💡深掘解説💡東北大 英語長文・２０２２年・大問１【問２】

問２

問２は、専門家の見解がどうのように変化したかを回答する問題である。変化には、論理的に【変化前】と【変化後】がある。この点は、「変化の前後がわかるように」と出題側も注記している。

該当箇所の特定

下線部Bは、"that view is changing" と現在進行形で記述されている。通常の論理構成であれば、【変化前→変化後】という順序で語られるはずであるから、"that view" の指示内容を探しながら、変化前の状況を求めればよい。該当箇所を特定するのは容易であろう。前文である。

前文は冒頭、"For a long time, experts have seen…" とあり、現在完了形（継続）で記述されている。つまり、＜これまで長い間、専門家らは〜と考えてきた＞という【変化前】である。

それゆえ、【変化後】は、順序に従って、下線部Bのコロン以下にあると期待できる。下線部B直前には、"But" があるから、＜しかし現在では〜と考えるようになっている＞という論理構造が見いだせる。

変化前の見解をまとめる

１文が長いため、落ち着いて構文を把握して、正確に訳しつつ、要約する必要がある。構文理解するための事項を羅列しよう。

• see O as C という第５文型

• the failure of carbon-spewing nations to rein…という名詞構文

• along with による並置・並列

• inability of poorer governments to protect…という名詞構文

出題の意図によると、この箇所を正確に和訳できている受験者は多くはなかったとのことである。差がつく箇所であると言えよう。
さて、変化前の専門家らの見解をまとめると、

これまで長い間、専門家らは、環境難民の原因は、二酸化炭素排出国が排出量を抑制するのに失敗したことや、財政難の政府が十分な適応政策によって国民を保護することができなかったことにあると考えてきた。

変化後の見解をまとめる

該当箇所を和訳することは、そこまで難しくはないが、専門家らの見解がどのように変化したのかを意識的に理解しようとしなければ、うまく意図をつかめないかもしれない。さて、文法事項を羅列してみよう。

• いわゆる there 構文の変種 （there comes a point）

• a point を先行詞とする関係副詞の where

• no （not any）: どんな〜も…でない

これらを踏まえて、該当箇所をまとめると…

どれほどインフラ設備を整えたとしても、気候変動に歯止めをかけることができない段階に到達してしまったので、環境難民は適応戦略と考えられている。

第４段落の趣旨を考える

回答はこの程度でも合格ラインかもしれないが、より深く内容を理解して、洗練させてみたい。専門家らの見解は、どのように変わったのだろうか。もっと簡潔にまとめられるかどうかを試してみてほしい。

変化前の見解、特に１つ目の環境難民の原因に注目してみたい。つまり、専門家らは、二酸化炭素排出量の抑制失敗が環境難民を生んでいると考えている。それゆえ、環境難民の問題を解決するには、一つの手段として、二酸化炭素排出量を削減して、気候変動に歯止めをかければよいと考えているのである。

変化後の見解は、この認識に異議を申し立てる形となっている。つまり、どれほどインフラ設備を整えたとしても、海面上昇を防いだり、季節性の降雨を取り戻したり、温暖化を防止することはできない。現地に住む人々にとっては、「二酸化炭素を減らしましょう」などと呑気なことを言っている場合ではないということである。環境難民にしてみれば、新しい住処を探すしか方法はないのである。

この点は、第４段落後半に記述されている。東北大による出題の意図は、「migration becomes the adaptation strategy で不定冠詞の a ではなく定冠詞の the が…第 4 段落最後のセンテンスで the final destinationとfinal という形容詞が使われていることの意味を踏まえた上で、本文全体の内容にも注意を払って欲しかった」と述べている。

この点を踏まえて、回答を洗練してみると…

以前は、環境難民の原因は、二酸化炭素の排出量抑制の失敗や資金難の政府による不十分な適応政策にあると考えられていた。しかし、現在では、いかにインフラを整備しても気候変動に歯止めをかけることができない段階にまで到達してしまったので、環境難民はやむを得ない適応戦略とみなされるようになっている。

気候変動の問題といえば、いかにして気候変動を防止するかということに話題が集まりやすい。しかし、現に気候変動によって住処を失っている人々の支援も必要である。この視点は第５段落以降を読んでいく上でも重要である。

その３に続く