ジャック・ロンドン「赤死病」#11

 フーフーはうつぶせに寝転び、つま先で砂を掘ってつまらなそうにしていたが、突然声をあげたかと思うと、まず自分のつま先の爪を、それから掘ったばかりの小さな穴を調べだした。二人の少年もフーフーに加わって、みなで穴をざっざっと手で掘り進めると、やがて三つの骨が土の中から出てきた。二つは大人の骨、もう一つは成長途中の子供のようだった。老人も腹ばいになって、掘り出された骨をじっと覗き込んだ。
「疫病の犠牲者だ」と彼は断言した。「疫病が蔓延すると、人はこんなふうに至るところで死んでいった。これは家族のようだな。感染を避けて逃げていったが、ここクリフハウス・ビーチで息絶えたんだ。この家族は――おい、エドウィン何してる?」
 老人はいきなり面食らった顔になり、エドウィンに問いかけた。狩猟ナイフの刃の背の部分を使って、頭蓋骨の口から歯を取り出そうとしていたのだ。
「紐を通して飾りにしようと思って」と、エドウィンは答えた。
 少年三人はみな必死になっていた。叩く音、打ち付ける音が大きく響き、老人のつぶやきはかき消されている。
「お前ら三人は真の野蛮人だ。もう人の歯を身に付けはじめるのか。また時が経てば鼻や耳に穴を開けて骨やら貝やらの装飾品を付けるだろうな、間違いない。人間という種というのは太古の闇へと逆戻りしていく運命なんだ、そしてやがてまた一気の変化があり、文明へと発展する。そして人口が増え、住む場所が足りなくなれば、また殺し合いへと向かっていく。だから、わしにはわかるが、お前たちはいずれ人間の髪を一房手首に巻くはずだ。一番おとなしい性格のエドウィンでさえ、今すでに小汚い豚の尻尾を耳に挟んでるんだからな。エドウィン、やれ、もう尻尾は捨てなさい」
「また老いぼれがぐちぐち言ってる」ヘアリップは言った。少年らは頭蓋骨の歯をすべて抜き終え、均等に配分するための話し合いの最中だった。

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