見出し画像

頑張るってどういう意味ですか

小学校5~6年生の時の担任の先生は、よく生徒に居残りをさせる人でした。宿題を忘れてきた子たちを帰らせない、みたいなことだったと思います。「ああまたか、いやだなあ」と毎回思っていた記憶しかなく、居残りをさせられた細かな理由は覚えていません。

宿題を終わらせるまで帰ってはダメ、ということなら分かります。でもその先生は生徒を一人ずつ立たせて「どうして宿題を忘れたの?」と順番に聞いてきます。私たちが答えられないのを承知の上で。

大人になった今なら、宿題をやらなかった理由を分析して、こう言えます。
「やりたくなかったからです」
「なんでこんなことしなきゃいけないんだ、と思ったからです」
「家に帰ったら学校のことはキレイさっぱり忘れるからです」

でも子供の私たちは「ほら、言いなさい。どうして宿題を忘れたの?」と迫られても、口をぐっと結んで下を向くしかありませんでした。なんて答えればいいか分からなかったし、答えたらもっとネチネチ言われることも知っていました。私は居残り組の常連でした。

ある時、めずらしく居残り組に入ってしまった子が泣き出して言いました。
「ごめんなさい、もうしません。次からは頑張ります」
先生はその子を許して、帰らせました。

「ああこれで私たちも帰れる」と思ったのも束の間、先生は別の子に聞いてきました。
「頑張るってどういう意味ですか」

これもまた本当に答えを求められているわけじゃないことは、みんな分かっていました。だからまたぐっと口を結んで下を向き、反省しているポーズをとるしかありませんでした。

その子が何も答えないので、先生は「頑張るっていうのは~ということですよ。分かりましたね!」と言い、その子を帰らせました。

「ああこれで帰れる」と思ったのに、先生は次の子に同じことを聞いてきました。
「頑張るってどういう意味ですか」

その子は先生の言葉をオウム返しにしてはまずいと判断して、別の答えを絞り出しました。すると先生は言いました。
「今、先生が答えを言ったばかりでしょう! 聞いてなかったんですか!」

私は隣に座っていた男の子と思わず顔を見合わせました。「同じこと言ったって怒られるに決まってるじゃん」と、彼がヒソっと言い、私は小さくうなずきました。

これが私の小学校生活の思い出の一つです。先生が言っていた「頑張る」の定義は全く思い出せないけど、「頑張るってどういう意味ですか」という問いだけは、大人になっても頭から離れませんでした。いろいろ考えた結果、今ならこう答えます。

頑張るっていうのは、本当はやりたくないことをガマンしてやることです。

だから私は、なるべく頑張らないようにしています。

あの時の居残り組の私たち、よく頑張ったね。

読んでくれてありがとう😊

いわさん、写真使わせていただきました。ありがとうございます😊

いただいたサポートは『インタビュー・ウィズ・ED』シーズン2&3の翻訳費に使わせていただきます!