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名刺の肩書きに悩んだ話

名刺を作ろうとしている。
本業用の名刺は会社が用意してくれているが、副業用に自分で作った名刺を持ちたくなった。今後インタビューやイベントへ出かける際に持っておくと、何かのチャンスにつながるかもしれない。
名刺を作ること自体は決して難しいことではない。最近はテンプレートに入力するだけで名刺をすぐに印刷できるサービスも普及している。デザインはテンプレートを調整すれば問題なさそうだが、肩書きの欄で手が止まってしまった。

医療系のwebコンテンツ作成が副業収入のほとんどを占めている今、現時点の自分に一番近い肩書きは「医療系webライター」、「薬剤師ライター」あたりになるだろう。
しかし今後取り組みたいのはどちらかといえば紙媒体で、ジャンルも医療コンテンツよりエッセイを書きたい。現に最もリソースを割いているのは、医療とは全く関係ないエッセイやインタビューをまとめたZINE制作だ。
今の自分と、これから挑戦したい仕事の間にギャップがある。
名刺を渡すシーンを想像したり、他の人が作成した名刺を調べたりするが、名刺デザインの名前の上にある空欄は一向に埋まらない。
まさか名刺作りがきっかけで、アイデンティティの悩みにはまるとは思わなかった。

会社員として働いているうちは、名刺も肩書きも会社から与えられる。会社の肩書きが自分の信頼を生むこともあるが、与えられた肩書きについて疑問を持つ機会はなかった。
個人として名刺を作るという経験は、改めて自分一人が可能なこと、可能にしたいことを考えるきっかけになった。

自分は何者なのか。
30歳を目前にしもなお、モラトリアムのような悩みからは抜け出せないものだ。案外生きている間、ずっと悩んでいるのかもしれない。

いつか自分にしっくりくる肩書きが見つかったら変えてもいいのかもしれない。ナレーターの有野優樹さんは最近「声優」の肩書きを外したという。確かに肩書きがずっと同じである必要はない。


チヒロさんの肩書きは「街歩きエッセイスト」だ。しっくりくる言葉がなければ、自分で作ってしまうのもいい。覚えてもらいやすいし、名乗ることに特別な資格や実績は必要ない。もちろん、名乗るなりの努力は必要だろうけれど。

考えあぐねた結果、書くものをむやみに限定せず「ライター」と書くことに決めた。何を書くにせよ使える肩書きにしたので、見方によっては玉虫色の決断かもしれない。
実際に自分が書いた文章やこれから書く文章に、「自分が何者か」という問いに対する答えをゆだねたい。

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