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クリント・イーストウッドの新作を勝手に想像した。

ちょっと前に読んだ『戦争がつくった現代の食卓』が衝撃的だったので、実録ものとして映画化したら面白いんじゃないかと読んだ直後に思っていた。

最初は伊藤計劃的な科学資料を用いたSF的発想のネタになりはしないかとの思いで読んだが、
実際にあったことそのまま描いた方が面白い気がする。

とてもとてもざっくり捉えると本の内容は第一次大戦から第二次大戦後にかけてのアメリカ陸軍兵站開発部が現在に至るまでどのような発展を遂げ、家庭の食卓にまでどんな影響を与えてきたかといった内容を経時的に追うルポだ。

映画化して面白いと思った点は以下の通り。

・戦時中の食品保存の杜撰さ

・戦中の傷病者を越す食中毒患者数

・急ピッチで兵士の食中毒患者を減らすために凝らされた食品の保存方法の開発や保存期間が長い食品の開発またはその試行錯誤

・現在でも利用されている技術や食品の数々。カビにくい食パン、サランラップ、粉チーズ、板チョコ、冷凍ピザ、カロリーメイト的なレーションシリーズなどなど

・食品開発部門が特許を取らず民間企業と協力して食品を作り上げる効率的なシステム

・米軍食品開発部門と民間企業、FDAの癒着問題

・現代の食卓に溢れる戦時下に開発された極限状態に対応したカロリーを多く摂取できる食品が果たして現代の生活にマッチしていて良いのかという問題提起

監督は近頃、実録物ばかり撮っているクリント・イーストウッド。

主人公は当時日陰の部署でしかなかった陸軍兵站開発部にいる男。
第一次大戦中、上司からの突然の無茶振りのような命令で過酷な状況に置かれた兵士たちの意見を聞き保存期間の長い食品を開発することになる。日陰の部署なので当然人がいない、全て一人と無頓着な事務員の女性と取り組むことになる。
 様々なテストを繰り返し、食品を開発するも戦争が終わるまでに食中毒患者は減らず、兵士たちの要望を全て叶えることなく戦争が終わった。

 戦後ようやく要望が通り、部署の人は増え、開発した製品も増え、民間企業と協力するシステムが出来上がった。上司からも功績が認められ昇進し、格上げされた部門は他部署との連携をさらに図ることになる。
 
 第二次大戦が始まる。今度は長期間の遠征と熱帯地域での従軍が余儀なくされた。長期間の間に肉は腐り、熱でチョコは溶け、パンはカビて食中毒患者数は傷病者数を超えた。結局のところ兵士たちの要望はさらに多くなり、叶えるためには相当の時間とテストをしなければならなかった。納得のいかないまま戦争は終わったが、民間企業での新たな商品は飛躍的に増えた。

 現代のスーパーには保存食が増えた。戦時下でも無いのに。果たしてこの付け焼き刃で開発した食品が現代においてこんなに消費されていて良いのだろうか。白髪てヨボヨボの主人公は今も何か取りこぼした望みがあるような気がしてならない。

といった言った筋書き。
開発に奮闘するテストの数々や現代の食卓にも残る保存食品がどうやって開発されたか知るのは有意義だし、コメディに近いテスト(極限状態でのみ食べる必要があるものは不味く作らなければならない等等)は映画的だ。
サブストーリーで天下りやFDAや民間企業との癒着でFDAの食品テストがゆるくなって民間企業からワイロを受け取っている疑いがかけられ部下が裁判にかけられることも描いても面白いかもしれない。

地味な話が好きになってきたイーストウッドには向いてる気がするんだけどなあ。

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