『Literature in Heisei Japan, 1989-2019 平成文学における様々な声』
ユスティナ・ヴェロニカ・カシャ(Justyna Weronika Kasza)さんは、福岡県にある西南学院大学外国語学部外国語学科の准教授。母国語であるポーランド語はもちろん、英語、日本語、フランス語も使いこなし、普段は翻訳理論や日本文学を教えておられます。
そのカシャさんが執筆陣のお一人として加わった『Literature in Heisei Japan, 1989-2019 平成文学における様々な声』(上智大学出版)が刊行され、見本を送ってくださいました。
本書は国内外の執筆者による平成の日本の文学シーンを多角的に分析して全編英語で書かれたエッセイ集なのですが、普段、版権エージェントとして、あるいは書籍専門の翻訳会社として日本の作品に関わることは多々あれど、恥ずかしながら日本文学のことを体系的に学んだことは一度もなく、長らくコンプレックスを抱えておりました。そういった意味でも本書は自分にとっては非常にありがたい内容の本なのでした。
カシャさんとは2019年に初めてお会いし、当時、日本の私小説について論文を書かれていた関係で、私が海外版権の代理人を努めている作家の白石一文さんをご紹介したのがご縁の始まり。
今回カシャさんは本書の中の「The Space of Memory: Existential Quest in Shiraishi Kazufumi’s Fiction」という章を担当され、この章はすべて白石一文さんの作品や、白石さんへのインタビュー内容で占められています。 本章で紹介されている白石さんの作品、『この世の全部を敵に回して(英語版タイトル:Me Against the World translated by Raj Mahtani)』、『僕の中の壊れていない部分(英語版タイトル: The Part of Me That Isn’t Broken Inside translated by Raj Mahtani)』、『Stand-In Companion translated by Raj Mahtani』はいずれも私が版権エージェントとして、あるいはRed Circle Authorsの出版者として関わった作品です。
さらに、『記憶の渚にて』については物語の後半がロンドンを舞台に展開したため、白石一文さんとともに取材旅行でロンドンに同行した経緯もあり、とくに思い出深い作品です。
ロンドンに行った時のことを白石さんが『クーリエ・ジャポン』に寄稿されています。
『Literature in Heisei Japan, 1989-2019 平成文学における様々な声』は平成の日本文学のあらましを海外の関係者に英語でお伝えする際にも参考になりますし、大変興味深い内容ですので、ぜひお手に取ってみてください。
翻訳出版プロデューサー 近谷浩二
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