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発達障害当事者の平均所得はどれくらいなのか

発達障害当事者の一人として、「発達障害と貧困」というテーマについて日々考え続けている。

一般に、ASD者を含む発達障害当事者は、社会から貧困状態に追い込まれやすいと思っている。
その理由は、発達障害や二次障害等が原因で、仕事に就けない
或いは、仕事に就けても低賃金の職にしか就けないことが多いからだ。

貧困」という概念に関して。
1980年~90年代の価値観からすれば、日本に貧国層はいないと考えがちだが、実際は異なる。

今や日本の相対的貧困率は15%を超え、先進各国では米国に次ぐ高さとなっている。
子どもの7人に1人が貧困というデータもあり、残念ながら日本でも格差社会が定着してしまったと考えて良いと思う。


「Kaien」のデータをもとに平均所得を考える

さて、発達障害当事者の平均所得については、
データの取り方によって値がバラバラだが、
例えば就労移行支援事業所を運営する
「Kaien」が収集したデータ(2022年度版)によれば、

当事者の平均年収は、約291万円となっている。
年収300万円弱ということは、月収にすると25万円程度。

意外と高いなという印象だが、データをより深く見てみると色々なことが分かってくる。

例えば、都市部と地方で平均所得を比較した場合、
都市部は年収約299万円、地方は約254万円となっている。
ここで言う都市部は、三大都市圏を指している。

また、一般枠と障害者枠で比較してみると、
一般枠は年収約346万円、障害者枠は年収約258万円となる。

つまり、都市部に住む一般雇用従事者が、比較的年収の高い傾向にあることが分かる。
この他にも、Kaienのサイトに貼られているPDFには、性別や二次障害の有無によって平均所得がどう変わるかが分析されている。

厚生労働省のデータを見てみると

さて、次は厚労省の「障害者雇用実態調査」を見てみる。
厚労省のデータは、当然ながら「Kaien」よりも広い範囲をカバーしている。

最も最近の平成30年度調査によれば、
発達障害者の平均賃金は、月12万7000円となっている。

先ほどのKaienの調査(月25万円程度)と比べると、
値がかなり小さくなっている。

Kaienと厚労省のデータの違い

この違いが生じる要因は何なのかと言うと、

  • Kaienの調査は、一般雇用、障害者雇用に関わらず、調査対象に含めている。

  • Kaienの調査は、Kaienの就労移行を利用した人や、それに関わりがある人が回答することが多い。

  • Kaienは発達障害当事者でもとりわけ高IQの人との親和性が高く、そうでない人はあまり利用していない。

  • したがって、Kaienの調査では、発達障害当事者の一部の状況しか分析することができない。

  • 厚労省の調査は、障害者雇用だけにフォーカスしている。

  • 一般企業や公務員の障害者雇用だけでなく、作業所等で働いている人も統計に含まれている可能性がある。(労働契約を結ばないB型作業所は除外されていると思われる)

などの理由が考えられる。

つまり、Kaienの調査は、「発達障害当事者の上澄み層
(高IQ、都市部住み、就労移行に通えるほど実家に経済的余裕がある)の
平均所得を反映していて、厚労省の調査では上澄み層だけでなく、
より多様な当事者の状況を反映していると考えられる。

このようなことから、発達障害当事者の所得については、
「障害の程度の軽さ/重さ」「二次障害の有無」「住んでいる地域」
「持っているスキル/技術」「職歴の有無(とりわけ、一般雇用での職歴)」
「学歴(大卒院卒か否か、文系か理系か)
「障害福祉を積極的に受けられる環境か否か」「周囲の理解」

など、さまざまなパラメータによって大きく異なるものだと考えられる。

したがって、「発達障害=貧困」と簡単に判断することは難しいが、
やはり上澄み層に入ることができなければ、自分の力だけで
経済的に豊かな状態に持っていくのは難しいと考えざるを得ないと思う。

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