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高卒就職問題 求人相場調査レポート 茨城県2021年12月時点
高卒就職問題研究のtransactorlabです。
先回、次は高卒就職問題のおさらいと、と予告しましたが、予定を変更し、待遇相場情報の解説を挟ませてください。
6月も近くなり、企業の方々は待遇条件の検討をされているころかと思います。先月、令和昨年12月、私は全国の公開高卒求人票の悉皆調査を行いました。その結果レポートをホームページで提供しておりますが、ひとつ平均的なところをピックアップして紹介いたします。参考にしていただければ幸いです。
「令和3年度賃金構造基本統計調査 結果の概要」
令和4年3月25日、厚生労働省がこの調査結果を公表しました。(詳しくは引用元のPDFをご覧ください)
令和2年度末(令和3年3月)に卒業し、全国の四月から働き始めた人たちの賃金の平均です。高卒は179.7千円、ほぼ18万円です。令和元年が16.7万円でしたので、この2年で1.3万円ほど上がっています。ただこれはあくまで平均。最低賃金1000円を超えている東京・神奈川から792円(だった)秋田や沖縄までを均した数字です。厚労省の発表だけでは各地地元の実相は見えないでしょう。
令和3年賃金構造基本統計調査 結果の概況
新規学卒者の学歴別にみた賃金
新規学卒者の賃金を学歴別にみると、男女計で高校 179.7 千円、専門学校 206.9 千円、高専・短大 199.8 千円、大学 225.4 千円、大学院 253.5 千円となっている
茨城県2021年12月時点の公開高卒求人の待遇相場
![](https://assets.st-note.com/img/1652983802747-RC6lVX7gAQ.png?width=800)
これは茨城県2021年12月時点の公開高卒求人全職種の分析結果です。茨城の最低賃金は851円と、全国平均902円より少し低いのですが、それでも中間的な位置にある地域だと見ることができます。(そもそも902円という値は真に日本全国の平均を表しているようには思えません)
先頃、茨城労働局が3月卒業生の内定状況を発表した資料を引用します。
茨城労働局2022年4月26日発表 高卒就職内定状況です。
令和 4 年 3 月新規高等学校卒業者の求人・求職・内定状況
(令和 4 年 3 月末現在)
~就職内定率は 99.7%と8年連続で 99%台の高水準となる~
茨城労働局(局長 下角 圭司)は、令和 4 年 3 月末現在における令和 4 年 3 月新規高等学校卒業者の求人・求職・内定状況を取りまとめました。その概要は以下のとおりです。
1 就職内定率
就職内定率は 99.7%(男子 99.8%、女子 99.5%)となり、前年同月(99.6%:男子99.8%、女子 99.4%)を 0.1 ポイント上回りました。
2 就職内定者数
就職内定者数は 3,919 人(男子 2,369 人、女子 1,550 人)となり、前年同月(4,198人:男子 2,545 人、女子 1,653 人)に比べ 6.6%減少しました。
3 求人数
求人数は 9,963 人となり、前年同月(9,802 人)に比べ 1.6%増加しました。
4 求職者数
求職者数は 3,932 人(男子 2,374 人、女子 1,558 人)となり、前年同月(4,214 人:男子 2,551 人、女子 1,663 人)に比べ 6.7%減少しました。
5 求人倍率
求人倍率は 2.53 倍と前年同月(2.33 倍)を 0.2 ポイント上回りました。
*本調査は学校・公共職業安定所の紹介を希望する生徒の状況を取りまとめたものです。
12月時点調査との比較考察から
「内定状況調査」ですから就職希望者の何パーセントが内定したという内容に終始するのは仕方ないとしても、「では、内定した求人の待遇はどういったものだったか」を示す情報が全くないのはいかがなものでしょうか。
今の時代、やろうと思えば簡単にできるはずですが、厚労省はやる気になってくれません。相場が分からなくていろいろ困ったことが起きているのにですよ。
さて、それはさておき、
12月に収集した時点の求人総数は8024人でしたから、その後1939人もの求人が追加で出ていたことがわかります。驚きです。県内就職希望高校生3919人の9割程度は12月時点で既に内定していたと思われるからです。1月以降に求人を出された企業の方々には酷な話ですが、応募が来る望みはほぼなかったのです。
これも高卒就職市場における情報不足の弊害のひとつです。
次に、12月時点で充足した求人票の待遇がどのようなものだったかをお知らせします。冒頭の図表の左が8月前半までに公開された全求人のうち12月時点で公開が取り下げられたもの、つまり充足したと思われる求人票群のデータです。茨城は2683件中314件(11.7%)が取り下げられていました。
![](https://assets.st-note.com/img/1652985633297-a0bPQvfRQp.png)
散布図の縦軸は個々の求人票記載の年間休日数、横軸が月給です。充足したと思われる求人票の、月給平均は17.2万円、年間休日数は114.5日でした。
一方、12月時点でも公開継続されていた求人票群は17.5万円、110.1日でした。月給平均ではむしろ非充足群の方が高いですが、年間休日数では4.4日充足群が上回っています。
また、この資料には出していませんが、賞与(ボーナス)の面ではもっとはっきりとした差がありました。
年間休日数とボーナスに明らかな差
充足群314件をざっと見たところ、月給18万円前後で2年目以降、年間4ヶ月、多いところでは年5ヶ月分のボーナスが出ていました。年収は280万~320万円の範囲に収まりそうです。
高卒就職1年経過、19歳で年収320万円。この数字、どうでしょうか?
高い?安い?
これが2022年12月、最低賃金851円の茨城県で充足したと思われる高卒求人票の待遇相場です。
相場情報不足が多くの求人事業者に徒労を強いている
冒頭の散布図3つのうち左側をもう一度ご覧下さい。全体を見ると月給・年間休日数ともにばらつきが非常に大きいことがわかります。美容師・看護師・介護士など、見習いとして勤め先から就学補助を受けつつ働きながら通学するタイプの雇用も含んでいますが、それにしても差が大きい。相場を知らない事業主が多いのだと思います。
何度となく述べていますが、やはり高卒求人の待遇相場に関する情報が不足していると私は思います。冒頭の図表の真ん中は非充足群のデータです。これを見ると非常に低い待遇の求人票が非常に多いことかが分かります。当該の企業の方には酷な言い方ですが、「見向きもしてもらえない」求人票になってしまっています。十分な相場情報があればこうはならないはず。
情報不足は実情に合わない低待遇の求人の抑制とは逆に作用します。結果的に市場を不健全な状態にし、若年層の所得向上の足を引っ張っている。
この状況に対してハローワーク、厚労省職業安定局は大きな責任があります。求人情報を一手に握っているわけですから。高卒就職情報WEB提供サービスのシステムを早急に改良および公開し、有益な情報に誰もがアクセスできるようにしていただきたいものです。
ホームページでは全都道府県のレポートを提供しています。製造業・建設業・飲食業・医療福祉業等の業種ごとの分析もしておりますので、待遇を検討中の企業の方々、どうぞ参考にしてください。
生徒の就職支援に関わる先生がたもご活用くだされば幸いです。
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