です。この度独立することになり、長年書いてきたコラムを続ける場所をどうしようかと探していてこちらにたどり着きました。

 これまでのコラムは基本的に旅行業界の発展だけを考えて書いたもので、noteで公開していく文章もまずはそれをベースにしていく予定です。そのため業界外の方がご覧になっても分かりにくかったり共感できなかったりする部分があろうかと思いますが、そのような事情ですのでご容赦いただけますと幸いです。


 さて、無職になって1週間。実際には3日に個人事業の開業届を出したのでもう無職ではないのだと思いますが、トラベルビジョンのアドバイザーとして契約をし、会社のメールアドレスも使い続け、日々の業務にも関わっているので、どうも「雇われていない」ということの実感がまだそこまで湧いていません。

 この1週間、当欄をどのような形でいつ再開しようか思案してきました。これまでは業界誌の編集長という立場でしたから、責任が伴う一方その分だけ発言の重みもあり、その力を無駄にしないようなるべく踏み込んだ意見を書こうとしていました。しかし、これからは市井の1人です。個人ブログのようなところから「往来の再開を」とか「航空会社のリファンド問題は」などと主張することにどれだけ意味があるのかなどと考えてしまいます。

 ただ、先週に最終回を配信した際には、多くの方から惜別のメールや問い合わせフォームからのご投稿をいただいて大変感激しました。そして、悩むなかで改めてそうしたお声を読み返し、とりあえずまずは始めてみようと思い、キーボードに向かうことにした次第です。


 お送りいただいたメッセージのなかには、最終回までの数回のコラムは極端な意見が多くなっていたというご指摘もありましたが、まさにその通りで自覚もあります。

 コロナ禍でこれ以上自粛を続けていたら旅行会社は軒並み倒れてしまう、そもそもデータから見てそれほど恐れ続ける必要のあるものなのか、といった主張をしていたわけですが、私の退職も自ら選択したものながらコロナがなければこうはなってなく、「俺はこんなことになってしまったぞ、悠長なことを言っている人は本当にそれで大丈夫なのか」という思いがあふれ出た慟哭でした。

 現在は諦観にも似た感情となっていることに加え、裏は取っていませんが、ある中規模旅行会社がボーナスは出すし社員旅行にも意欲的らしいという噂を耳にしたり、別の旅行会社は得意とする登山ツアーの売上が7月に前年の9割まで戻せたという話を聞いたりし、軒並み倒れるなどということはないのかもしれないと思い直しています。

 ただ、そうは言っても業界が苦しいことは間違いなく、聞こえてくるのはどこの観光局が日本事務所の契約を凍結したとか、誰が退職したとか旅行と関係ない部署に異動したとかそういうような話題がほとんどです。多くの会社が仕事がない状況を耐えているなかで、雇用調整助成金の上限額引き上げの特例措置が延長されなければ、まさに雇用に手を付けざるを得なくなるでしょう。

 街へ出るとそれなりに飲食店は混んでいるようになり、ようやく少しは明るい兆しが見えてきたかと思ったら再び営業時間短縮が要請され、あちらの業界も厳しそうだと思う一方、その苦境について同情的な取り上げられ方もしていて、GoToでひとくくりに叩かれた旅行業との差を思うと悔しい思いがします。


 まあ一方では「本当に必要なものは残る」という暴論もあり、確かに旅行や観光産業のためだけに世論や集団的な恐怖心が大きく変わっていきなり交流が再開するというようなことが残念ながらほとんど期待できないなかでは、そういう考え方にシフトしていく必要もあるのかもしれません。

 そうだとすると、これから消えていく旅行会社は、淘汰されるべくしてされるのだという酷な話になります。しかし、逆に言えば必要なものは残るわけですから、長年の懸案である旅行会社の存在意義という課題に向き合うチャンスと捉えることもできるでしょう。社会が極めてドラスティックに変化しているタイミングですから、これまでは難しかったビジネスモデルの変革も可能になってくるかもしれません。

 トラベルビジョン在籍時には、そうした変革のお手伝いになるような情報をお届けしたいと願って日々取り組んでいましたが、その思いは今も変わりません。こちらのnoteか、トラベルビジョンに原稿を売り込むか、あるいは別の方法かは分かりませんが、どちらかでそうしたコンテンツはお届けしていきたいと思います。ぜひお付き合いいただけますようお願いいたします。(松本)


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