小説「対抗運動」第6章4 福岡のカネゲンさん
おいさん「舞ちゃん、面白い人と知り合うたよ。なんとか、もみがらミネラル炭、売れんかと思うて、有機肥料のメーカーをまわってみたんじゃ。臭いを消す働きがあるけん、肥料と混ぜたら、臭いも消えるし、それを撒かれた土壌は微生物の宝庫になるし、雨水をろ過して地下水にもええ、なんせ一石3鳥じゃからね。そしたら、福岡でナタネ粕作りよる工場の社長さんと知り合うたんじゃ。消臭用に、ええミネラルを捜しよったんじゃと興味を持ってくれた。ほいでね、菜種のことをいろいろ教えてもろうたんじゃ。」
舞ちゃん「菜種いうたらシュマイザーさんを思い出すね。ひょっとして関係あるん?」
おいさん「舞ちゃん、そうなんじゃ。この社長さんは、ええ菜種を求めてカナダまで行って、ずっとカナダ産の菜種を原料にしとったんよ。戦前は、菜種油は九州の特産物やったんじゃそうな。けど、戦後は国内産じゃ間に合わんようになってね、いろいろ捜したんじゃと。そしてカナダのがええ、と。けどね、5年前に、遺伝子組換え菜種の汚染が広まりだしたことを知って取引をやめてしもうたんじゃ。1000以上の取引先からアンケートとって決定したそうじゃ。ほいでね、今はオーストラリアの菜種を輸入しとる。NON GMOを真正面から推進しとるんはオーストラリアとフランスだけやからね。カネゲンさんはNON GMO菜種油専門工場としては、日本一の生産を誇っとるんじゃ。見識のあるところは、さっさと見限っとったわけやね。カナダは取り返しがつかんことをやってしもうたわけや。裁判の結果がおかしいんは、このことを見ても明らかやね。モンサントが被害者である筈がないんや。シュマイザーさんのような農家こそが被害者なんや。カネゲンさんのような取引先がいっぱいあったやろうからね。もう二度と取引はできんやろうからね。」
舞ちゃん「ボイコット運動の前に、企業の社長さんらが取引をやめとるんやね。おいさん、懇話会の長友氏はね、茨城ですき込まれてしもうた後、岐阜と滋賀で、あわててGMO大豆撒いたんよ。どしてやろか?」
おいさん「岐阜の方は、県の指導ですぐに用地に水を入れて、種を腐らせる措置をとったそうやね。滋賀は、中主町(ちゅうずまち)いうて、守山市と近江八幡市の間にあるとこやったそうじゃが、18日に長友氏らは自ら鋤き込まざるをえなくなったようじゃ。来年1月に今の国会で承認された法律が施工されて、なにかとやりにくうなりそうじゃから頑張っとるんかもしれんね。」
舞ちゃん「どんな法律?」
おいさん「生物多様性条約カルタヘナ議定書の国内法じゃ。カルタヘナ議定書関連法案と呼ばれとるの。この関連法案が施行されると、栽培が承認されたものでも、たとえ一般用でのうて試作であっても、もう一度書類を整えて関係大臣に申請して承認を受けないかんのじゃ。モンサントや懇話会は、いろんなデータを集めるために、いろんな場所で、いろんな時期に栽培してね、アメリカ産の大豆が、日本の気候風土の中でどんな育ち方をするんか確かめたいじゃろうからね。いつ播いたらええんか、実のり具合はどうなんかとね。また除草剤ラウンドアップ(グリホサート)を撒いたあとで二次雑草(ラウンドアップ耐性のスーパー雑草)が生えて来るかどうか知りたいじゃろうね。どう売っていくかに大きく影響するけんね。こうしたことを、勝手に自由に確かめるられるのは今年が最後のチャンスやと粘っとるんやろ。」
舞ちゃん「ええ法律もあるんやね。」
おいさん「けど農水省はカルタへナ議定書の影響範囲を「野生種」の枠に押し込んで、農業分野での日本人が古くから大事に育て守ってきた在来種への汚染については、議定書の範囲外や、農業のことは農水省がやると言うて、環境省からの規制をブロックしようとしとるよ。」
続く
執筆:飛彈ゴロウ、2003年8月30日
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