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YAUTEN アーカイブス【スタジオ外展示】

5月20日〜27日まで有楽町ビル10FのYAU STUDIOを中心に開催された「YAU TEN」では、多くの作品が有楽町から丸ノ内エリアの屋外やビル共用部などでも展示されました。今回はスタジオ外の展示風景写真をお届けします。


山本 華 Hana Yamamoto

《The Expanded Narita #3 Yurakucho Bldg.》
有楽町ビル 1F 共有部ショーウィンドウ

羽田空港の新飛行ルートが施行されて以来、都心で飛行機が真上を通るとき、私たちは隣にいる名前を知らない他者と共に空を見上げる。それはブルーインパルスのような、飛行機がもたらす共同体意識や空の神聖性といった体験が日常的に発生しているようだった。皇居の横に位置する有楽町では飛行機の音は聞こえない。この作品は、「飛行機は皇居の上空を飛行することができない」という偽の言説と、この言説が持つ妙な信憑性についての考察であり、飛行機が飛ばない場所についての気づきである。


小山 泰介 Taisuke Koyama

《Traces》
新有楽町ビル 1F 貫通通路中央
《Traces》
新有楽町ビル 1F 貫通通路中央
《Traces》
新東京ビル 1F 貫通通路中央
《Traces》
新東京ビル 1F 115区画
《Traces》
新東京ビル 1F 115区画

有楽町のビル屋上にはビオトープがある。そこは皇居の森の延長として、鳥や虫たちが行き交い、腐敗した植物や有機物からヘドロや土が生まれている。自然の現象は都市環境にも等しく影響し、代謝や循環の力学は常に存在している。本作では、新有楽町ビルと新国際ビルの屋上で採集したヘドロや土、落ち葉などをYAU STUDIO に持ち込み、サイアノタイプと呼ばれる技法でイメージに定着。有楽町ビルを照らす太陽光によって、近代の都市空間において潜在化・不可視化されてきた土の存在や、土を生み出す植物の痕跡を可視化した。
協力|小岩井農牧株式会社、株式会社冨士植木


石毛 健太 Kenta Ishige

《If this tree lives another 200 years, this property value, this hole, this word.》
三菱一号館美術館広場
《If this tree lives another 200 years, this property value, this hole, this word.》
三菱一号館美術館広場
《If this tree lives another 200 years, this property value, this hole, this word.》
三菱一号館美術館広場
《If this tree lives another 200 years, this property value, this hole, this word.》
三菱一号館美術館広場

街路樹という存在についての疑問から端を発し、この作品を制作・発表することになった。制作やリサーチを進めていく中で、公開空地の大ケヤキは資産価値を算出され、屋上ビオトープの柳の挿し木からは根が生え、虫が沸いた。そういった制作過程や発表の機会を目の前の(あるいはこの先の)都市における景観の成り立ちや生命のあり方について考える嚆矢としたい。
協賛|荒川技研工業株式会社/協力|一般社団法人グリーンインフラ総研


梅沢 英樹 + 佐藤 浩一 Hideki Umezawa + Koichi Sato

《緩慢な尺度において》
国際ビル B1F 112-114区画
《緩慢な尺度において》
国際ビル B1F 112-114区画
《緩慢な尺度において》
国際ビル B1F 112-114区画
《緩慢な尺度において》
国際ビル B1F 112-114区画

大丸有エリアのエネルギー供給を支える地下プラントと、東京と距離的な隔たりがありながらも様々な関係を持つ場所;放射性廃棄物の地層処分研究施設、放射性物質が沈着した湖、地熱地帯、氷河地形と風力発電所などへのフィールドワークを基にした作品。普段は見えにくい都市を支えるインフラの様子やエネルギーをめぐる複数の場所の関係性が、都市の公共空間の中に配置されることで、私たちの都市生活がどのようにして人間的な尺度を超えた時間と接続されているのかを考察する。
協賛|エコッツェリア/撮影協力|丸の内熱供給株式会社、幌延深地層研
究センター/撮影補助|芝田日菜/テクニカルサポート|上田真平


GC Magazine

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新有楽町ビル B1F B105区画
GC Magazine
新有楽町ビル B1F B105区画
GC Magazine
新有楽町ビル B1F B105区画
GC Magazine
新有楽町ビル B1F B105区画
GC Magazine
新有楽町ビル B1F B105区画
GC Magazine
新有楽町ビル B1F B105区画
GC Magazine
新有楽町ビル B1F B105区画
GC Magazine
新有楽町ビル B1F B105区画
GC Magazine
新有楽町ビル B1F B105区画

荏原 陸 Riku Ebara
《有楽塔》

1970 年、大阪万博と同時期に開業した理髪店にシンボルモチーフとして塔を作り上げる。「有楽塔」という文字の如く、楽しさがあって欲しいと願い塔を積む。雑誌にプリントされた写真を自らのルールで乗っ取り、手で折り曲げることで笑顔を作り出す。

伊藤 颯 Hayate Ito
《すかるぺちゃ~》

60 年代に建設された有楽町のビルは、当時の最新技術を用いて角が丸みを帯びて設計され、壁や床には化石が眠っている大理石が使われている。そこから着想を得た伊藤は骨型のクッション『すかるぺちゃ~』を制作。地下に眠ったままの理容室跡地は化石の発掘現場を想起させるが、天井に浮かぶ骨と地面に置かれたツルハシは、実際の天地と矛盾しており、自室で制作していたこれまでと、有楽町で制作することの自身における立場の逆転を表している。この場合、理容室跡地は鑑賞者には見えない作者の輪郭を掘り起こす発掘現場ともなるだろう。

鈴木 冬生 Toi Suzuki
《cobweb》

このエリアでは計画的に配置された植生が自然とされている。一方で、ビルの影や路地裏に生息する蜘蛛や地衣類は、人為的な開発に呼応し、生態系を変化させながら密かに生き続けてきた。これらは普段鑑賞や体験の対象となることはない。だがこの営みは、都市における一つの自然と呼べるものではないだろうか。本作では一見、無益と思われる自然物やその現象をインスタレーションのモチーフに、閉ざされていた理容室跡の最奥から増大させていく。

星 嶺珠 Ryoju Hoshi
《SKRV.(SL)》

ゴミのポイ捨てや、落書きなどはもちろんのこと、区画整備が徹底的にされるだけでなく、めまぐるしく姿を変えていくこの街において、本プロジェクトは一瞬の出来事に過ぎない。その性質が有楽町という街に不釣り合いにも見えるスローアップと重なっていることに気がついた。有楽町のビルから着想を得、建築に使われるモノをモチーフとし、制作をした。

金田 剛 Tsuyoshi Kaneda
《ガラスの船》

有楽町から程近い東京国際フォーラムは、巨大なガラスの船をモチーフに建築されている。地上を水底、そこから約60m 上空にあるガラスの船までを水面だと仮定し、水に満たされた都市空間を舞台に作品を制作した。私たちが普段から目にする都市の中で、人工的に植え付けられた草木は水中を揺らぐ水草に変わり、その周囲を魚が泳ぐ。本作は、ネイチャーアクアリウムの観点から都市空間における自然を考察する一つの試みである。

高田 有輝 Yuki takada
《ダウンロード》

ゴジラをはじめ数多くの特撮怪獣が有楽町の土を「踏んで」いる。その影響で有楽町の人口は18 人に落ち込んだと仮定してみる。街は新陳代謝を繰り返す一方、昔の面影が幽霊のように彷徨っている。しかし、有楽町ほど死の匂いがしない街は珍しい。この街に家族はいるのだろうか?有楽町で見聞きした風景、語り、事物をつなぎ合わせ、虚構(漫画)を制作した。

小林 菜奈子 Nanako Kobayashi
《風解》

日本において「風」という言葉はさまざまな表現で用いられる。「そよ風」「台風」というように物理的な自然現象を指す場合もあれば、「風の吹
きまわし」「風向きが悪い」など、世の中の時勢やその場の雰囲気、人の気持ちなどを表現する際に使われることも多い。しかし、どちらも普段の生活においてこれを視覚化することは無い。有楽町のようなビル街に発生するビル風や取り壊し予定の建物、そこから連想される「風化」のイメージとは何か。本作は、本来「風」を感じる五感以外を用いて、あらゆる「風」を再認識する。

Lark Ring
《Decree》

社会的・空間的な編成に作品の焦点を置いている。規範的な思考や世界観に対する葛藤をきっかけに、既存の構造や普遍的と思われる真実に疑問を投げかけ、検証するところから制作を行う。探求心の核となるのは言語への興味であり、自身が持つ世界の見方や考え方、 関わり方を構造化したものである。インスタレーションにおいては、立場、言説、社会の構造の中にある一過性を強調し、作者と観客の立場を混ぜ合わせることで、現代への批判的な関わり方を求めている。


Radio Studio TPR

YAU STUDIOでの4ヶ月間のスタジオプログラムを経て、YAUTENの会場でアーティスト達は何を語ったのか。ぜひRadio Studio TPRもお聞き下さい。


All images © TOKYO PHOTOGRAPHIC RESEARCH PROJECT


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