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新生⑤

こうしてわたしたちの関係が始まったのだが、エイプリルフールまでに今までのEとの関係をはっきりさせるという宿題をも同時に残していた。Eはそれまでのように返事を返していたのだが、わたしの心がこもってない態度が伝わっていたせいなのか、どこかよそよそしかった。わたしもうんざりだと思っていたし、どうせほかの相手がいるのはわかっていたので、このまま自然消滅させてもいいかなとは思っていたが、その反面アマンダとの関係を始めるにあたって、いろいろ筋を通さないのもなんとなく嫌だったので清算する必要性を感じていた。

そもそも、何があったかもはっきりお互い話していない状態だ。「友達」が嫉妬して警察を呼んだとしか聞いていないし、それ以上のことも聞きたいわけではなかった。わたしは重い気持ちで通話を始めた。つながって早々

「なんかこうやって話するの久しぶりだね」

とEが言った。そしてわたしが次に何を話し出すかをまるで分ってるように

「アマンダとはうまくいってる?」

と続けた。まるでEはわたしに喧嘩を売ってるかのようだ。その言葉を聞いていると12月の事が脳裏をよぎると同時に、Eを心から愛していたことを思い出して胸が痛くなった。

「そのことだけど.. アマンダが遠距離でいいから付き合いたいって」

「そう、じゃあ全部うまくいっているのね。ちょっと安心したよ」

何が安心なんだ?大体あの旅の最中で彼女がわたしのことを考えていた事があったのか?そのとき自分はほかの男と遊んでたんだろうに。腹が立ってきた。

「うん..まあそういうことで、一応連絡しとかなきゃなとおもって」

「ありがとう、わたしのことをいつも心配してくれてるのに、いろいろ振り回しちゃって.. わたしなんかよりアマンダのほうが絶対あなたのことを幸せにするとおもうよ」

「ありがとう..そういうことだから.. また連絡するね」

「うん、ありがとう」

通話を終えてわたしはいろいろな感情に押しつぶされそうになっていた。本当はわたしが全部悪いのか? Eを傷つけたのはわたしなのか?全部台無しにしたのは実はわたしのほうで、彼女の気持ちを踏みにじっていたのか?もうすべてがよくわからなくなっていた。

アマンダにこのことを話すと、彼女は昔から人の気持ちを操って踏みにじる、とEを非難した。

「大体あの人は、自分の今の関係に迷っててあなたが本当に来るかを試してたんだし、来たら来たで、ほかの相手を捨てようとしてたのよ」

「.. そうなんだ」

大体想像はしていたが、こうはっきり伝えられると改めて衝撃を受けた。

「もうEのことは忘れましょ。夏になったらわたしロサンゼルスにいくし」

浮かび上がっていた感情のすべてがまた元に沈みだした。そう、これからは違う人生なんだ。もう振り回されることなんてないんだ。そう自分を励ましながら、通話を終えた。

つづく







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