見出し画像

【旅行記7】日本最後の未踏県・沖縄弾丸旅

【まえがき】
この記事は,私の筆が進まず,noteの下書きにずっと残されたままだった最古の記事です.旅行からすでに1年半も経過しているため,記憶が曖昧な点が多々あることをご容赦ください.

1. 旅立ちは突然に

画像1

10月某日,朝6時,私は関空にいた.


旅立ちは突然決定された.

事の発端は9月に決行された北海道レンタカー旅である.7日間で約2,200kmもの大移動を繰り広げたレンタカー旅の帰路で,関空行きのPeachは定刻を20分以上遅れて関空に到着した.三宮行きの最終のリムジンバスはすでに発車してしまった.実はこの時,三宮でリムジンバスの往復券をすでに購入していたので,リムジンバスのかえりの券はただの紙切れ同然となってしまったのである.結局この日は,関空第1ターミナル行きのシャトルバスに飛び乗り,終電の2分前に到着したバスから駅まで必死に走って,なんとか神戸に帰ることができた.

それでは,リムジンバスのかえり券はどうなったかというと,実はリムジンバスの往復券の有効期限が30日間もあり,まだ使う猶予を残していた.しかし,よほどの用事がない限り関空に行くことはもうない.

じゃあ,もう一度飛行機でどこか行けばいいのではないか?

奇しくもこの時,Peachでは10月分の航空券のセールが実施されていた.行き先はどこでも良かったのだが,せっかくなので日本で唯一足を踏み入れていない沖縄県へ向かおうと計画した.1泊2日,滞在時間約26時間でどこまで回れるか不安ではあったが,とりあえずやるだけやってみることにした.

那覇空港に到着するのは朝9時半の予定だ.そこからバスの1日乗車券を活用して沖縄県内の観光スポットを回れるだけ回り,モノレールの駅も近い浦添市内の快活にて宿泊し,翌朝はモノレールを使って那覇市内を観光することにした.レンタカーも考えたのだが,初めての土地で,車社会で渋滞も多い沖縄本島を運転する自信がなかったので,今回はバスを使うことにした.

画像2

朝6時なので人も全然いない.早々に保安検査を終えて待合スペースでゆっくり過ごした.

画像3

機内の準備に手間取り,予定の20分遅れで機内へ案内される.結局出発は25分遅れたが,那覇空港から乗るバスには50分の待ち時間があったので行程には問題なかった.

画像4

この日は天気が良く,幸いにも窓際の席に当たったので,神戸の街並みが一望できた.

画像5

神戸と淡路島を結ぶ明石海峡大橋の存在感は抜群だ.淡路島を背骨のように走る神戸淡路鳴門自動車道も素晴らしい.

画像6

少し先に行けば,讃岐平野と小豆島,奥には岡山平野が見える.左には瀬戸大橋が見える.

画像7

飛行機は四国上空を飛行していく.眼下に見えたのは四国の水瓶と呼ばれる早明浦ダム.

画像8

四国山地を飛び越えて,仁淀川流域に出た.このあたりまで来ると私の実家も近い.ちなみに実家は写真の右側の方面だが,この写真では写っていない.普段は陸から見ていた風景を空から見下ろすと,新鮮で,なおかつ懐かしく感じる.

画像9

いよいよ太平洋沿岸に出てくる.写真下の街は漁師町として知られる高知県須崎市.四国山地の向こうには四国最大の人口を抱える松山市を中心とする松山平野が見られる.

画像10

飛行機は高知県西部へ.右側には四万十川,左側には宇和海が見られる.

画像11

しばらく進むと九州が見えてきた.南北に細長い宮崎平野を眺める.

画像12

いよいよ鹿児島県が見えてきた.奥に見えるのは錦江湾.大隅半島を隔てて手前側にある街が鹿児島県志布志市.大阪行きのフェリーも発着している鹿児島の外港だ.

画像13

大隅半島を南下し,鹿児島県の全景があらわになった.錦江湾の真ん中には鹿児島のシンボル桜島.湾を挟んだ薩摩半島の左端に聳える開門岳.右奥には霧島の山並みが連なる.

画像14

飛行機は九州よりさらに南へ.写真中央の火山島は硫黄島.

画像15

手前には世界自然遺産として知られる屋久島,奥には口永良部島が見える.

画像16

飛行機は沖縄本島めがけて着陸態勢に入る.初めての沖縄に気持ちが高揚する.

画像17

結局20分遅れで那覇空港に着陸した.初めての沖縄は10月なのに蒸し暑い.気温は思っていたほど暑くはないが,とにかく湿度が高く感じた.


2. 沖縄戦激戦地へ

画像18

那覇空港でバスの1日乗車券を手に入れて,早速バス停へ向かう.まず私が向かうのはひめゆりの塔と平和記念公園.その二箇所へ向かうためには,まずは189系統で糸満バスターミナルへ行き,そこから乗り換える必要がある.

画像19

お目当てのバスが到着.最初に乗車するのは琉球バス.私の地元の高知や今住んでいる神戸ではバスは後ろ乗りだが,沖縄のバスは首都圏にも多い前乗りで,早速沖縄の洗礼を受けた.

画像20

189系統は那覇空港を出ると,糸満市に向かって南下していく.およそ20分ほどで糸満市場に到着した.

画像21

糸満市場は,建物の中にいくつか商店が店を連ねる小さな市場だった.

画像22

私はここで朝ごはんにする予定だったが,まん防の期間だったからか,空いている店が少なく,朝ごはんにはありつけなかった.中は開放的な空間で,カラフルな傘が飾られてあった.

画像23

バス停に戻って港の方を眺めると,少し奥まったところにあるにもかかわらず,海がとてもきれいだった.

画像24

糸満市場から82系統のバスで次に向かうのは「ひめゆりの塔」である.沖縄戦の激戦地となった本島南部に初めて足を踏み入れることになる.あたりには沖縄らしいサトウキビ畑が広がり,アップダウンの激しい台地をバスに乗って進んでいく.30分弱でひめゆりの塔に到着した.

画像25

ひめゆりの塔は,沖縄戦の戦況の悪化に伴って看護要員として動員されたひめゆり学徒隊を慰霊する施設である.写真下が実際に沖縄戦で使われた防空壕である.その中で傷病者の看病にあたってたことを想像すると本当に痛ましい.

ひめゆりの塔の周辺には他にも防空壕が存在する.こちらは伊原第一外科濠といい,ここも当時ひめゆり学徒隊の避難場所として使われていたのだそう.

中には平和を願ってか,折り鶴が供えられていた.

伊原からは再び82系統のバスに乗って,さらに東に進んでいく.

沖縄のバスは基本的に前乗り・前降りだ.写真のように後ろの出入り口を封鎖しているバスも多い.

バスに10分ほど揺られて次の目的地,平和記念公園に到着した.広大な公園の中央に慰霊碑が設けられた「平和の丘」.毎年6月23日には沖縄戦の戦没者の追悼式が行われており,テレビ等で見かけたことがある方も多いだろう.

平和記念公園の中には,沖縄戦戦没者の名が刻まれた石碑が置かれている.新たに判明した戦没者については,随時刻銘されているそうだ.沖縄の海に面した丘の上にあり,その荘厳な雰囲気に圧倒される.

公園には平和記念資料館が併設されている.時間の都合で訪れることはできなかったが,何重にも連なった赤瓦の屋根が美しい.

平和記念公園からさらに東へ歩いていく.この時間帯はバスがなく,暇つぶし程度に海岸まで歩いて向かうことにした.丘の上に立つ平和記念公園からは基本的に下り勾配で,どんどん坂を下りていった.

40分ほど歩いて海岸まで降りてきた.石灰岩質な地形が広がる沖縄の海岸は侵食を受けやすく,岩に穴が空いていたり,ごつごつと尖った形をしているのが特徴的だ.岩の上を歩こうにも,形が不規則で尖っているために,細心の注意を払わないといけない.

海岸から20分ほど上り坂を登って,再びバスが通る道まで出てきた.沖縄は10月でも蒸し暑く,この時私はお茶を飲み切ってしまい,とても喉が渇いていた.汗だくの状態で,バス停のすぐそばにある自販機で琉球コーラを買って飲み干した.

それでもまだ喉が渇いていた私は,追加で沖縄名物のさんぴん茶を購入.味はジャスミン茶なのだが,沖縄らしさを感じたくてついつい買ってしまった.

さんぴん茶を買ってもまだ満足できなかった私は,82系統のバスを使って具志頭(ぐしちゃん)のコンビニに立ち寄り,ブルーシールのアイスを購入した.

具志頭から那覇方面行きのバスに乗車する.学校がテスト期間だったのだろうか,バス停では学生が大行列をなしており,バスは満員で出発した.


3. バスを次々乗り継いで

私は那覇まで行かず,途中の東風平(こちんだ)でバスを降りた.ここからさらにバスを乗り継ぐのだが,バス停の近くに古びたシーサーの像があったので見にいくことにした.

そして沖縄の名物といえば給水塔であろう.河川が少なく,降った雨がそのまま流出してしまう沖縄では,地域ごとに大きな給水塔が置かれている.

東風平のバス停に戻ってきた.ここから沖縄バスの36系統に乗って与那覇まで向かった.

与那覇からは東陽バスの30系統に乗車する.沖縄本島の東側を海岸を眺めながら50分ほどかけて,沖縄市の中心部,コザまでやってきた.

コザからはさらにバスを乗り継ぐのだが,バス停の近くには鮮やかな壁画で有名な通りがある.

銀天街の中を覗いてみると,商店が所狭しと並んでいた.

壁画は通りに沿っていくつも描かれていた.米国統治下の当時は黒人街だったそうだが,その当時の繁栄と人々の情熱を感じさせるスポットだった.

コザからは琉球バスの62系統に乗り継いで,読谷村方面へ向かった.

途中の座喜味バス停で下車し,向かったのは座喜味城跡.丘の上に立つのは,ごつごつとした岩と,丸みを帯びた城壁が特徴的な琉球のグスクであった.

まるでゲームの世界に迷い込んだようだ.

城壁を上っていく.

ここから先は立ち入り禁止.「いっちぇ〜ならんど〜」と書かれた看板が目を引く.

座喜味城からの帰り道.沖縄には行き止まりに「石敢當」と書かれた石碑をよく目にする.これには魔除けの意味があるそうだが,こちらの行き止まりには立派なシーサーが一緒に設置されていた.

座喜味からはさらにバスを乗り継ぐ.高志保のバス停からバスで南下し,北谷町のアメリカンビレッジに到着した.

アメリカンビレッジは,異国情緒に溢れていた.平日にもかかわらず,周囲には多くの車が停まっており,活気を見せていた.

ここで沖縄名物のタコライスをいただいた.こちらのお店ではオムライス風の「オムタコ」が名物だったのでそれを注文.沖縄に来てからまともに食事にありつけなかった私は,ここでようやくしっかりと食事を取ることができた.

アメリカンビレッジをさらに歩いていく.左手のブルーシールのお店に立ち寄ることにした.

本日2度目のブルーシールのアイス.沖縄限定のフレーバーである紫芋を使ったウベと,ちんすこうのアイスを注文した.閉店間際だったのでお客さんはあまりいなかった.

アメリカンビレッジの夜の雰囲気は最高だったのだが,ここで突然のスコールに見舞われる.急いでバス停まで戻って.この日の宿へ向かうことにした.

本数の少ない96系統のバスを捕まえて,イオンモール沖縄ライカムまでやってきた.ついた頃には雨はすっかり止んでいた.大きな自動ドアをくぐった先には,開放的なショッピングモールがあった.

中には水槽が設置されている.水槽はエレベーターに面していて,エレベーターの中から水槽の中を眺めることができる.

イオンモールではその日の晩御飯を購入した.遅い時間帯だったので,惣菜が安くなっていて助かった.

イオンモールからさらにバスに乗り継ぐ.この日乗ったバスの中で一番古そうなバスだった.しばらく南下して,30分ほどしてバスを降りる.

この日のお宿,快活CLUBに到着した.ここでバス旅も終了.この快活CLUBは沖縄を走るモノレール「ゆいレール」の終点であるてだこ浦西駅に近く,翌日に予定していたゆいレールの乗り潰しには最適な宿であった.

一応補足しておくが,快活CLUBは私の中では完全に宿扱いである.

鍵付個室に入って,イオンモールで買ってきたオリオンビールを飲む.この日は暑い中バスを乗り継ぎ歩き回ったので相当疲れていた.疲れた体に流し込むビールは最高に美味しかった.


4. ゆいレール完乗計画

翌朝5時.快活CLUBから歩いて15分ほどでゆいレールの終着駅,てだこ浦西駅に到着した.この日は夕方から予定があり,お昼の飛行機で帰ることになっていたので,早朝から動き出す.

沖縄初上陸の私はもちろんゆいレールにも初乗車である.

途中の首里駅で下車した.首里駅はゆいレールのかつての終着駅だったが,2019年にてだこ浦西駅まで延伸されて途中駅となった.この駅は首里城への最寄駅となっているが,首里城までは少々歩く.

しばらく歩いて首里城の入口,守礼門に到着した.早朝ということもあり人の姿はあまりなかった.

奥の門はまだ閉まっていた.2019年の火災で一部が燃えてしまった首里城.また再建したら訪れてみたい.

首里城を離れてしばらく散歩していると,雰囲気の良い石畳の道を見つけた.首里城の南側は急な斜面になっており,とても眺めが良い.

石畳の路地を歩くのはとても気持ちがいい.歴史を感じる朝の散歩を楽しんだ.

石畳の道を降りたところのバス停から,那覇行きのバスに乗車する.

終点の那覇バスターミナルでバスを降りた.鉄道がゆいレールしかない那覇ではバスが主要な交通機関で,バスターミナルはかなり賑わっていた.バスターミナルの上の階には商業施設が入っている.

かつては沖縄県営鉄道の那覇駅があり,その当時の転車台の遺構が残されていた.

近くにはゆいレールの旭橋駅がある.少しだけ撮り鉄してみる.

赤いラインが特徴的なゆいレールの車両.沖縄の青空とよく調和している.

旭橋駅からゆいレールに乗って終点の1つ手前,赤嶺駅で下車した.こちらは日本最南端の駅として知られている.

ゆいレールの車両と一緒に撮影.これで日本の北端・東端・南端の鉄道駅を踏破した.

赤嶺からは,ゆいレール完乗のために一度首里駅まで戻り,そこから国際通りの最寄駅である牧志駅に折り返すことにした.途中からスコールに見舞われたが,牧志駅に着く頃にはすでに止んでいた.

沖縄らしい「軍用地買います」の文字が目を引く国際通りの不動産屋.

沖縄随一の観光地・国際通りに出た.平日の朝9時半ということもあり観光客の姿はほとんどない.

国際通りから1本筋を入ると,古びたアーケード商店街がある.

アーケードの屋根をみると,補修した跡がいくつもあり,長年使われてきたことが窺える.沖縄の厳しい風雨に耐えた古びたアーケード商店街は美しい.

10時を過ぎると営業を始める店も多くなるが,それでもまだシャッターが多い.

アーケードからさらに奥に入った路地.古びた雰囲気が素晴らしい.

アーケード商店街と猫.

国際通りの近くとは思えない寂れた雰囲気.休日は観光客でいっぱいなのだろうか.

建物の隙間にできたまるで闇市のような雰囲気の商店街.もはや商店街と言えるのかわからない.

そんな奥まった路地にお目当ての沖縄そば屋があった.国際通り周辺でこの店が一番営業時間が早く,飛行機に乗る前に軽く朝ごはんにすることにした.

1杯430円のソーキそば.ソーキとは豚のアバラ肉を煮込んだもので,骨ごと食べれるほど柔らかくなっている.豚肉のうまみと優しいお出汁がよく合う.

牧志駅に戻っていよいよゆいレールの終点・那覇空港駅に到着した.ここは日本最西端の鉄道駅で,ここの駅を訪問したことによって,日本の鉄道駅の東西南北端を制覇したことになる.

那覇空港には11時前に到着.12時前のPeachの飛行機で早々と関空に戻った.

こうして1泊2日・滞在時間26時間の弾丸日程で,バスとゆいレールを駆使して沖縄を巡る旅は幕を下ろした.本来の目的だった神戸行きリムジンバスのかえり券を使って,神戸に帰った.

そもそも,北海道旅行の帰りに使えなかったバスの乗車券を,沖縄旅行の帰りに使おうという発想が相当バカらしいのだが,飛行機は往復で7千円くらいで済んだ上に,これで日本の全都道府県踏破を達成したので,わざわざ沖縄に行ってよかった.

まあもし今度行くなら誰かと一緒に行きたいけどねぇ…


【あとがき】
1年半も寝かせた割には意外とスラスラと記憶を思い出しながら旅行記を書き上げることができました.やっぱり写真見ると当時の記憶を思い出しますね.
実はこの旅行の翌年(2022年)は沖縄に2度も訪問しました.しかも複数人で.もちろん複数人でも沖縄旅も楽しかったですが,私にとってはこの時の一人旅が印象深かったので,今回再度記事にしようと決意した次第です.
最後までお読みいただきありがとうございました.


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?