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“強くなる勇気”を持つ選手-バレーボール石川祐希3-

世界選手権から間も無く、石川選手はイタリアへ。今回はプロとして、シーズンを通しての滞在に。

結果を出したいという強い気持ちが、感情として現れてしまった世界選手権。「このままじゃいけないんだ」と、何より自分自身にプレッシャーをかけてイタリアへ旅立つ石川選手を見て、何が何でも「シーズンを通して石川選手の試合を見よう!」と心に決めました。

所属するSienaはSuperLega初昇格チーム。アルゼンチン人Cichello監督のもと、A2優勝メンバーを半分以上変えてのトップリーグ挑戦。難しい戦いになるだろうという予想はしていました。

石川選手はリーグ開幕前の練習試合でさっそく出場、万全な状態でシーズンを迎えられるというニュースがどれだけ嬉しかったか!

学生時代にイタリアで3回プレーしていますが、スタートからいいコンディションで入れるのは久しぶりで、非常に幸せを感じていますし、モチベーションにもなっています。


しかしリーグ開幕から8試合、勝利なしという苦しい展開が続きました。サーブで崩す展開が少ない、フロアディフェンスの統率が取れていないのがじわじわと効いてきて、いいところで競り負けてセットを落としていました。

スタメンで出場し続けることを嬉しく、そして眩しく感じる一方で、チームとして勝てない日々。世界選手権から抱えている自分自身の緊張感が高まりすぎて苦しくて溺れてしまいそうで・・・祈るような気持ちで迎えたホームMilano戦。

待望の初勝利!マルーフが、とにかく石川にトスを上げ続け、それに応えるようにレシーブからすぐ助走し、ブロックをぶち抜いていきました。託されて、決めきったユウキイシカワのかっこよさよ・・・!

フルセット、試合が終わったころ日本は早朝で、まだ外は暗くしんとした時間。それと真逆に熱さの冷めやらぬ頭と心臓。嬉しさと、安堵と、新たな興奮と・・・。

その後、2勝目をあげたCastellana Grotte戦、惜しくもフルセット負けとなったModena戦、チームの課題が改めて明確になったMonza戦を現地観戦しました。

石川選手は精一杯もがき、やれること全てを全力でやっていた。自分自身のプレーの精度はもちろんのこと、積極的な声かけや、劣勢のときには落ち着かせるようなジェスチャーを取ったり。練習では最後までレシーブ練習をして腕を真っ赤にして、試合中では最後までボールにくらいついて時には足を真っ青にして・・・。

そんな石川選手だから、みんなに頼られ、そしてかわいがられていた。チームのなくてはならない存在になっていた。それがもう、嬉しくて嬉しくて、その空気を感じられたことを幸せに思いました。気がつくと、世界選手権のやりきれなさはもう自分の心からなくなっていました。

《大げさではなく、チームで攻守の軸を担っているといっても過言ではない。》


Sienaはシーズンを通して3勝23敗、17ポイント。降格。

SuperLegaでの戦いは1年で幕を閉じました。

26試合中、12試合がフルセット。その中で勝ちきれたのが2試合。

よく粘れた、というフルセットもあれば、なんでフルセットになってしまったんだ…という頭を抱えたくなるものもありました。

長い夜を何度も越えて、悔しい朝を何度も迎えて…。

それでも、夜中につい叫びながらガッツポーズしてしまう最高の瞬間があったこと。忘れたくはない。

距離を越えて、時差を越えて、共に戦ったつもりでいた26試合。

終わりたくはなかった。あと5試合くらいすればなんとか上向きそうだよって思いながら、最後のRavenna戦が終わってしまった。

ありがとう、Siena。ありがとう、石川選手。

バレーボールという競技の面白さを広く深く知る日々を経て、たくさんのものが心に詰まっている。

確かなのは、バレーボールがもっと好きになっているよってこと。世界選手権ですくんでしまった心と足が動いているよってこと。

とにかくもっと石川選手のプレーが見てみたい!そんなシンプルな気持ちで見始めたけれど、振り返ってみれば全試合スタメン。SuperLegaのランキングに名を刻み、なにより多くの経験をその体にぎっしりと詰め込んだシーズンになった。彼自身が、彼自身の持ちうる全てで掴んだもの。

ひたすらに、すごいなと思った。でも、背負うことだけを覚えないでくれとも思いました。

勝手な想いを小さく、それでも大切に抱えて、このSienaでのシーズンを締めくくりました。

↓旧ブログに、Siena全試合のつぶやきをまとめたものがあります。長いので、お時間あるときに・・・。


そして5月、シーズン7位のPadovaへ移籍するとの報が。

個人的に、Padovaは石川選手に合っているチームだと思っていたので驚きと喜びが同時に湧き上がりました。

何より、Sienaでのシーズンが認められたんだ!と込み上げるものがありました。

プロ1年目、シエナでのシーズンはチームでただ1人、全26試合に先発出場し、111セットでリーグ12番目の376得点を記録した。しかし、チームは14チーム中13位で2部降格が決まったことで、実績を残した石川の元へはセリエAの約10チームからオファーが届いたという。

石川選手は「プレーオフ進出」を新たな目標と定め、Padovaでの新シーズンへと向かっていきました。

続きます。


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