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小説「対抗運動」第8章1 グリーンコンシューマー

舞ちゃん 「おいさん、千葉の鴨川の棚田の稲刈り、もう済んだん?」

おいさん 「おー、あれは先月じゃったよ。幸い冷害の影響は受けんかった。けど山形の新庄はやられたみたいや。在来種のさわのはなの被害は少なかったようじゃが、阿部さん(新庄のエジソン)とこは地理的な条件も悪かったようで、無農薬栽培のあきたこまち、は大打撃を受けたようじゃ。」

舞ちゃん 「水田トラストは大変やね。去年は大豆トラストが全く収穫なしやったね。お百姓は辛いもんやね。」

おいさん 「舞ちゃん、新庄の百姓たちは元気じゃよ。去年の大豆トラストの時も胸張ってトラスト会員との寄り議に臨んだけど、今年もどんどん実情を会員に知ってもろうて、絆をより深めようとしとるよ。水田トラスト運動の理念が試されとるんじゃからね。」

舞ちゃん 「ふーん。理念か。おいさんキューバでね、面白い人に会うたんよ。千葉の三里塚で対抗運動やっとる人。」

おいさん 「おー、どんな対抗運動?」

舞ちゃん 「グリーンコンシューマーなんや。身のまわりの出来ることから、エネルギーをクリーン・循環型に変えよんやと。まずスーパーソーラーシステム。自分とこで使うのみならず、余ったのを売っとるんやと。次ぎにてんぷら油の廃油からベジタブルディーゼルフューエルを作って車を走らせとる。硫黄酸化物はゼロ、黒煙は軽油の1/3以下。
それから家庭菜園。生ゴミを堆肥として循環させ、無農薬・有機栽培で30種くらいの野菜を育てとるんやと。〈消費地から遠くで作られた作物は、輸送や鮮度を保つために大量のエネルギーを消費する。家庭菜園は、工業的農業に較べてエネルギー消費が1/10以下です。〉
さらに石鹸を使わない洗濯。それから、みそ、酒、ぬかみそ、うめぼしや漬物など自家製でできるものはなるべく作っとるんや。」

おいさん 「ほー。見事やね。どんな人や?」

舞ちゃん 「らっきょう工場の社長さん。ネゲントロピー水の研究家でもあるんやと。」

おいさん 「聞いたことないね。なんや、それ?」

舞ちゃん 「私もようわからん(笑)生物に有害な体内の活性酸素を取り除くんやと。この水に鉱石5種類セラミック3種類を加えて家庭菜園で実験しとるそうなんやけど、植物の成長を早めたり、動物の成長を早めたり、元気にする性質があるんやて。」

おいさん 「三里塚にもエジソンがおるんじゃね(笑)」

舞ちゃん 「おいさん、ほいでね、うち千葉に行ってみたいんよ。ついでに鴨川の棚田の稲刈りもやらしてもらいたかったんや。」

おいさん 「舞ちゃん、夏にキューバへ行ったばっかりじゃろ。受験勉強するんやなかったんか(笑)」

舞ちゃん 「ほいでも、三里塚の、このグリーンコンシューマーとこへは行ってみたいんよ。おいさん、受験勉強より大事なことはあるんや、わかるやろ?」

続く
執筆:飛彈ゴロウ、2003年9月29日

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