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【ドイツあれこれ】大人になったら絶対買うぞ

[初出:2009年2月]

鉄道模型会社メルクリンの最新カタログを入手した。表紙に「150」と大きく印刷された創業150周年記念版である。皮肉にも、その老舗企業の破産手続き申請が近頃発表された。

ずらりと並ぶ精巧なモデルは、今もドイツ製だというから驚く。そして目玉が飛び出るほど高い。カタログ巻頭の船の模型は、なんと2千ユーロ近くする。子供は遊びたくても触らせてもらえない、パパの高価な玩具なのである。だから、大人になると、抑え付けられていた夢を実現すべく、大枚をはたいてあこがれの模型を買う。その連鎖が同社を支えてきた。

我が子も父親の趣味を歯ぎしりしながら眺めている。しかし、晩婚で設けたこの子が購買層になるには、あと30年はかかりそうである。平均出産年齢が上がり、連鎖の周期が間延びしたことがメルクリンの敗因ではなかろうか。

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