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【ドイツで子育て】騙されるうちが花

[初出:2009年12月]

日曜日の朝だというのに、夫は「今日、お父さんは仕事に行くぞ」と宣言した。実はこれ、子供に対するアリバイ工作。聖ニコラウスの日であるこの日、聖人に扮することになっているからだ。

凝り性の夫は、大金をはたいて衣装一式をそろえた。値段が張るだけあって、ビロードのマントと真鍮製の司教杖はずっしりと重く、威厳がある。さらに、念には念を入れ、友人に頼んでお供のクネヒト・ループレヒトを演じてもらう。

親戚の子供たちが集まっているところに、遠くから響く鐘の音とともに聖人が登場。その後ろには、悪い子のお仕置き役が鞭を手にして控えている。子供たちは目を丸くする。さすがに、小学生のお姉ちゃんは正体を見抜いて薄笑いしているが、我が子はずっと神妙な顔つきをしたまま。あと何年、親に騙されてくれるのだろうか。

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