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「安定した仕事」の「安定」について考える

年末に父が実家へ帰省したところ、いとこと鉢合わせたことでとある事件が起きた。
いとこは弟と同じ年で、今は派遣社員として働いている。以前学校の講師をしていたが、教師という仕事が合わず民間企業へ転職していた。
彼が公務員という選択肢を捨てたことを父は気に入らなかったらしく、「それで将来大丈夫なのか」「なんで辞めたんだ」と彼をなじったらしい。
親戚伝いにその話を聞いて、父とはもう会えないな、と思った。会社を休職してから3ヵ月が経っていて、私は会社を辞めるつもりでいた。

父は学校を卒業してから今まで、ずっと公務員として働いている。叔父や叔母は高校教師で、他のいとこは市役所に就職していた。
父には「公務員こそ最も安定していて、誰もが目指すべき職業」という固定観念がある。そうでなければ医師か薬剤師で、それ以外の選択肢は狂気の沙汰。弟が大学時代に「教員免許を取らない」と言ったときも、父は酔って暴れた。
父は真面目ではあるが話が通じず、融通がきかないところがある。仮に父が民間企業へ就職していたら、リストラに遭っていた可能性は高い。父に限った話をすれば、リストラのない公務員という仕事を選んだのは適切だったのかもしれない。

安定した仕事とは何だろうか。父の答えは「景気に左右されず、リストラされない職業」だろう。苦労をさせまいという彼なりの愛情なのだが、いかんせん私とは相性が悪い。
その仕事が好きで、やりがいを感じているなら何も問題はない。一定の収入が約束されているということは生活する上で心強く、社会的な信用にもつながる。
しかし社会人になってみると、父の言う「安定した仕事」に就いていても心を病んでしまう人、仕事を辞めてしまう人が後を絶たない。仕事を続けていれば経済的には安定しているかもしれないが、それは本当に安定といえるのだろうか?

私にとっての安定している仕事とは「自分を大きく歪めることなく続けられる職業」だ。薬局実習には落ちた。社会に出てからも適応障害で2回休職している。高圧的な上司がいるとパニック症状を起こす。父の「安定」は私にとっては毒になりうる。
2回目の休職から復職して今に至るが、今の仕事を続けられるとは思っていない。甘いと言われるだろうか?それでも他に道がないのだ。
わかり合う方法もわからないので、父とは疎遠なままでいる。もし私が「フリーランスになりたい」とでも言おうものなら、父は怒り狂うだろう。
どうしようかと思いつつ、どうもしないで生きている。

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