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不眠症の召し使い

前を行く人がメガネケースを落とした。拾って渡そうとしたら煙、痩せたのっぽが現れて、「ほどほどの願いだったら叶えますよ」と言う。

「私は89年生まれで、小さい頃テレビでスキーのCMを観ていました。CMの切ない雰囲気が好きで、大人になったら私もと思ったのです。でも私が大学生になったとき、みんなが行くスキーはどうしようもなく明るいもののようでした。それじゃないんです。私は灰色のスキー場に、どうしても行きたいのです」

「ちょっと、夢が大きすぎますね」

のっぽはすぐいなくなる。よく見ると、落ちているのは自分のメガネケースである。急いで屈む。汗で膝上と膝下が張り付く。スマートフォンまで滑り落ちる。

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