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Q職日記

私が挫折の歴史を語ると、少し長くなる。
転校をきっかけに小学校六年生で不登校。中学一年は時々休みながら通うも、中学二年生で再び不登校。高校受験は本命の学校に落ち、私立高校から医学部を受験するも現役、一浪と不合格。併願で合格した薬学部に入学したが、二年生から休みがちになった。在学中は薬局実習の単位を落としたが何とか取り直し、卒業して就職するも社会人二年目の冬に適応障害で休職した。
そして、復職と転職を経て一年半。
私は二度目の休職に突入した。

ここまで精神的な挫折を繰り返すと、段々転び方と起き上がり方が上手になってくる。
心を壊したとき。まずは何もせずゆっくり休む。平日の昼間、窓から差す陽気をふんだんに浴びながら天井を見つめる日には罪悪感や無力感に苛まれるが、それでも休む。
ある程度気力が戻ってきたところで、次に生活リズムを整える。午前中に散歩へ行き、食事を決まった時間にとる。カフェでモーニングを食べることを早起きのモチベーションにしていたこともある。
安定してきたら、「負担なくできること」に加えて「できるけど少し疲れること」を生活の中に加える。人が多い場所へ出かける、やや手順の多い作業をする、後回しにしていた家事をする、などなど。筋力と同じで、気力も全く負荷をかけないと長期的にみて落ちていくような気がする。負荷の加減を間違えると反動で寝込んでしまうこともあるので、バランスが重要だ。
頭を使う作業は、回復する過程において最後の段階になる。普段は映画観賞や読書、noteの更新を楽しみとしている身としては、今まで大事にしていた趣味が一切できなくなることが本当に辛い。
特に文章を書くことは非常に難しくなった。単語や文が頭から出てくるまでに以前の倍以上時間がかかる。書いた後でも文章にキレが落ちている気がして、何度も書き直すので一向に進まない。それでも書きたいという気持ちが勝り、思ったことを綴る。下書きが蓄積されていく。そうして悪戦苦闘の末にやっと今日、記事を一つ投稿することができた。

先日、リハビリも兼ねて立川シネマシティで「ブエノスアイレス」を観た。香港から地球の裏側、アルゼンチンを旅するゲイのカップル、ウィンとファイを中心に話は進んでいく。
二人はしょっちゅう喧嘩別れをしては、ファイの「やり直そう」という言葉をきっかけにずるずるとよりを戻していた。アルゼンチンでも二人はいさかいを起こし別れる。しばらく別々に暮らしていたが、怪我を負ったファイをウィンが助けたことで再び一緒に暮らし始める。
二人が会話するシーンでは、ウィンとファイはほとんど口論ばかりしている。それでもウィンはまめに怪我をしたファイの世話をするし、ファイはウィンにタンゴを教え、一緒に踊る。最後に二人は別れているが、どことなくその後「やり直す」可能性がありそうな終わり方になっている。

上手く立ち直れるようになったとはいえ、そもそも挫折はもう繰り返したくないなと思う。健康を損なうことになるし、収入も安定しない。キャリアにだって響く。生活のためには働くしかないが、挫折する可能性が低い選択は探せばあるかもしれない。
それでもまた、私はどこかで「やり直す」ことを選ぶような気がしている。

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