学生時代から好きな本

ずっと好きな作家を挙げるとしたら3人いる。
市川拓司、西加奈子、山崎ナオコーラ(敬称略)
どの方もデビュー作ではない作品が一番好きで、本当に何度も何度も読んでいる。
市川拓司 いま、会いにゆきます
は、地元の未来屋書店で平積みされていて購入した。あのときは、まだミリオンヒットの前でちょっとした話題作になり始めた頃だった。エンディングでタイトルの意味がわかるのも、すごく面白かった。スプロケットを拾うシーンもピレーネ犬の話も、ノンブルの話も出てくる単語やストーリーの中に僕はどんどんハマっていった。事務員さんが指摘する大きなスーツもエピソードに事件性はないものの、彼の生きている場所が何故か僕の呼吸しやすい場所に思えて、何度もあの世界が恋しくなる。ファンタジーは好きではないはずなのに、僕はどこかで彼らが生きる世界が存在していてほしいと強く願っている。その後作者本人のエッセイなどを読むと、この物語のからくりが見えてくる気がした。そしてやはり彼が日頃感じていることを僕も感じていた時期があって、それが物語に反映されているから心が共鳴するのだと思った。美しい物語と繰り返される一つの愛の物語。今でも、小節の冒頭を諳んじるのが好きだ。

山崎ナオコーラ カツラ美容室別室
どこかでこうやって、恋と人間関係を育んでいる人がいるんだろうなと思えた作品。可愛いランチョンマットを敷いた食卓につやつやの丸みを帯びた箸置きをおいたような嬉しさがある作品。当たり前の日常が当たり前に過ぎて、それが何よりも美しいと教えてくれた話。この作品を読んで、僕は強く日常が書かれている作品が好きだなと思うようになった。市井の人の何気ない生活が愛しくて本の中で呼吸しているこの世界を僕は大好きだなと感じた。どうしたらこんな表現ができるんだろう、どうしたらこんなに日常な些細なことを美しく捉えることができるのだろうと以前サイン会に行ったときに、御本人に言えればよかったなと後悔している。
初期のエッセイの好きな人の顔は嫌いにならないという話も気に入っていていつも話してしまう。

西加奈子 さくら
高校生の時に学校の近くのモールを歩いていて、たまたま手に取った。そして、世界がひっくり返った。その頃にまだセクシャルマイノリティーのことを書いている小説は少なくて、当たり前に当たり前じゃない人が出てくる物語が存在することに驚いた。違うということ、変わっていくことに大手を振って頑張れよ!それでいいんだよ!笑え!生きろ!と強いメッセージをもらったようで、心が奮い立つのを感じた。こんな正しい本があるのか、こんなに生きていくってことを肯定する本があるんだろうかって度肝を抜かれた。ガムとニキビの話も、集会と猫の話も、ヒリヒリするのに頭がビリビリしてきて本当に物語の力を感じる。何度読んてもラストで涙が出てしまってしょうがない。

どこに引っ越してもこの3冊は目に入るとこに置き、友人に何度プレゼントしたかわからない。
学生時代から、何年経ってもこの3冊が僕を離してはくれない。この3冊が僕の人生をずっと支えてくれていると感じる。ありがたい。

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