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星空観望会で曇ったら(星座神話・春)

市街地での観望会(移動天文台)を考えると、見える恒星は3等星ぐらいまでかと思います。

6月1日20時ごろの空(Stellariumで表示)

仮に2.5等星まで(大気による減衰あり)として、春の移動天文台(6月1日20時)を想定すると、視界が開けていれば見えている星は

1等星
 ・カペラ(ぎょしゃ座)
 ・ポルックス(ふたご座)
 ・プロキオン(こいぬ座)
 ・レグルス(しし座)
 ・アークトゥルス(うしかい座)
 ・スピカ(おとめ座)
 ・ベガ(こと座)
 ・デネブ(はくちょう座)
 ・アンタレス(さそり座)

2等星
 ・メンカリナン(ぎょしゃ座)
 ・カストル(ふたご座)
 ・アルギエバ(しし座)
 ・デネボラ(しし座)
 ・アルファルド(うみへび座)
 ・ドゥベー(おおぐま座)
 ・アリオト(おおぐま座)
 ・ミザール(おおぐま座)
 ・アルカイド(おおぐま座)
 ・ポラリス(こぐま座)
 ・コカブ(こぐま座)
 ・アルフェッカ(かんむり座)
 ・エルタニン(りゅう座)
 ・ラスアルハゲ(へびつかい座)

でしょうか(星図上でどれがどれか分かります?)

このうち、話のメインになりそうなのは
 ・しし座
 ・うしかい座
 ・おとめ座
 ・こと座
 ・うみへび座
 ・おおぐま座
 ・こぐま座
 ・かんむり座

ほとんど見えていないですが
 ・かに座
 ・てんびん座
 ・からす座

といったところでしょうか。

※注意※
星座神話については多くの場合、複数のお話が伝わっています。
本の書かれた時期やターゲットとする年齢層などにより、細かい内容やニュアンス、最新の研究結果と異なることが多いため「あくまで一つの紹介例」としてご覧ください。

しし座

しし座の獅子は、ギリシア神話の英雄ヘラクレスの12の冒険話に出てくる怪物で、ネメアの谷(森?)に住み着き、人や家畜を襲った獅子とされます。
ヘラクレスはこの獅子の毛皮を持って帰るために獅子に襲いかかりますが、その皮膚(毛皮)は非常に硬く、矢をはね返し、刃物で斬りつけても傷一つつきませんでした。そこでヘラクレスは棍棒で獅子を殴りつけますが折れてしまします。最後の手段と獅子の首元に飛びかかり、三日間の格闘の末に締め殺しました。
ヘラクレスはこの獅子の毛皮をいつも肩にかけていたが、のちの天に上げられて星座になりました。

うしかい座

うしかい座は「正直、正体がわかっていません」
「天を支えるアトラス」や「カリストとゼウスの間に生まれたアルカス」、「ディオニュソス(バッコス)からブドウ酒の製法を教わったイカリオス」などはっきりしません。
なお、星座絵ですと隣のりょうけん座と結び付けられて描かれていますが、ギリシャ神話では全く関係がありません。一等星アークトゥルスが「熊を護る者」というギリシャ語に由来するため、熊を番するために連れた2匹の猟犬として描かれたのかもしれません(りょうけん座が作られたのは17世紀でプトレマイオスはおおぐま座の一部としていました)。

私は(アルカスの話はこぐま座に持っていき)「天を支えるアトラス」の話をよくするので、そちらを紹介しましょう。
アトラスはギリシャの先住神である巨人族の一人でしたが、大神ゼウスらオリンポスの神々が侵入してきたことでこれと争います。長きにわたって争いますが結局は敗れてしまい、アトラスら巨人族は地下に閉じ込められてしまいます。
しかしアトラスはその大きな体とおとなしい性格に目をつけられ、生涯、天を支える役目につかされます。生きながら重い天を支えるアトラスは勇者ペルセウスに頼みメドゥサの首を見せてもらい、石に姿を変えてもらい苦しみから逃れたと伝えられ、その姿が北アフリカにあるアトラス山脈であり、アトラス山脈から見える海がアトランティック・オーシャン(大西洋)とされます。

おとめ座

おとめ座も「正直、正体がわかっていません」
「豊穣の女神デーメーデール」か「正義の女神アストラエアー」、「デーメーテールの娘ペルセポネー」などはっきりしません。

私は一等星スピカとからめた「豊穣の女神デーメーデール」の話をよくするので、そちらを紹介しましょう(星座絵を見ると一等星スピカが輝く位置に何かを持っている様子が描かれています。これは麦の穂でギリシャ語名で穀物の「穂先」を意味します)。
デーメーテールの娘ペルセポネーが友達のニンフ(妖精)たちとシシリア島の草原で花を摘んでいたところ、冥界の王ハーデースに拐われてしまいます。
それを知ったデーメーデールは絶望のあまり嘆き悲しみ閉じこもってしまい姿を表さなくなります。すると春が来ても大地の草花は芽を出さず、草木は枯れてしまいました。
これに困った大神ゼウスはハーデースにペルセポネーを母の元に返すように命じます。しかし冥界で生活の中で冥界のザクロを4つ食べていたペルセポネーは、一年のうち4ヶ月だけ冥界に住むこととなりました。
デーメーデールは娘が冥界にいる4ヶ月間は閉じこもってしまうため、草木が全く育たない冬が来るようになった、というお話です。

こと座

こと座の星座神話は、多くのギリシャ神話の中でも人気のあるお話かもしれません。
こと座の「琴」は発明の神ヘルメスが発明し、アポロンが譲り受けて弾いたものになります。アポロンはこの琴を息子のオルペウス(オルフェウス)に譲り、オルペウスは素晴らしいことの名手となります。
やがてオルペウスはエウリュディケと結婚しますが、新婚早々エウリュディケは毒蛇に噛まれて死んでしまいます。
悲しんだオルペウスは冥神ハーデースのところに行き、琴を弾きながら妻を地上に戻してくれるように頼みます。ハーデースはオルペウスの弾く琴の音色が美しいのでこれを許可しますが、地上に戻る途中、決して振り返ってはならないという条件をつけました。
帰る途中、あと少しというところでオルペウスはエウリュディケが後ろをついてきているか不安になり、思わず後ろを振り向いてしまいます。
すると叫び声とともにエウリュディケは冥界に連れ戻されてしまいます。
悲しみにくれたオルペウスは川に身を投げて命を経ってしまいます(酒神ディオニュソス(バッコス)の祭りで泥酔した女たちに殺され、川に投げられたという話もあります)。
オルペウスの琴はそのまま川を流れていたが、大神ゼウスが拾い、その主人の楽才を惜しんで星座としました。

うみへび座

うみへび座は、しし座でも出てきたギリシア神話の英雄ヘラクレスの12の冒険話の2番目に出てくる怪物ヒュドラとされます(しし座は1番目)。
ヒュドラはギリシアのアルゴス地方の沼地レルネに住む怪物で、 九つの首を持つ大きな水蛇でした。
ヘラクレスはこれを退治するために挑みますが、九つの首のうち一つは不死であり、切ってもすぐに新しい首が生えてきて苦戦します(一説には首を切った切り口から新しい首が2つ生えてきたと言います)。
そこで切った首の切り口を焼いて新しい首が生えてこないようにし、不死の首は大岩の下に埋めてようやく退治しました。

おおぐま座・こぐま座

おおぐま座とこぐま座の星座神話は一つの物語で紹介することが多いです。

おおぐまの正体はアルカディア王リュカオンの娘カリストになります。アルテミスの従者として狩りに明け暮れる生活をしていたカリストは、ある日、木陰で休んでいるところを大神ゼウスに気に入られ、やがて男の子アルカスを授かります。
これを妬んだゼウスの妻ヘラ(ヘーラー)はカリストを熊の姿に変え森の中へ追いやってしまいます(処女の誓いを破られたことに怒ったアルテミスが熊に変えたという話もあります)。
それから十数年ののち、カリストは森の中で成長した息子アルカスに出会います。
森の中で熊に出会ったアルカスは驚きますが、母カリストは息子であることに気づきます。会えた嬉しさのあまり抱きしめようと近づきますが、熊が母であることを知らないアルカスは後退りし、槍で突こうとします。
この様子を見ていたゼウスはアルカスに母殺しの大罪を犯させまいと、アルカスも熊に変え天上に上げて、母カリストをおおぐま座に、息子アルカスをこぐま座(うしかい座とした話もあります)にしました。

この時、ゼウスが熊の尻尾を持って天に放り投げたため、おおぐま座とこぐま座の尻尾は長い、という説明がされることもあります。

かんむり座

かんむり座の冠は、王女アリアドネの冠であるとされています。
クレタ島には怪獣ミノタウロスがいて、毎年7人ずつの美しい少年と少女が生贄に捧げられていました。英雄テセウスが生贄に混じって潜入し、怪獣を退治します。この時、クレタ王ミノスの娘アリアドネがテセウスの脱出を手助けし、2人は島を脱出します。
ところがテセウスは立ち寄ったナクソス島にアリアドネを置き去りにしてしまいます。愛するテセウスに置いて行かれたアリアドネを島を支配していた酒神ディオニュソス(バッコス)が妃として迎え、その証として七つの宝石をちりばめた冠を送ります。
のちにアリアドネが亡くなるとディオニュソスはその冠を天に上げ、星座の中に飾ったのがかんむり座の星々なのです。

かに座

かに座はうみへび座と同じで英雄ヘラクレスが関係しています。
ゼウスの妻である女神ヘラは、ゼウスの愛人の子であるヘラクレスのことを快く思っていませんでした。そこでヘラクレスがヒュドラと戦っている最中に巨大な化け蟹カルキノスを差し向け、はさみでヘラクレスの足を切ってしまおうと考えます(別のお話としてカルキノスはヒュドラと同じ沼に住むため、加勢してヘラクレスに襲い掛かったというのもあります)」。
ヘラクレス忍び寄るカルキノスですが、ヒュドラと格闘中のヘラクレスはそれに気づきません。それどころかカルキノスは格闘中のヘラクレスに踏み潰されてしまいます。
カルキノスのヘラクレスに襲い掛かった勇気が認められ、天に登り星座になったとされます。

てんびん座

黄道十二星座の中で唯一「道具」の星座です。
隣にあるおとめ座を「正義の女神アストラエアー」としてみた時に、アストラエアーが善悪をはかるために持っている天秤とされます。
なのでてんびん座そのものについての神話はありません。

からす座

ギリシア神話に太陽の神アポロンの使いで、銀白の羽を持ち人の言葉を話す賢いカラスとして登場します。
ところがある日、アポロンの妻コロニスが別の男と密会しているのをみたカラスは、このことをアポロンに伝えます。この密告を信じたアポロンは矢を射てコロニスを殺してしまいます。
カラスの密告を信じて怒り心頭し、矢を射掛けたアポロンはこのことを後悔します。そして余計な告げ口をしたカラスの羽を黒く変え、人語を話す能力を奪って天にあげてしまいます。

ちなみに、カラスを天に打ち付けた際の4本の釘がからす座を作る4つの星であるというお話は、1980年代から日本でのみ広まった話のようです。


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