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米国SaaS企業50社のバリュエーション(2020年8月)。成長余地のあるSaaS銘柄を探す。SaaS企業の各指標データのダウンロードも可能。

本記事よりも最新の米国SaaS企業のバリュエーション分析は以下になります。

8月の決算を踏まえ、今までどのSaaS銘柄を買っても株価が上がっていたのが、かなり落ち着きを取り戻す1週間になりました。売上予測を40%近く上回ったShopifyでも、株価は5%程度しか上昇していません。Datadog、Fastly、Twilioなども好決算を発表していますが、既に投資家にとっては織り込み済みの決算内容であり、サプライズとは言えずに株価は下落しています。

今後、SaaS銘柄に投資するのであれば、割安かつ成長余地の高いSaaS銘柄を吟味して投資をしていく必要があります。
そこで、今回は2020年8月10日時点の米国SaaS企業の評価をレポートしてみます。

直近決算結果

まず、今回調査対象銘柄の一覧と直近の決算結果をまとめました。代表的な米国SaaS銘柄を50社チョイスしています。

8月の決算で発表済みではない銘柄は、決算発表予定日を入れてあります。

SaaS Update - Google スプレッドシート 2020-08-10 15-45-33

見て頂ければ分かるとおり、ほとんどのSaaS企業の決算でコンセンサス予想を上回っています。

売上高のサプライズ率

決算において、売上高はコンセンサス予想に対してどの程度良かったのか(または悪かったのか)をグラフにしました。
下のグラフは各企業と、コンセンサス収益予想を上回った(または下回った)割合を示しています。
PAYCを除いて、全ての企業でコンセンサス予想に対して良好な業績を上げています。
青色のバーは8月決算発表済みの会社、赤色のバーは8月の決算発表前の会社であるため、直近の決算結果をもとに算出しています。

その中でも、Square、Zoom、Shopifyのサプライズ率が飛び抜けていますね。

売上高サプライズ率

EV/Revenue

続いて、EV/Revenueをグラフ化してみます。

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SaaS銘柄は、売上高成長率が高い企業に投資家の資金が集まりやすいと言われています。そこで、EV/Revenueと売上高成長率の相関を見てみます。

EV_Revenueと売上高成長率(相関関数:0.53)

Zoomの売上高成長率が飛び抜けていますが、それ以外の企業は概ね相関があり、相関関数は0.53でした。売上高成長率が高いとEV/Revenueも高くなる傾向にあります。

次に、EV/Revenueと過去52週の最安値から現在の株価リターンの相関を確認してみます。

EV_RevenueとOff 52W L(相関関数:0.53) (1)

こちらもEV/Revenueが高いほど、株価のリターンが大きくなっていることが分かります。相関関数は同じく0.53でした。EV/Revenueが高いにも関わらず、リターンが低い銘柄(DDOGやCOUP、OKTAなど)は、まだ今後のリターンが期待できるかもしれません。

PSR

次に各社の株価が割高かどうかをチェックしてみます。グロース銘柄が割高かどうかをチェックする指標には、PSR(Price to Sales Ratio)を使います。
PSRは以下の計算式で算出しています。

PSR = 時価総額 ÷(直近の四半期売上高×4)

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まだまだ高い銘柄もあるものの、直近の調整でそれなりに下がってきています。

40%ルール

SaaS銘柄は粗利のほとんどを採用費やマーケティング費に使い営業利益を残さない傾向にあります。そのため、従来のEPSやPERなどでは企業価値の算出が難しいです。

そこでSaaS銘柄の「成長性」と「収益性」を評価する基準として、2015年にBattery Venturesが提唱した考え方が「40%ルール」です。
「成長率+利益率=40%以上」であれば、良い企業と言われています。

成長率は売上高成長率を、利益率はフリーキャッシュフロー・マージンを利用して算出しています。

40%ルール(FCF)

まとめ

全ての企業が決算発表していない状況ですが、ひとまずということでSaaS銘柄のバリュエーションをまとめました。

結果を眺めてみると、確かに買われすぎの銘柄もありますが、まだまだ成長余地がある銘柄もありますね。
8月の決算がすべて終わったら、再度結果をまとめたいと思います。

SaaS企業の各指標データダウンロード

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