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テストマーケティングの場としてのスポーツ施設の魅力
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テレビやDAZNのようなサブスクリプションサービスの発展に伴い、スポーツ観戦の手段が多様化した現在、アリーナに観客を動員するためにはよりプレミアムな体験を提供する必要が出てきている。一方で、施設内によりよい設備を導入するためにはそれなりのイニシャルコストが必要になることももあり、投資回収の見込みが立たない以上なかなか導入が進まないのが現実だ。
その中で、最近の北米スポーツ施設では最新テクノロジーを導入し観戦体験の向上を図ることがひとつのトレンドになっている。そして導入の上での提供価値のひとつとして、スタジアムアセットである”観客”を提供することで企業と施設の双方がWin-Winになる関係を構築している。今回は2021年末のNFLマイアミ・ドルフィンズと北米を代表する通信会社のVerizon社とのパートナーシップを例に、テストマーケティングの場としてのスポーツ施設の価値を分析する。
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パートナーシップ型の事例についてはこちらがご参考になります
■Verizon社とのスポーツとの関係
Verizon社は米最大手の通信会社のひとつとして知られており、日本でいうところのNTTやソフトバンクのような会社とほとんど変わらないと言っていい。同社はスポーツに積極投資を行っており、NBAワシントン・ウィザーズなどの本拠地(現Capital One Arena)命名権を保有(2006~2018)するといった活動を行っていた。現在でも多数のスポーツチームと関係を築いている。
こうした背景には、通信というプロダクトに商品差別化要因があまりないことがあげられる。商品選択の意思決定において企業認知度や企業イメージの与える影響が大きく、価格競争に持ち込みたくない企業が商品に付加価値をつける手段としてスポーツの力を使って企業認知度やイメージを底上げすることを意図している。(金融業界を例にこちらの中で詳しく解説)
![画像2](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/70396918/picture_pc_f582145616ca5caa9fe143283d14b7e7.png?width=1200)
■NFLドルフィンズに無人決済ショップを導入したVerizon社
Verizon社は2021年12月にNFLのマイアミ・ドルフィンズと連携し、本拠地内に無人決済ショップの導入を行った。このシステムにはVerizon社の5G技術が活用されており、利用者は入り口でクレジットカードを登録し商品を棚からとった後、そのまま外に出るだけで決済が完了するというシステムになっている。(下図:施設外観)
![画像3](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/70397826/picture_pc_63be195a2a8098ca4c0e5f42881a2edd.jpg)
実はNFLチームに対しVerizon社がテクノロジー提供をする事例はこれが初めてではない。同社はリーグの公式5Gパートナーとして契約を結んでおり、ドルフィンズを含む複数のNFLチーム本拠地で5G通信の利用が可能になる設備を導入している。前述の通り、5Gという未知のプロダクトに対する消費者との親和性向上とその中での同社の優位性の確立、つまり企業認知度・イメージの向上を狙ったパートナーシップであると考えられる。NFL側としても、5G設備の提供が観戦体験の向上に繋がるため両者がWin-Winの関係を築くことができている。
■Verizon社は新技術のテストマーケティングも狙い無人決済ショップを開設
今回Verizon社が導入した無人決済ショップには、従来企業認知度やイメージの向上以外に商品・サービスの実証実験という意図を見ることができる。同社は2021年7月に決済サービス会社のMastercard社と非接触決済サービス開発のパートナーシップを発表している。このパートナーシップでは2023年に「AmazonGoのようなタッチレス決済サービスの提供」を目標に掲げており、ドルフィンズ本拠地への無人決済ショップの開設はそれを見越したテストマーケティング・実証実験だと解釈することが可能だ。
■テストマーケティングの場としてのスポーツ施設の魅力
そういった観点で見たときに、スポーツ施設はテストマーケティングや実証実験の場としての条件が優れていていることがわかる。試合時には一定程度の人数の利用が見込め、かつ来客人数が事前に予測可能。加えて、チケット情報やファンクラブ等会員情報と紐づけができれば、顧客属性の把握も容易になる。(※複数回来場・利用する観客も一定数存在する)
また、施設内での収益化が可能である点も含めて従来のテストマーケティングにかかる費用を下げる可能性を秘めている。このように、コスト、パフォーマンスの両面でスポーツ施設を活用したテストマーケティングは有効であり、活用の場は今後増えていくのではないだろうか(副次的効果として企業認知度・イメージの向上も)。
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著者:升本 大輝 / Taiki Masumoto
経営/戦略コンサルティングファームTrans Insightのリサーチアシスタント。
1998年東京都生まれ。大学在学中から日本スポーツ界の発展を志し、UCI(カリフォルニア大学アーバイン校)Athletics やUCLA Athleticsでのインターン活動を経てTrans Insightに加入。
Trans Insightについて:
ニューヨークに拠点を置く、スポーツに特化した経営/戦略コンサルティングファーム。
米国での幅広いネットワークを活かし、各収益領域(チケット販売、スポンサーシップ、放映権販売、 マーチャンダイズ、CRM、ニューメディア・インターネット等)におけるマーケティングインサイトやコンサルティングサービスを提供。
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