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バンコク二十四日目の日記(人を信じることは難しい、の巻)

ええとまず、昨日の日記です。
昨日の朝は、まだ寝台車の中にいたのだった。

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きっと7時少し前だった、人が話す声で目覚める。

朝の光を期待しておもてに面しているカーテンを開けると、やたらオレンジ色の光。え、これが太陽?と思ってよく見ると、同時多発的に同じ光が現れて、街灯だとわかる。大気が汚いからか、思ったよりも曇っていて爽快感は少ない。残念。

窓の外を眺めながらベッドの上でもそもそパンを食べ、歯を磨きに行くと、昨日話しかけてくれた丸っこい男性(以下、丸い方とする)に会う。嬉しい。

しばらく走っていくと、少しずつ太陽が明るさを発揮していく。ここはもうタイだ。バイクに乗る人、白い布がはためいてる田んぼ、洗濯ばさみをつけられて耳から吊るされている、すっかり色あせたスティッチの人形。ここに住む人たちにとってはいつもの朝なんだろう。私にとっては、すべてが新しい。

通路側のカーテンは閉めているが、誰かが寝台状態を解除してもらっている音がする。ベッドは足が伸ばせて便利なんだよなあ…カーテンも閉められるからプライバシーは守られるしなあ…しばらくこのままでもいいかもなあ…などとぼんやり考えていると、頭上から「ハロー」と声がする。

振り返ると再び丸い方で、「あの人に声をかけたらベッドから座席に戻してもらえるよ」と言ってくれている。彼も助言してくれてるし、私はすっかり起きているし、もういいか、と思い、彼にサンキューと言って乗務員さんに声をかける。

寝台の解除も、実に手際がいい。洗濯が必要な枕カバーやらシーツやらを全部ササッと外し、大きな風呂敷みたいにまとめて包み込んで、ぎゅっとしばっていく。上段のベッド(と言っても私の上には誰もいなかった)をベルトで固定して、延長されていた座面をもとの位置に引っ込めたら、あっという間に、普通の座席に戻った。

一番窓側にバックパック、その隣にリュック、その隣に自分を置いて、本を読んでいると、通路の反対側に座っている人が私の向かいに荷物を置いてくる。
ちょっとむっとしたが、置いてきた女性がにこっと笑うので、許す。許すも許さないも、まあそこは厳密には私が予約している座席じゃないのだ。

しばらくすると、再び丸い方が現れて、女性の荷物の隣を指差し、ここに座ってもいいですか?と聞く。どうぞどうぞ、と言って、また彼としばらく会話。 もうすぐ降りる駅に着くんです、と彼は言っている。

この会話の中で、この方が海軍の方であること、これから教育のための仕事をしに行くところだということを知る。なんか徳が高そうな人だものな…。

そしてなんと!これから4時間仕事があるけどそのあとでよかったら私の車でプロンポンまで送りますよ、と言ってくださる!どこまでいい人なのか…!

大変ありがたいし、絶対面白いことが起こりそうだし、他にもお話を聞きたい気持ちは山々だったが、早く宿に戻りたい気持ちもあったので、自力で電車で宿に向かう旨を伝える。よかったらという話だから気にしないでね、と言ってくれてどこまでも優しい。

この人はどう考えても悪い人じゃなさそうだから疑ったわけではなくて、だから申し訳なく思ったけど、しばらくしてからこれは自衛でもあったか、と思いつく。

一人で旅していると、人を信じることと身の安全を守ることのバランスが難しいなと思う。予想外のことを受け入れる旅がしたいんだ、それが旅行じゃなくて旅だと思うから。でも、難しい。降りるべき駅が来て、丸い方は笑顔で去っていく。

寝台車の中では充電できないだろう、とモバイルバッテリーを持ってきていたのだが、イタリア語?で話しているグループのあたり、たくさんコンセントがささっている。座席の割当によっては、充電できるっぽいな 。結局私の席からではできなかったので、モバイルバッテリーを持っていたのは正解だったけれど。

まもなく到着、という気配がしてきたので、電車を降りる前にもう一度用を足しておこうとトイレの扉を開けると、便器の中から動く線路が見える。肥溜め用の容器が撤去されてしまったのか、あるいは、昨日は暗くて見えなかっただけで、最初からすべての排泄物が線路にダイレクトアタックしていたのか。

11:10頃ファランポーン駅着。予定時間から1時間遅れ。マレーシア時間だったら、定刻通りだけれど。

ネットでファランポーン駅の写真を見てからずっと行ってみたいなあと思っていたのだけれど、期待以上に旅情あふるる素晴らしい駅だった。

重く疲れた体を引きずってバシャバシャ写真を撮っていると、ミス、写真を撮ってくれますか、と声をかけられる。ミラーレスは持っているが写真は下手くそなのだ…すみません…と思いながら撮影。カメラを返すと、もう一組に同じような依頼をされる。なぜか、あなたもご一緒に…と言われたので、見知らぬタイ人の人と記念撮影する。丸い方とお別れしてから、しまった、写真を撮ったらよかった、今後は旅先で話しかけてくれた人と写真を撮っていこう、と思っていたから、嬉しかった。

トイレは有料。3バーツ(約12円)。お金を払うけれど、きれいではない。あと、受付の女性が冷たい(タイもマレーシアも優しい人がとても多い国だと感じているけれど、何かの受付をしている人はなぜか冷たいことが多い。嫌なことでもあったのか。というか、愛想を無駄打ちしない方針なのか)。便座がガタガタでウエッティだった。

そこからMRTとBTSを乗り継いで、元いた宿に向かう。途中、舌っ足らずな話し方をする日本人の女性がいて、会話を盗み聞き。親戚の子供一人だけ、何をあげたら喜ぶかわからないのでお土産が決められない、というような話。

1時間ほどで、タイの本拠地・プロンポンに到着。プロンポンは、もうなんだかホームだ。知っている駅は、ほっとする。1ヶ月くらいいると、場所に思い入れができるなあ。

14時にならないと宿にチェックインできないので、まずは腹ごなし。それから、コワーキングスペースで日記の整理をする作業。

再び同じ宿に戻ると、この旅の最初に話しかけてくれた日本人のHさんに会う。なんとなく、まだいるんじゃないかと思っていたけれど。

今日のご飯(ここからスマホで撮った写真なので、これまでのiPadで撮った写真よりも画質が落ちます。笑)。

朝。
昨日、パダンブサール駅の売店で買ったでっかいカヤジャム入りのパン。 写真は買ったときに載せたので省略。大きすぎて、最後はちょっとつらかった…(でも、ジャムが漏れるとやばそうなので、一気に食べた)

昼。
今日は疲れたからイムちゃんでずっと食べたかったものを食べる!

いつも笑顔のお姉さん、ちょっと「あれ、久しぶりじゃない?」みたいな顔を向けてくれたので、嬉しい。

大盤振る舞いで、100バーツ(約400円)のアカメ(魚)の生姜炒めと揚げ春巻きのセット。アカメ、にんにくが効いていてすっごくおいしい。でも野菜不足を感じていたからタイスキにしたほうがよかったかなあ…。ずっと揚げ物を食べているわ、私。

タイミルクティーも頼んじゃうぞ!

30バーツ(約120円)。氷が大きい。
オレンジ色が強いのはなんでなのかなあ?といつも不思議に思っている。

こんなに甘いものを飲んでもまだ体がぐったりしているので、これは相当疲れている、と認識する。

夜。
優しい味のものが食べたいが、ありそうな場所を他に思いつかず、再びイムちゃんに行く。

豚ひき肉と豆腐の薄味スープ。80バーツ(約320円)。

カリフラワー、にんじん、きゃべつ、パクチー…野菜がたっぷりで嬉しい。この豆腐は、もしかすると私が前に生で食べてみた卵豆腐かも。スープに入れたほうがおいしいな。ヤングコーンはやっぱり食べられなくて、申し訳なさを感じる…。

列車の中で10時間以上寝たけど、やっぱりどっしり疲れている。

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