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星が光る、炎が光る、流れ星が光る

さて、この3つの「光る」理由は同じでしょうか?

星が光る

星が光るのは「黒体放射」という現象になります。
熱した物体や恒星が光を発する現象(熱放射)です。
放射する物体の温度により発する光(電磁波の波長)が異なり、温度が低いほど赤っぽく、温度が高いほど青白くなります。
(人間も光っており、放つ光の波長は赤外線になります)
低くなりすぎると人間が見える可視光の範囲を外れ、赤外線→サブミリ波→ミリ波→マイクロ波→電波と波長がどんどん長くなります。
逆に高くなると紫外線→X線→γ線と波長がどんどん短くなります。

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炎が光る

炎が光るのは光のもとが熱エネルギーであることは同じですが、星とちょっと違います。

ろうそくやガスコンロの炎を思い浮かべてください。
ろうそくの炎は赤っぽく、ガスコンロの炎は青っぽく見えます。
これも温度の違いによるもので、炎の青い部分は燃料ガスと酸素が反応している反応帯です。
赤い部分は、酸素と反応する前の熱せられた燃料ガスから遊離した燃えかす(煤=炭素)の集まりになります。

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一般に炭素を多く含むほど赤い光を発します。これは炭素(燃えかす、煤)が熱せられて輝いているためになります。
(赤い炎の外側に青い炎があるのですが、赤い炎が明るいためほとんど見えません)
熱せられた炭素は酸素が少ないため燃えきれずに煤として出ていますので、うちわなどで酸素を送り込んであげると燃えて出なくなります。

ガスコンロの場合は炭素と酸素があらかじめ混合されているため、煤が出ることなく炭素(煤)が熱せられて赤い炎が出ることがありません。
(中学校などの実験でガスバーナーの空気量を調整すると炎が変わるのを観察したかと思います)

炎は「星とちょっと違います」と書きました。
ガスコンロの炎は青く見えます。
青っぽく輝く星の表面温度は非常に高く、10,000Kぐらいになります。
ほぼ10,000℃ですが、鉄も溶けてしまう温度ですので、ガスコンロなんて。。。

実際、ガスコンロ等の青い炎は、1700℃ぐらいしかありません。
星でいうと褐色矮星レベルです。
ではなぜ青いのでしょうか?

これは「炎色反応」という化学発光になります。
要するに「花火」です。

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赤や緑、黄色など花火は様々な色を見ることができます。

これ、全部「温度」が違うわけではなく、「その色を出す物質(原子)を熱している」のです。
具体例を挙げると
 ・ナトリウム - 黄色
 ・カリウム - 淡紫色
 ・カルシウム - 橙赤色
 ・銅 - 青緑色
 ・鉛 - 淡青色
 ・リン - 淡青色
などです。

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炎色反応でなぜ原子固有の光が出るのでしょうか?

原子に熱エネルギーを加えると原子にある電子が「励起」し、外側の電子軌道に遷移します。(要するにエネルギーを吸収する)
この状態を「励起状態」と言います。

励起状態にある原子は不安定ですので(エネルギーを与えているから状態を維持できている)、エネルギーを光として放出し元の状態(=基底状態)に戻ろうとします。

この時に放出される光が元素によって決まっており、この光を「輝線スペクトル」と呼びます。

比較的低温で励起状態となり、放つ光の波長が可視光領域になる元素が基底状態に戻る時に見られる現象が炎色反応なのです。

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ここでガスコンロに戻りますが、1700℃そこそこしかないのに炎が青く見えるのは、含まれる物質が炎色反応によって放つ光の色なのです。

流れ星が光る

最後に流れ星についてです。
比較的明るい流れ星を写真に撮ると、光始めや光終わりで色がついて写ることがあります。

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これは基本的に炎色反応と同じ理由によります。

高速で大気に突入する流星物質は、その速度と大気との衝突により、大気が急激に圧縮され高温となります。
(空力加熱とか断熱圧縮と言います。)
この時、非常に高温となり周囲の大気と流星物質そのものが熱せられガス化し、原子が励起されます。
励起状態にある原子は基底状態に戻る際に輝線(光)を出しますので、輝いて見えるのです。
(大気との摩擦によって燃えているわけではないので注意!!)

上層大気にある酸素や窒素、マグネシウムといった元素が放つ光(輝線)が異なるため、色が写るのです。

原理としてはオーロラも同じで、エネルギーが高速で突入する流星か、太陽からの荷電粒子によるものかの違いでしかありません。

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