見出し画像

TECHNOLOGY POPS的感覚で選出する「平成」ベスト?ソング200:Vol.1【200位〜181位】

 TECHNOLOGY POPS π3.14です。本家共々この別邸をご愛顧いただきありがとうございます。現在、新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言が発令され、STAY HOMEな日常をお送りいただいていると思いますが、このような未曾有の時代とはいえ、こればかりは時流に適応していくしかありません。そのような中、ほとんど音楽に特化したような私のようなアカウントが貢献できることといったらほんの微々たるものです。そのようなわけで、こういった誰の役にも立つかどうかわからないようなコンテンツを垂れ流すしか能のないということを割り切りながら、このような企画を始めたいと思います。(とタイムリーなイメージで語っておりますが、企画自体は昨年からの構想ですので今の状況は全く動機でもなんでもありませんw)

 新企画といっても前回の企画である「平成ベストアルバム」シリーズとの兄弟企画でございまして、今回は「平成ベストソング」であります。「ソング」ですので、楽曲単位ということになりますね。これはかなり無謀な構想でした。アルバムでさえ膨大な時間をかけざるを得なかったものを、平成30年間のベストソングを100曲ランク付けて紹介なんて、余りに危険な企画です。まずどうあがいても100曲に絞り込むことなどできません。星の数ほどリリースされた楽曲を選曲するなど、どうしてもアレがないコレがないという話になるに決まっています。しかもランク付けとなると順位が上下で楽曲の善し悪しを問われることになってしまいます。たとえ個人史であると断りを入れたとしても、個人的な感性の違いだとしても、皆さんの心の中で鈍い軋轢を生み出すことになることでしょう。なので、コオは思い切って「ベストであること」をやめることにしました。今回タイトルに「ベスト?ソング」とクエスチョンマークが入ったのはそういうことです。ベストなのかなんなのかは分かりませんが、「あくまでTECHNOLOGY POPS的観点から30年間いろいろと聴き続けてきた中で、個人的に紹介しておきたい、忘れないでおきたい、と思われる楽曲」を中心に選曲させていただきました。

 指針としては「平成ベストアルバム」で紹介したアーティストの作品に関しては、再度紹介しても仕方ないので、余程のインパクトでない限りは選外としています。せっかくなので、ベストアルバムでは紹介しきれなかったものを優先的にという思いです。そしてPOPSという範疇の中で自身の好みの音が反映されている部分は忘れずに、これまで取り上げてこなかったタイプの楽曲も含めて、そして30年間のリスナーとしての変遷を俯瞰してみて押さえておきたい楽曲やそれを制作したクリエイターをフィーチャーしたいという感じでしょうか。そうなるとあれやこれやとなってしまいまして、結局100曲に絞れず、タイトルの通り200曲になってしまいました。こうなるともうランキングなど無意味ですよね。そして上記の指針として選曲したために、非常になんというかオタクっぽいというか気持ち悪さが倍増した結果になってしまったと反省しています。なんでそういう方向に寄ってしまったのか、それはまた追々説明したいと思います。

 ともあれ200曲あるということなので、1回ごとに取り上げるのは前シリーズと同様に20曲。つまり10回シリーズとなります。今の流行であればSpotifyやApple Musicかなんかで20曲ずつプレイリストを作って・・ということが手っ取り早いのですが、余りに配信されていない楽曲が多いので、苦肉の策で20曲ごとに曲つなぎだけのMixにしてMixcloudに上げます。どこを探しても音源がない場合はそのMixのどこかに入っているという状態を作っておきます(順番はランク順ではありませんので不親切ですが)」。

 では前置きがすごく長くなりましたが、今回は第1回目、200位〜181位です。お楽しみください。



200位:「cosmic cosmetics」 嘉陽愛子 

    (2006:平成22年)
    (シングル「cosmic cosmetics」収録)
     作詞:Kenn Kato 作曲・編曲:中田ヤスタカ


      vocal:嘉陽愛子

      all instruments:中田ヤスタカ

画像1

 モーニング娘。LOVEオーディション21(2001年)の最終選考に残った嘉陽愛子は、エイベックスに拾われる形で同社初のアイドル歌手路線として2003年にデビューするものの鳴かず飛ばず。歌手キャリアの終盤に差し掛かった2006年にリリースされた11枚目のシングルがこの楽曲です。
 最後の勝負となったこの楽曲ではサウンドプロデューサーで、当時Perfume「エレクトロ・ワールド」のブレイクでヒットメイカーとしての才能を垣間見せ始めていたcapsuleの中田ヤスタカを起用、得意ジャンルであるオシャレ感満載のガーリーポップとキューティーなテクノポップを噛み合わせたそのサウンドは、どこをどう切り取ってもヤスタカ印。作詞家はエイベックス御用達のKenn Katoですが、いかにも中田の得意ジャンルを意識したかのような文字感と語呂感で、このビッグウェーブに乗っていくぞ!という意識を露わにしています。中田ヤスタカは、自身で完パケするよりも、他者に作詞を任せた方がより良い仕事をするタイプですので、この楽曲でも嘉陽のカジュアル感覚を生かしたサウンドメイクでしっかり役割を果たしたと言えるでしょう。しかしヤスタカ人気が爆発したのは翌2007年。ブレイク直前にはかなく夢破れた嘉陽は、Perfume「ポリリズム」のブレイクを横目に見ながら、歌手活動を停止することになります。

【聴きどころその1】
 うっすいシンセパッドによるコード感覚。この薄さが必要以上に前面に出てくる四つ打ちバスドラと全編にわたる正確に刻むシーケンスをさらに引き立てています。
【聴きどころその2】
 サビ最後の「タイムアウトね♪」に至るまでの長尺の上昇アルペジオフレーズ。ハッピーなサビのメロディから美しくもドリーミーなイントロへと転換する大事なポイントです。


199位:「天空7 (テンクウセブン)」 TECHNO CIRCUS

    (1996:平成8年)
    (ミニアルバム「TECHNORON」収録)
     作詞・作曲・編曲:畑亜貴

      vocal・synthesizers・programming:畑亜貴

画像2

 1990年代はテクノポップ冬の時代と言われていましたが、その根強い息吹は同人音楽の世界でしぶとく生き残り続けていました。ナムコサウンドチームのクリエイターが中心となって設立されたトルバドールレコードでは業界の垣根を超えたクリエイターが集まってコンピレーションアルバムをコミックマーケットを中心にリリースし続けていましたが、このトルバドールの主宰の1人であった細江慎治の協力により、TECHNO CIRCUSというグループが立ち上がることになります(現在活動中の世界対応のMade in Japan エンターテインメント集団とは全く関係はありません)。
 鈴木勝を中心としたこのユニットは1994年に「TECHNO CIRCUS」、1995年に「TOKYO TECHNO CENTER」という2枚のアルバムを発表していまして、3年連続でリリースされたこの「TECHNORON」が圧倒的に気持ち悪い宇宙人のジャケットデザインによって好事家の方々にとってはわずかに記憶に残っているところでしょう。もともとこのTECHNO CIRCUSはゲーム音楽をそのまま抽出したかのようなチープなインストテクノミュージックというところで、それ自体は歯応えの少ない仕上がりなのですが、この作品には1曲だけボーカル入りの楽曲がありました。「天空7(テンクウセブン)」という名のこの楽曲を手掛けたのは、当時コナミの外注サウンドクリエイターであった畑亜貴。破滅系プログレッシブテクノでのソロ活動やバンドスタイルの月比古、アコースティックユニット死蝋月比古での活動をインディーズを舞台に密かに展開していた当時の畑が提供したその楽曲は、他に収録されている楽曲とは単純にクオリティが一歩抜きん出ているが故に先述のジャケットと妙に耳につく畑のボーカルが気持ち悪いことこの上なく、長い年月を経ても耳にこびりつくことになったのでした。
 なお、その後の畑亜貴の活躍はご存知のとおり。アニソン界の大御所作詞家として今もなお君臨しています。

【聴きどころその1】
 イントロからの素っ頓狂なフレージングと変拍子感覚。さすがはプログレッシブロック出身。特にシンセソロが圧巻!これ以上になく自由に弾きまくる様子は純粋なテクノポップにしては珍しい感覚です。
【聴きどころその2】
 変調させた畑亜貴自身の声の処理。特にセリフ部分の宇宙人感が半端ありません。ジャケットデザインとの相乗効果で背筋がゾクゾクっとします。


198位:「器官なき身体 Le CORP SANS ORGANES」 ぷるるん釘

    (1995:平成8年) 
    (オムニバス「TROUBADOUR」収録)
     作詞:たなべありす 作曲:飯島丈治 編曲:ぷるるん釘

      vocal:たなべありす
      guitar:飯島丈治
      bass:松谷達矢
      drums:小林まるく
      keyboards:佐藤隆一

画像3

 1992年よりナムコサウンドチームの細野慎治、佐宗綾子、相原隆行らを中心とし設立、コミックマーケットを中心とした同人活動として年に数枚ペースでコンピレーションアルバムを連発していたトルバドールレコードが、1995年にリリースしたレーベル名を冠したオムニバスアルバム「TROUBADOUR」。このオムニバスには、細野や佐宗らが在籍していたテクノポップバンド・まにきゅあ団、レーベルマスターの1人である相原隆行、彼らとの関係性が深かった畑亜貴、まにきゅあ団のメンバーであった佐々木宏人のユニット・Nymphéas、同じくメンバーの佐野電磁のCHARLOTTE CORPS、伝説の世紀末演歌バンド・宇宙刑事「花田秀次」&The生仏〜ズ喝!!、そして当時はナムコの所属していたクリエイターで、現在は神前暁や田中秀和といった数々のサウンドクリエイターを生み出す音楽制作集団MONACAの代表取締役である岡部啓一のソロユニット・BKOといった個性的なメンバーが参加していましたが、本作にはその中でも当時最も名前が知られていたと言ってもよいプログレテクノポップバンド・ぷるるん釘も参加していました。
 ぷるるん釘が知られているのは、キーボードの佐藤隆一の存在です。彼は80年代にてんちゆみと松前公高とのトリオバンド・きどりっこのリーダーとして、ほぼ全ての作編曲を手掛けるなどそのサウンドセンスを発揮していましたが、きどりっこは3枚のアルバムを残し1991年に解散、その後末期きどりっこのメンバーであった松谷達矢(bass)と、松前と共にSEGAのゲームミュージックアレンジバンド・S.S.T.BANDのメンバーであった飯島丈治(Guitar)に加え、きどりっこのサポートドラマーであった小林まるく、同じくサポートキーボーディストであり、当時は立東社の雑誌「キーボードスペシャル」にライターで参加していた、たなべありすをボーカルに迎え、ぷるるん釘を結成します。きどりっこ時代のシンセサウンドセンスに加え、フュージョンやプログレを通過したような演奏力をもアピールしたニューウェーブなバンドとして、本作では「ホメオスタシス」と共にこの「器官なき身体 Le CORP SANS ORGANES」を携えて参加、飯島作曲による目まぐるしく表情を変化させるボーカルと展開力のあるソングライティングは、今後の活躍とアルバムリリースを期待させるものでしたが、結局佐藤の本業が多忙になったということで程なく活動を休止してしまいました。しかし、90年代中盤はインディーズに興味深いポストニューウェーブバンドが隠れていた事実の1つとして、ぷるるん釘が語られてもよいのではないでしょうか。

【聴きどころその1】
 Aメロとサビに挟まれたBメロのドロドロと崩れていくようなメロディとコードワーク。まとわりつく何かを振り解くようにサビへ向かっていくボーカルが面白いです。
【聴きどころその2】
 不気味なのか軽快なのかわからない間奏のシンセソロのリズム感。最初のソロフレーズに続いてギターソロが加わってくるのですが、そのギターソロの裏でも淡々とサイン波フレーズでバックアップする控えめな主張が興味深いです。


197位:「RIDEBACK」 MELL

    (2009:平成21年)
    (シングル「RIDEBACK」収録)
     作詞: MELL 作曲・編曲:高瀬一矢

      vocal:MELL

      programming:高瀬一矢
      guitar:尾崎武士

画像4

 高瀬一矢が主宰する北海道が誇る音楽制作チームI'veが活動を開始したのが1998年。KOTOKOや川田まみ等と共に活動当初から歌姫としてI'veサウンドを支えてきたのがMELLでした。ゲームソングやアニメソングを数多く手掛け00年代に全盛期を迎えるI'veにあって、ハードなエレクトロサウンドに耐え得る歌唱力と英語力を誇るMELLは高瀬からも抜群の信頼を置かれるところでしたが、ソロデビューは2006年のシングル「Red fraction」まで待つことになります。アニメ「BLACK LAGOON」のエレクトロロックなオープニング主題歌としてその実力を早くも披露すると、続く3枚のシングルは全てアニメや実写映画とタイアップするなど第一線で活躍、そして2009年のこの5枚目のシングルでも、変形バイクロボットアニメ「RIDEBACK」の主題歌としてまたもやタイアップ、好評を得ることに成功します。しかしMELL自身はその後体調を崩すなど不運も重なり、2013年に活動を停止することになります。
 さて、この楽曲はあの森岡賢も参加した前作シングル「KILL」と同様のスピード感溢れるアシッドなベースラインとリズムを軸にしたシーケンスが心地良い高瀬一矢お得意のダンストラックです。なお、高瀬一矢が手掛ける楽曲の特徴としては、イントロからAメロBメロまではカッコよさ重視で進行し、印象的なサビで一気にバタ臭いJ-POP調に転換しポップ性を獲得する手癖がありますが、本楽曲でもそれは踏襲されていて、まさに高瀬節と言われるメロディラインと、I'veたる所以のハイスピードシーケンス、この両方が高いレベルで昇華された名曲の1つがこの「RIDEBACK」と言えるでしょう。

【聴きどころその1】
 なんといってものっけからグイグイ押しまくる高速アシッドベースライン。ほとんどこれ一発勝負と言ってよいでしょう。わかっているんだけどやめられない、かっぱえびせん的なこのハイスピードシーケンスの魔力が、高瀬一矢の最大の魅力と言えます。
【聴きどころその2】
 間奏に入る前のシンセベースのワンフレーズ。ここだけ一音になりますが、非常にコクのあるよい音をしています。このワンショットの場面展開が実に秀逸です。そこからトランシーなディレイがかかったサウンドをバックにピアノソロが入りますが、そこでも延々とアシッドベースが蠢き回ります。やはりこの楽曲はこのベースありきですね。


196位:「Carry Out!」 中島愛

    (2014:平成26年)
    (アルバム「Thank You」収録)
     作詞:L2 作曲・編曲:長岡成貢


      vocal・backing vocals:中島愛

      guitar:Adrian Bergerac
      trumpet:佐々木史郎
      trumpet:奥村晶
      strings:クラッシャー木村ストリングス
      keyboards・all other instruments & programming:長岡成貢

画像5

 中島愛は声優歌手とも言われておりますが、本質は歌手であって声優はたまたまデビューがそうなったというだけの副業でしかないというのが個人的な認識です。彼女は非常にスタッフ環境に恵まれ、特に所属しているflyingDogレーベルの名プロデューサー・福田正夫の薫陶を受け、福田が引っ張ってくる宮川弾や北川勝利といったポスト渋谷系作編曲家や、清水信之や佐藤準等の大御所アレンジャー等の良質なコンポーザーやサウンドメイカー達が丹精込めて作り上げた楽曲は、アニメソング・声優ソングという範疇ではもったいないほどの完成度を誇っています。言うなればシンガーに徹した2010年代の飯島真理といったところでしょうか。しかし彼女は5年間の豊潤な音楽的環境の恩恵を受けた歌手活動に一旦ピリオドを打つことを決意し、2014年にこの3rdアルバムをリリースするわけです。なお、中島は4年強の休養後、再び歌手としての活動を再開し現在に至っています。
 今回取り上げるのは3rdアルバム「Thank You」の2曲目、「Carry Out」です。本作には西脇辰弥がアレンジしたプログレフュージョン風味の「愛の重力」や、スウェーデンのハウス系クリエイターRasmus Faberのエレポップ「マーブル」、尾崎亜美+佐藤準の黄金コンビによるバラード「ありがとう」など、その他にも多彩な才能ある作家陣による楽曲が目白押しの名盤ですが、「Carry Out」はジャニーズ事務所関連のアイドルソングを多く手掛けるプロフェッショナルな作編曲家・長岡成貢が手掛けた楽曲です。長岡といえばアニメ「プリティーリズム・オーロラドリーム」の主題歌であるLISPの「You May Dream」がその鮮やかでスタイリッシュなアレンジメントでアニソン界を代表する名曲として知られていますが、本楽曲でもその豊富な経験に裏打ちされた見事なアレンジメント能力を発揮、タイアップシングルのクオリティと遜色のない抜群の完成度に仕上がっています(結果としてパチスロ「輪廻のラグランジェ」の挿入歌にはなりましたが)」。

【聴きどころその1】
 美しいオーケストレーションとプログラミングされたシーケンスの絶妙な混ざり具合。これぞアレンジメントの醍醐味というべきスコアで、縦横無尽に駆け巡るストリングスは圧巻の一言です。
【聴きどころその2】
 この楽曲のもう1つのポイントと言えるのが、長岡自身が演奏するエレクトリックピアノ。これは演奏していてものすごく楽しいのではないでしょうか。度肝を抜かれるのはアウトロのフュージョン感覚溢れるエレピソロ。前述のストリングスとの掛け合いによる相乗効果で弾き手も聴き手もハイテンションになること間違いありません。


195位:「永遠の虹を夢見て」 樫原伸彦

    (2004:平成16年)
    (オムニバス「スーパーヒーロー・クロニクル メタルヒーロー主題歌・
     挿入歌大全集 III」収録)
     作詞・作曲:樫原伸彦 編曲:東海林修


      vocal:樫原伸彦

      synthesizers・programming:東海林修

画像6

 1996年〜1997年まで約1年間テレビ放映された東映特撮ドラマ「ビーファイターカブト」。前年の「重甲ビーファイター」の続編であるこのドラマは、「宇宙刑事ギャバン」から連なるメタルヒーローシリーズの最後の作品と言われています(上に掲載されているジャケットの右上の黄金色のヒーローがビーファイターカブト)。特撮ソングもその明瞭快活でわかりやすく、さらに聴き手の心を盛り上げるための熱さが備わっていないといけないため、非常に印象が残りやすく作り上げることから、数多くの名曲が生まれています。前作の「重甲ビーファイター」では主題歌などに「ビーファイター!」という非常に印象的なサウンドロゴがフィーチャーされていましたが、本作では前作ほどのインパクトは薄れていたように思われます。本作の主題歌「ビーファイターカブト」を歌ったのは樫原伸彦で、あの尾崎豊の迷曲「核」のアレンジャーとしても知られており、現在ではAKB48関連でも編曲を手掛けている職業作編曲家ですが、本作ではオープニング・エンディング両主題歌に関してみずからボーカルを担当しています。
 しかし今回取り上げるのは、本作の数ある挿入歌の1つである「永遠の虹を夢見て」です。この楽曲は長らくソングコレクションに収録されず、2004年にリリースされたコレクター垂涎のオムニバス「スーパーヒーロー・クロニクル メタルヒーロー主題歌・挿入歌大全集 III」の最後の最後に収録されたシンセサイザーバラードです。この楽曲を手掛けたのが日本音楽界の超の上にさらに超がつく大御所作編曲家にしてシンセサイザー奏者である、東海林修です。1962年の中尾ミエ「可愛いベビー」の編曲を手掛けたのをはじめとしてグループサウンズから70年代の歌謡曲黄金時代において数多くの編曲を手がける言わずと知れた国宝級アレンジャーで、あの「笑点」のテーマソングも東海林の仕事です。しかし東海林には別の側面がありまして、それは多数のシンセサイザー作品を手掛けているということです。彼がMOOGシンセサイザーを初めて使用したのが1970年ということからもその先見の明があったというところですが、以降数多くのオリジナルシンセインストアルバムや「デジタルトリップシリーズ」と名付けられた80年代のロボットアニメの音楽をシンセサイザーでアレンジしたアルバムを20枚も制作するなど、2018年に逝去されるまでシンセサイザー音楽界に対する彼の貢献は枚挙にいとまがありません。そんな東海林が手掛けたこのシンセサイザーバラードは、多くの特撮ソングにあってまさに異質なアナログシンセの滲むようなシンセパッドによる美しいオーケストレーションサウンドが、コズミックワールドを誘う名曲です。

【聴きどころその1】
 独特の響きを持つシンセブラスとシンセストリングスによる熟練のオーケストレーション。長年培ってきた精密なアレンジメントをまさかの特撮ソングで堪能できます。
【聴きどころその2】
 情景描写豊かなフレーズ構成と2度に渡るソロフレーズ。隙のないフレーズを随所に連発、星の煌めきを想起させる効果音もお手の物。そして1度目は管楽器系のシンセソロ、2度目はギターライクなソロと全てがシンセサイザーで演奏され、シンセ好きにはたまらないサウンドデザインです。これぞまさに誉高き名曲です。


194位:「太陽のバースディ」 田中陽子

    (1990:平成2年)
    (アルバム「INVITATION」収録)
     作詞:森雪之丞 作曲:柴矢俊彦 編曲:鷺巣詩郎

      vocal:田中陽子

      all instruments:鷺巣詩郎

画像7

 第14回ホリプロスカウトキャラバングランプリの肩書を持つ田中陽子がシングル「陽春のパッセージ」でデビューしたのが1990年4月。以降、「夕陽のクレッシェンド」「陽炎のエチュード」と自身の名前である「陽」の字を冠したシングルを立て続けに3枚リリース、その集大成として同年11月に1stアルバム「INVITATION」がリリースされるまで怒涛の約8ヶ月を過ごしました。彼女を題材としたアニメ「アイドル天使ようこそようこ」まで制作されるという猛プッシュぶりでしたが、なんと翌年彼女はその短いタレント活動に別れを告げることになり、その突然の引退劇は様々な憶測を呼びながらも記憶に残るアイドルとして語られてきたわけです。
 3枚のシングルをはじめ彼女が唯一残したアルバム「INVITATION」のサウンドを一手に手掛けていたのが、80年代よりその洗練されたサウンドメイクで多くの名曲を作り上げた名アレンジャー鷺巣詩郎です。特に80年代後半からは大胆かつ過剰なエレクトリックサウンドで業界を席巻した鷺巣が手掛けていることもあり、「夕陽のクレッシェンド」や「陽炎のエチュード」ではせわしないシンセブラスが暴れ回るインパクトの強いサウンドが施されていましたが、今回取り上げるのはアルバムのトップを飾る「太陽のバースデイ」です。またもや「陽」の字を冠したこの楽曲は、元ジューシィフルーツの柴矢俊彦を作曲に迎えたキュートなテクノポップ調のアレンジを楽しむことができます。哀愁メロディが多くなってきたシングルと比較しても可愛らしさが強調された曲調ですが、淡々としたシーケンスと無機質なリズムマシンのおかげで程よく感情が抑えられた歌唱が絶妙にマッチしている、流石に1曲目に抜擢されるほどの完成度を備えた楽曲であると思われます。

【聴きどころその1】
 適切に配置されたシンセサウンド。動き回るフルートからキラキラフレーズ、Bメロからはフワッとしたパッドが入ってきて、サビではフルートとピチカートが交互で掛け合いながらまとめていきます。
【聴きどころその2】
 リズムマシンの大活躍ぶり。マシン特有の前ノリを生かしたつんのめりリズムを軸に、要所をエレクトリックタムのフィルインで盛り上げます。間奏へのインターバルでバスドラ連打になる部分がこの楽曲のハイライトと言ってもよいでしょう。


193位:「「夢」~ムゲンノカナタ~」 ViViD

    (2011:平成23年)
    (シングル「「夢」~ムゲンノカナタ~」収録)
     作詞:シン 作曲:零乃 編曲:ViViD・宅見将典


      vocal:シン
      guitar:零乃
      guitar:怜我
      bass:イヴ
      drums:Ko-ki

      all other instruments:宅見将典

夢」~ムゲンノカナタ~」

 この楽曲との出会いはご多分に漏れず2011年に放映されたテレビアニメ「レベルE」のエンディング主題歌でした。どういうバンドなのか全く予備知識もなく、ただただ楽曲自体のキャッチーなメロディに圧倒された、ただそれだけだったのです。そしていろいろ調べてみますと、彼らはViViDというヴィジュアル系バンドでこれがデビュー曲であるということがわかりました。そしてそのお姿を見てみようとジャケットデザインを拝見したのですが、これがまた眩しいくらいのギラギラしたヤンキースタイルのヴィジュアルでして、そのはちきれんばかりの若さにさらに圧倒されたのです。
 彼らViViDはツインギターの5人編成で、音楽性は泣きのメロディを基調としてラップも取り入れたハードミクスチャーロックといったところでしょうか。伸びのある典型的なヴィジュアル系ボーカルスタイルのシンと、若手にしてはテクニカルなギタープレイを見せる零乃(レノと読むらしいです)が中心ということで、この1stシングル「「夢」~ムゲンノカナタ~」でもお披露目ということでグイグイと攻撃的かつチャレンジングな構成と演奏を聴かせてくれます。あの印象的なサビから始まり、イントロからのAメロではウイスパーのセリフにとどめ、Bメロから歌い出すという珍しい構成で肩透かしを喰らわせる仕掛けも面白いです。なお、この楽曲の共同編曲を手掛けているのが宅見将典で、彼は同年(2011年)のグラミー賞にノミネートされたアルバム、Sly and Robbieの「One Pop Reggae」にギタリストとして参加するなど国内外で活躍するクリエイターで、叔父があの西城秀樹というサラブレッドです。彼のバックアップによりViViDは音楽性としても一定のレベルを保ちながら4年間第一線で活動を続けましたが、2015年に解散いたしました。なお、ボーカルのシンとギターの零乃はソロとして活動、もう1人のギター怜我とベースのイヴも音楽活動をそれぞれ継続しており、それぞれしっかり別の道を歩んでいるようです。

【聴きどころその1】
 何と言っても泣きの入ったメロディラインでしょう。単純かつわかりやすく、次が予想できるメロディ進行ですが、その期待を裏切らないというのがキャッチーなロックチューンには大事な部分であると思います。
【聴きどころその2】
 シンの非凡なリズム感によるボーカルスタイル。特にサビの「ムッゲンのカナッタに〜♪」の部分が最高にカッコいい。こういう語感が自然と出てくるのはセンス以外の何者でもありません。ガリガリした尖ったサウンド以上に非常にボーカルに魅力を感じる楽曲です。


192位:「We Shed No Tears」 貴水博之

    (1991:平成3年)
    (アルバム「Saturation Flower」収録)
     作詞:久和カノン 作曲:鈴木雄大 編曲:椎名和夫


      vocal:貴水博之

      guitar・drums&percussion programming・
      instruments manipulation:椎名和夫
      drums&percussion programming:岡井大二
      

画像9

 1989年にアメリカンポップススタイルのボーカルグループHOT SOXのメインボーカルとしてデビューしたHIROこと貴水博之は、HOTO SOX解散後にソロに転向、早速1991年にアルバム「Saturation Flower」で再デビューを果たすことになります。この作品は元四人囃子の岡井大二プロデュースということで、ハウスミュージック的なアプローチの軽快なリズムに乗ったサウンドが興味深かったのですが、楽曲自体が地味な仕上がりのものが多く、一般的に注目されることはありませんでした。貴水自身はHOT SOX時代から独特の高音が伸びる個性派ボーカリストとして実力は備えていたものの、こうした巡り合わせの難しさもあって不完全燃焼の燻った状態にあったわけですが、翌1992年に当時小室哲哉2世として頭角を表しつつあった浅倉大介のソロアルバム「D-Trick」のゲストボーカルに誘われたことが、accessのボーカリストとして飛躍していく彼の運命を決定づけることになります。
 さて、そんなブレイク前の貴水博之のソロアルバム「Saturation Flower」に収録曲の中で1曲だけ異質の楽曲があります。それがこの「We Shed No Tears」。作曲は80年代にシティポップ4人衆の1人として活躍した鈴木雄大、編曲にはムーンライダーズの初代ギタリストであり、80年代の代表的な打ち込み系アレンジャーである椎名和夫を迎えた本作では少し浮き気味なポップチューンは、トレンディなサウンドスタイルを取り入れた本作にあって、80年代の残り香が漂うドラムが強調されたトレンディドラマの主題歌のようなミディアムチューンに仕上がっています。

【聴きどころその1】
 80'sなパワフルドラムの音処理。岡井大二が叩き出す気持ち良いくらいのドラムプログラミングが堪能できます。80'sの匂いを漂わせてはいますが、このスッキリ感は90年代初頭でしか出せない感触です。スネアにかかるロングリバーブが絶品。
【聴きどころその2】
 イントロ〜Aメロから既に全体を包み込む哀愁メロディライン。無駄によく伸びる(褒め言葉です)貴水のボーカルがその哀愁感をさらに増幅させています。


191位:「星空のパスポート」 芳賀ゆい

    (1990:平成2年)
    (シングル「星空のパスポート」収録)
     作詞:奥田民生 作曲:生福 編曲:小西康陽


      vocal:芳賀ゆい(C.V.柴崎ゆかり)

      all instruments:小西康陽

画像10

 伊集院光のオールナイトニッポンに端を発した架空のアイドル「芳賀ゆい」は、伊集院とラジオリスナーの妄想に次ぐ妄想の末に練りに練られた緻密な設定による一大プロジェクトに発展、その理想のアイドル像を維持すべくメディアには一切素顔を露出しないという鉄則を守るため、「声」と「歌声」と「身体」を別々の覆面タレントが担当するという荒技で乗り切りながら、1990年にシングル「星空のパスポート」でデビューすることになります。売り上げは5万枚を記録しながらもランキング的には平凡なものに終わりましたが、その決して素顔を見せない徹底ぶりとファンがそれぞれ好みのアイドル像を具現化するために妄想をかき集めて、完成度の高い偶像を作り上げていくという壮大なコンセプトという点では、その後のCGアイドル伊達杏子や、はたまた一時代を築いたボーカロイドキャラクター初音ミクムーブメントの起点となったと言えるかもしれません。
 さて、彼女の唯一のシングル「星空のパスポート」ですが、この楽曲は80年代を代表するFM音源シンセサイザー・YAMAHA DX7の音源ROM制作で有名の生福生方則孝福田裕彦の連名ユニット)が1989年にリリースしたアルバム「内容の無い音楽会」収録のアイドルソング風楽曲酸素でルルルの焼き直しであり、作詞はユニコーンの奥田民生、編曲はピチカートファイヴの小西康陽が担当しています。これは本楽曲のプロデューサー河合マイケルが両バンドのプロデューサーを務めていた関係による起用で、「歌声」担当は河合の妻であり、仙波清彦率いる和風ニューウェーブバンド・はにわちゃんの2代目ボーカリスト・柴崎ゆかりが務めています。こうして仕上がった楽曲はあざといほどのアイドル性に満ちたエレポップサウンドで、直線的なベースラインとオケヒットが若干の時代遅れ感を良い意味で演出するなど、理想のアイドルというコンセプトに負けないほどのキャッチーなポップチューンとして、現在もなお思い出されることの多い名曲として語り継がれています。

【聴きどころその1】
 イントロにおけるAメロ直前の2回のオーケストラヒット。この2発のインパクトで覚悟を持って一気にAメロに雪崩れ込むことができます。後半の4回連発のオケヒットも重要な役割です。あのようなアタック音によるインパクトは楽曲を活気づけてくれるのです。
【聴きどころその2】
 全編の基盤となる直線的なベースライン。本楽曲がエレポップである所以の典型的なシンセベースです。原曲の「酸素でルルル」をさらにスピードアップすることによって生き急ぐかのように前のめりな勢いを感じさせます。結果的にそのスピード感のまま、芳賀ゆいの活動は約1年を持って終了することになります。


190位:「スウィートドーナッツ」 Perfume

    (2003:平成15年)
    (シングル「スウィートドーナッツ」収録)
     作詞:木の子 作曲・編曲:中田ヤスタカ


      vocal:樫野有香
      vocal:西脇綾香
      vocal:大本彩乃

      all instruments:中田ヤスタカ

スウィートドーナッツ

 アクターズスクール広島の第1期生で結成されたトリオアイドルグループぱふゅ〜むがインディーズデビューを果たしたのが2002年。爆風スランプのパッパラー河合プロデュースによるシングルは「OMAJINAI★ペロリ」というグループ名に合わせたようなふわふわネームで、当初は可愛さを売りにした年相応のローカルアイドルでした。しかし2003年に上京してから状況が一変します。所属事務所の意向でテクノ歌謡アイドルへ魔改造されることになった彼女達は「Perfume」とグループ名も英文字に改名、サウンドプロデューサーにはいよいよ渋谷系テクノポップの新潮流として注目を浴びつつあったcapsuleの中田ヤスタカを迎え、アクターズスクール時代の歌唱力重視のパフォーマンスを矯正されていく戸惑いの中でリリースされた上京後初のシングルがこの「スウィートドーナッツ」です。
 まだ中学生であった彼女達の初々しい様子がパッケージされたこの楽曲ですが、全てはここから始まったわけです。意図的に軽めの音を多用したキュートなシンセワークとBメロからサビへと向かう絶妙な流れがキャッチーなポップチューンで、どこか胸をキュンとさせるキュートな歌詞が控えめに主張する良質な楽曲であると思います。この作詞家・木の子によるどこか心に引っ掛かりを見せる歌詞はメジャーデビュー前のPerfumeの重要な売りの1つであり、他者に作詞を任せた時にこそセンスを最大限に発揮できる中田ヤスタカとの相性も抜群であったようです。その後「モノクロームエフェクト」「ビタミンドロップ」と良質なシングルを連発して先物買いの業界人に認められると、2005年には遂に「リニアモーターガール」でメジャーデビューを果たします。その後の活躍はご存知の通りですが、何度も言うようですが、全てはこの楽曲から始まったのです。

【聴きどころその1】
 スネアをテクノポップ好きにはたまらないザップ音で押し切る大胆なチャレンジ。ここにこれからはテクノで行くぞ!という制作陣の確固たる意志が見え隠れしています。
【聴きどころその2】
 間奏のサイン波によるソロフレーズ。メジャーデビュー後にリリースされた初期ベストアルバム「Perfume〜Complete Best〜」ではなぜか短縮バージョンに編集されてしまったため、この部分が削除されてしまっていますが、この部分が本楽曲の最大のポイント。このスペイシーな浮遊感覚を演出するサイン波がテクノポップたる所以なので、この楽曲はフルバージョンを聴かないと意味がありません。


189位:「オブジェクト行進曲〜ボイン揉むチャック君(予告編)」デジタルス 

    (1996:平成8年)
    (カセットアルバム「テクノカラー」収録)
     作詞:堀内敬三 作曲:Rudolf Friml 編曲:デジタルス


      vocal・synthesizer・programming:モリヤヴィッチ.T
      synthesizer・programming:サルバドール大塚

画像12
画像13

 1991年、北海道オホーツク地方に密かに辺境テクノポップレーベルが誕生しました。GHCレーベルと名付けられたそのレーベルからは、デジタルスと名乗ったグループのみが所属し、カセットテープアルバム「デ・ジ・タ・ル」をリリースします。その頃、東京渋谷でテクノポップに力を入れていた中古レコード店・ディスクユニオン2号店、後に90年代TECHNOの隆盛とともにdp1と呼ばれるようになったそのレコード店には、地方ではなかなか見かけないような怪しげなインディーズテクノポップのカセットテープが多数扱われていました。デジタルスもこのdp1にてカセットアルバムが取り扱われ、「デ・ジ・タ・ル」「セラミックス」「ホップ・ステップ・テクノポップ」「アキハバラ・エレクトリックシティ」「セーフティ・ミュージック」等々、数々のアマチュアリズム溢れるテクノポップ楽曲が収録された作品を世に送り出していたわけです。デジタルスの特徴としては何と言ってもKRAFTWERKやDEVOといったテクノポップの神様と言われるグループのパロディ。その抑えきれないリスペクトは音色や楽曲スタイル、ジャケットデザイン等に惜しげもなく投入され、限られた聴き手を唸らせたり、納得させたり、たまには大笑いさせながらも、90年代の地下に蠢くテクノポップ界隈において長く愛される存在となりました。なお、デジタルスはその後、dp1の店長であった中野泰博氏が中野ブロードウェイに開店したショップ・メカノにて音源を独占的に販売、00年代はホタテクノレーベルとしてCD-Rで音源をリマスター、その後はガラズ・レコードを新たに設立して、ウロボックス21やオヤジトロニクスといったグループと共に限りなくマイペースな活動を遠いオホーツクから発信しています。
 そんなパロディとリスペクトに満ちたデジタルスの楽曲の中でも最も衝撃(笑撃?)を受けたのが、1996年の6巻目のカセットアルバム「テクノカラー」に収録された「オブジェクト行進曲〜ボイン揉むチャック君(予告編)」 です。これぞまさしくパロディ曲というかカバー曲というか微妙な扱いの楽曲ですが、タイトルの「オブジェクト」とはKRAFTWERKのアルバム「Electric Cafe(現在はTechno Popに改名)」収録の「Sex Object」の引用ですが、このストリングスが奏でるイントロが、あの「蒲田行進曲」のメロディに似ているのでは?という発想から生まれたパロディです( 下の音源を参照)。その見事な酷似ぶりというか、誰もが思ってたことを言っちゃった感満載の衒いのなさに思わず脱帽させられます。そしてラストには同じく「Electric Cafe」収録の「Boing Boom Tschak」の空耳アワー的下ネタ「ボイン揉むチャック君」(しかも予告編とするところに以心電信的な何かを感じさせる周到ぶり)をねじり込む、開けっぴろげなパロディ精神に、彼らのテクノポップ愛の真髄を見せられたような気分になるのです。

【聴きどころその1】
 イントロのストリングスが蒲田行進曲に雪崩れ込むタイミングの余りのナチュラルさが秀逸。「Sex Object」のPCMドラムやFM音源特有のメタリックな合いの手&ボイスはそのままに、あくまで中心は蒲田行進曲という。元からそういう楽曲ではなかったと錯覚してしまうほど絶妙にハマっています。
【聴きどころその2】
 「YES」「No」「Ah〜」のボイスの過度な強調ぶり。この過剰な表現が最後の「ボイン揉むチャック」の下ネタに繋がっていると思うと、どうしても笑いを禁じ得ません。なお、本人達の名誉のためにも補足しますが、本楽曲収録の「テクノカラー」には「クール・バトルス」というそれはカッコいいアシッドなオリジナルシンセインストも収録されていますので、サウンドメイクは非常にキャリア豊富な部分が伺えますし、そうでないとこれほど巧妙なパロディソングを作ることはできないと思われます。しかし、やはり彼らの真骨頂はこのなりふり構わずパロディに持っていこうとするやり過ぎ感なので、その好きな音楽を楽しむ姿勢をいつまでも忘れないでいて欲しいと願っています。


188位:「チチキトク スグカエレ」 上坂すみれ

    (2018:平成30年)
    (アルバム「ノーフューチャーバカンス」収録)
     作詞・作曲・編曲:掟ポルシェ


      vocal:上坂すみれ

      all instruments:掟ポルシェ

画像14

 80年代大好き、ニューウェーブ大好き、ロシア大好き、サブカル大好きな人気声優・上坂すみれの歌手デビューは2013年、畑亜貴&神前暁の黄金コンビによる「七つの海よりキミの海」でした。ロシア風味、そしてゲルニカ風味が混在したこのデビュー曲で早くもニューウェーブな方向性を確立させた上坂は、その後も松武秀樹、アーバンギャルド、NARASAKI、パール兄弟、TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUNDらテクノポップ・ニューウェーブ人脈を惜しげもなく起用して、声優シンガーの中でも独自路線を歩んでまいりました。そしてリリースされた2018年の3rdアルバム「ノーフューチャーバカンス」では、遂に最終兵器が起用されることになります。
 本作収録曲の「チチキトク スグカエレ」は、あの説教テクノユニット・ロマンポルシェ。のフロントマン。掟ポルシェが提供した楽曲です。日本中どこを探しても掟ポルシェが作詞作曲編曲を全て手掛けた楽曲を歌えるのは上坂しかあり得ませんし、上坂(のアルバム制作スタッフ)が掟を起用するというのも予想の範疇ではありましたが、いざその提供曲を聞いてみると、全くアイドル声優だからという忖度も何もなくロマンポルシェ。が歌うような楽曲をそのまま持ってきたキテレツさで、上坂もその狂気に全く戸惑うことなく堂々と演じ切っているという、そのあたりは両者のプライドのぶつかり合いと言いますか、プロフェッショナルな仕事ぶりに感心させられます。上坂のイメージとしては完全に戸川純のオマージュといったところでしょうが、この楽曲の直線的なベースラインや間が抜けたようなメロディ、ナンセンスなのに切実感溢れる世界観、全てが歪んだ独特のエレポップワールドには、対抗手段として戸川純しかいないのは自明の理ですので、パフォーマンスとしては正解であったと思われます。

【聴きどころその1】
 これぞ男道の潔い直球シンセベース。16音符がそのまま続くミニマル感覚のマジックが堪能できます。どうしてもベースラインは弄りたくなるものですが、そこは橋を渡らない男である掟ポルシェの真骨頂です。どこまでも直線的なノリを追求しています。
【聴きどころその2】
 声優ならではの上坂の変幻自在のボーカル。声優ソングは声の多様性をフル活用できるからであり、その点において通常のシンガーが歌う楽曲よりも興味深いものに仕上がる場合が多いと個人的には感じています。この楽曲でもロリ声、デス声、断末魔の声が交錯するフリーダムさを楽しめます。まあやってることは戸川純なんですが・・。


187位:「SUMMERTIME IN THE PLACE」 Instant Cytron

    (1996:平成8年)
    (シングル「SUMMERTIME IN THE PLACE」収録)
     作詞:片岡知子 作曲:長瀬五郎 編曲:Instant Cytron
     弦編曲:片岡知子・中山努


      vocal・chorus:片岡知子
      electric guitars・acoustic guitars・chorus:長瀬五郎

      bass:沖山優司
      drums:夏秋冬春
      clavinet・organ・Rhodes:中山努
      percussions:里村美和
      strings:桑野グループ
      chorus:高橋ジャッキー香代子
      chorus:Suzie Kim

画像15

 地元福岡において古今東西のポップミュージックに精通したトリオバンドとして活動していたInstant Cytron(インスタント・シトロン)は、「BABY YOU'RE LOVE」「CYTRON'S FANCY MANIFESTO」の2枚のミニアルバムを残してメジャーへ進出、上京を前にベース&プログラミングの松尾宗能が脱退、片岡知子長瀬五郎のデュオスタイルとなった彼らは、1995年に名盤「Change This World」をリリース。セルフプロデュースのメジャーデビューアルバムにしてその新人らしからぬ抜群のポップセンスで高い評価を得た彼らでしたが、このポップセンスはレコード会社にさらなるわかりやすさを追求した歌謡POPS路線を強いられることになります。1996年に入るとゆうちょのキャンペーンソングとなったシングル「にじますの街角」がリリースされますが、恐らくその時点でレコード会社とInstant Cytronとの音楽的な方向性に対する軋みが激しくなってきたように思われます。そのような中、同年夏にリリースされたシングルがこの「SUMMERTIME IN THE PLACE」です。
 サマーソングなのに涼やかなストリングスサウンドがフィーチャーされている実にInstant Cytronらしい楽曲は、「にじますの街角」よりはやや「Change This World」寄りにサウンドの質感を戻したような印象です。全体的に高音が少ないので、片岡のキュートなウィスパーボーカルもよく聴き取れるためPOPSとしてのキャッチー性を維持しており、完成度は高いものがあります。しかし、そのポップ感覚は非凡なものが感じられるものの、彼らが本当にやりたかった音楽性は、翌年にリリースされるチップマンクス大フィーチャーのミニアルバム「Cheerful Monsters」で明らかになります。こうなるともう彼らもやりたい音楽しかできなくなりますので、1998年以降は活動の場をインディーズに移していくことになるわけです。

【聴きどころその1】
 左右の耳から聴こえてくるギターとクラビネットフレーズの競演。細かく異なったフレーズが左右別々に飛び出してくるため最初は耳がこそばゆくて仕方がありません。音処理がガリッとした感触のため、その粒立ちが耳に影響するのかもしれません。
【聴きどころその2】
 リズムが強調された後半からの爽やかな中山努のオルガンソロ。サマーソングなのにベタつかない感じは、Instant Cytronのキャラクターにもよる部分が大きいかもしれませんが、このオルガンフレーズが入ってくることによって、より避暑地感が増すといいますか、真夏の日曜の昼下がり感が湧き出てくるような、そんな癒し空間を演出してくれます。


186位:「処女懐胎、あるいは白骨塔より少女達は飛翔する」 ALI PROJECT 

    (2009:平成21年)
    (アルバム「Poison」収録)
     作詞:宝野アリカ 作曲・編曲:片倉三起也

      vocal:宝野アリカ
      all instruments:片倉三起也

画像16

 まさか1988年にアルバム「幻想庭園」をインディーズでリリースした際に、現在のALI PRJECTのカリスマ的人気を予想し得たでしょうか? 宝野アリカ片倉三起也の打ち込みユニットであった蟻プロジェクトは、戸川純のゲルニカと比較されるタイプのカルト・ポップグループと認識されていました。その後4年の歳月を要しながら「月下の一群」でメジャーデビューを果たすものの、中世ヨーロッパと大正浪漫が入り交じるクラシカルエレポップ路線は、独自の個性は感じられたものの特に一般的に受け入れられることもなく90年代は雌伏の時を過ごすことになります。そして彼らが本格化するのは2001年のガンアクションアニメ「ノワール」の主題歌「コッペリアの柩」からです。持ち前のクラシカルな素養をゴシックに落とし込んだアリプロサウンドを開花させた彼らは、2005年のアンティークドールアニメ「ローゼンメイデントロイメント」の主題歌「聖少女領域」で大ブレイク、その後はアニメソングとオリジナルアニメの両輪で、所属レーベルを問わない自由な活動スタイルで、現在まで安定した音源リリースを続ける息の長いグループとして音楽界に今もなお君臨しています。
 そんなALI PROJECTの代表作というほどでもないのですが、彼らはゴシカルなイメージが強いシングルと本来の多彩な顔を持つオリジナルアルバムとは全く別物として捉えることのできるタイプで、アルバムによってはかなりエレクトリックに寄った作品も生み出されます。2009年リリースの「Poison」はどこかスッキリしたジャケットデザインからも推測されるように、刺激的なシンセサウンドが使用されたエレクトロ寄りのアルバムで、その収録曲の中でもタイトル・楽曲共にインパクトを与えたのがこの「処女懐胎、あるいは白骨塔より少女達は飛翔する」です。ざらざらしたストリングスに歪んだギターとスクラッチが絡むマシナリーとクラシカルが同居したアリプロらしいナンバーですが、流麗なストリングスを大袈裟に展開するサビのあたりは初期の彼らを彷彿とさせるスタイリッシュさも兼ね備えており、彼らが長年持ち合わせてきたポテンシャルを見事に発揮していると思わせる典型的な楽曲に仕上げています。

【聴きどころその1】
 わざと汚して歪ませたようなザラつきのあるLo-Fiストリングス(サンプリング音源)。不協和音を取り入れながらギミックとして機能させるチャレンジ精神は若い頃から全く衰えることがありません。
【聴きどころその2】
 ストリングスと共に棘のあるサウンドデザインを演出するスクラッチおよびサンプリングボイス。およそ不釣り合いともいえるヒップホップ要素まで盛り込んだギミックを散りばめる飽くなき探究心と、決してサウンドメイクの芯を見失うことのない安定感が、ALI PROJECTをここまでのカリスマポジションに到達させた要因であると思われます。


185位:「sixteen's blue skyscape」 結城比呂

    (1996:平成8年)
    (イメージアルバム「ハイスクール・オーラバスターオリジナルアルバム
     M-X 16’s」収録)
     作詞:若木未生 作曲・編曲:本田恭之


      vocal:結城比呂

      synthesizers・programming:本田恭之

画像17

 GRASS VALLEYの唯一無二のサウンドデザイナー&シンセシストであった本田恭之(現:本田海月)は、GRASS VALLEY解散後はしばらくソロワークに転向し、聖飢魔IIのギタリスト・エース清水や角川春樹の娘・Kei-Teeのアルバムプロデュース、KEN蘭宮(山本寛太郎)とのユニットOPCELLとしての活動など、地味ながらも質の高い活動を続けていましたが、そんな本田の90年代の大仕事といえば、若木未生原作のファンタジーライトノベル「ハイスクール・オーラバスター」シリーズのイメージアルバムのプロデュースでしょう。1993年から2枚のアルバムを手掛け、山本寛太郎や桐生千弘(ex.VELVET PΛW)をボーカルに迎えることもありましたが、本田自身がボーカルを担当する楽曲も多く収録されるなど、持ち前の本田サウンドで、オーラバスターの世界観を情景豊かに描写しつつ、楽曲面においても新境地をアピールする堅実かつ高品質な仕事ぶりでした。この仕事は近年まで注目されることはほとんどなく、現在でもオブスキュアかつバレアリックなマニアな視点からしか評価されていませんが、原作者の若木未生にとっては非常に信頼が置かれたようで、引き続きこのサウンドプロジェクトの中心に本田が関わっていくことになります。
 今回取り上げる楽曲「sixteen's blue skyscape」は、ドラマCDで主人公・崎谷亮介の声優を務めた結城比呂(現:優希比呂)が歌う爽やかなポップチューンです。この楽曲が収録された4枚目のイメージアルバム「ハイスクール・オーラバスターオリジナルアルバム M-X 16’s」には、里見十九郎役の声優・岩永哲哉が歌う「(on the verge of)EDEN」という、初期GRASS VALLEYを想起させるこれぞ本田恭之ともいえる名曲もありますが、「sixteen's blue skyscape」は結城の個性である少年のようなナチュラルな声質と、青春の煌びやかさを表現したかのようなノスタルジーを感じさせるシンセサウンドがマッチした、本田恭之独特のサウンドデザインに対する美意識が感じられるハイクオリティな楽曲に仕上がっています。

【聴きどころその1】
 底辺を支えるコクのある音色のベース。跳ねるように軽快なリズムに絡んでくる這いずるような低音が、全体的に軽めで煌びやかなサウンドを下支えしています。
【聴きどころその2】
 相変わらずの多彩な表現力を備えたシンセワーク。淡々と刻み左右から聞こえる2種類のチープなバッキング、リバーブたっぷりのベル音色とギター風音色、ギターライクな表現でテクニックを見せつける、本田十八番の圧巻のシンセソロ・・こうした叙情的な風景をサウンドとして昇華する世界でも類を見ないセンスは、いまだに再評価されていないユートピアと言えるでしょう。


184位:「かどわかされて」 キリンジ

    (1998:平成10年)
    (アルバム「ペイパードライヴァーズミュージック」収録)
     作詞・作曲:堀込高樹 編曲:冨田恵一

      vocals:堀込泰行
      electric guitar・vocals:堀込高樹

      electric bass:渡辺等
      drums:鈴木達也
      shaker・triangle:山口とも
      instruments・treatments:冨田恵一

画像18

 今や日本を代表するKING OF POPなグループ・KIRINJI(キリンジ)。近年はバンドスタイルで数々の名盤をリリースし続けていますが、ご存知の通り元はといえば堀込高樹堀込泰行の兄弟デュオで、結成は1996年。1997年にインディーズレーベル・Natural Foundationより「キリンジ」「冬のオルカ」の2枚のマキシシングルをリリース、さらにオムニバス「PRO-FILE of 11 Producers」に名曲「乳房の勾配」で参加、デビュー当初より3人目のメンバーのごとくアレンジャーとしてタッグを組む冨田恵一の抜群の構成力と堀込兄弟が生来持ち合わせている複雑かつ朴訥なポップセンスが高い評価を受けると、翌1998年にワーナーミュージックと契約、1stフルアルバム「ペイパードライヴァーズミュージック」が制作されることになります。
 インディーズ時代の「風を撃て」「野良の虹」「冬のオルカ」といったシングルクラスの楽曲に加え、「雨を見くびるな」「ニュータウン」といった名曲の誉れ高いシティポップチューンを数多く収録しているこのアルバムの中でも、歌詞・メロディ・アレンジメント共に抜群の完成度とクオリティを誇っているのが、ラストを飾るアーバンバラード「かどわかされて」です。渋みを感じさせるオーケストレーションからの落ち着きがあり流れるようなメロディラインは絶品で、これぞ彼らのその後の成功を予感させた名曲中の名曲。「耳をうずめて」「エイリアンズ」「千年紀末に降る雪は」「Drifter」「愛のCoda」「ブルーバード」・・・数々の名バラードをキリンジがそれから次々と生み出していきますが、個人的には彼らのバラード最高傑作は「かどわかされて」から更新されることは現在もなおありません。

【聴きどころその1】
 冨田恵一のプログラミングによる精密無比なオーケストレーション。特に1周目後の間奏のエレピソロのバッキングは見事というほかありません。
【聴きどころその2】
 面白いメロディのBメロからスーッと自然に雪崩れ込むサビへの展開の美しさ。そして後半の「名誉市民集う」からの「飴色ショーウインドーの灯が暗い顔を照らすよ」の意表を突くフレーズ。しかしそこに突拍子のなさは感じられず、いたって必然的に、最適解として存在しているメロディラインに、POPS界の未来を感じさせられたことが思い出されます。


183位:「PRIVATE LOVER (DANCEABLE MIX)」 川村康一

    (1989:平成元年)
    (アルバム「HAVE A GOOD-TIME」収録)
     作詞・作曲:川村康一 編曲:岩崎文紀
     コーラス編曲:川村康一・岩崎文紀


      vocals・chorus:川村康一

      electric guitar・keyboards:岩崎文紀
      bass:美久月千晴
      drums:島村英二
      synthesizer operate:有馬知章
      computer programming・synthesizer operate:鈴木”TARO”直樹
      remix engineer:内沼映二

画像19

 80年代中盤からバックバンドSunrise Partyを引き連れてライブ活動を続けてきたシンガーソングライター川村康一が、メジャーデビューを果たしたのは既に昭和から平成へと時代が移り変わった1989年でした。いわゆる遅咲きと言ってもよいデビューの川村ですが、作詞作曲をしっかりこなした上でよく伸びる歌唱力も備えている実力派シンガーでもある彼の楽曲は、まさに遅れてきたシティポップ、バブルの匂いを感じさせる洒落たリゾートポップといったところでしょうか。サウンドメイクとしては、シティポップ界の名コンポーザー佐藤博をかなり意識した打ち込みスタイルです。1stアルバム「HAVE A GOOD-TIME」はジャケットデザインやSummer・Mermaid・砂浜・・といった収録曲のタイトルに使われる単語から見ても理解できるようにサマーリゾート一直線の音楽性ですが、サウンド自体はかなりエレクトリック度の高く、それでいてキャッチー性を伴うメロディ重視のポップチューンばかりでした。既に派手なサウンドに飽きが来始めていた1989年にあっても、まだまだド派手なエレクトロで勝負する、よい意味での時代錯誤感覚溢れるサウンドメイクは、現在のシティポップ再評価の時代だからこそ必要とされている音楽性なのかもしれません。
 そんなサマーリゾートポップ全開のアルバムの中で取り上げるのは「PRIVATE LOVER (DANCEABLE MIX)」です。代表曲の1つ「PRIVATE LOVER」の12インチシングルカット版と言ってもよい、その名の通りダンサブルなremixですが、リズムトラックがこれでもかと強調され、ひんやりとしたデジタルシンセが過剰に装飾される、これぞデジタルファンクシティポップの金字塔です。アレンジを担当したのは80年代の隠れたリゾートポップバンド岩崎元是 & WINDYのフロントマンにして現在はアニメ界隈の劇伴作曲家としても活躍中の岩崎元是、のお兄さんの岩崎文紀です。兄弟共にリゾートポップに縁がある(アニソン劇伴も多数手掛けているので兄弟かなり似た者同士)ということですが、どちらかというと兄の方はZOOの名曲「CHOO CHOO TRAIN」のアレンジを手がけるなど、プログラミングアレンジに長けた印象です。この楽曲でも佐藤博の影響は大きいと言えるものの、巧みなプログラミングと生演奏との融合がしっかりと図られており、プロフェッショナルな仕事を果たしています。

【聴きどころその1】
 スネアの音色を時折変更しながらもダンスチューンとして強調されたビッグドラミング。美久月千晴のスラップベースと岩崎文紀のカッティングが加わってキレ抜群のデジタルファンクに圧倒されます。ウ〜ン、シェキボデーッ!
【聴きどころその2】
 涼しげなシンセパッドにキラキラして輪郭のはっきりしたデジタルシンセの嵐。特に突き刺さるようなシンセブラスがせわしなく動き回ります。remixならでは長い間奏ではシンセパッドによる心地良いコードワークがフィーチャーされ、リゾート感たっぷりです。手法は佐藤博の受け売りですが・・。


182位:「高速戦隊ターボレンジャー」 佐藤健太

    (1989:平成元年)
    (シングル「高速戦隊ターボレンジャー」収録)
     作詞:松本一起 作曲:井上ヨシマサ 編曲:米光亮


      vocal:佐藤健太

      all instruments:米光亮

高速戦隊ターボレンジャー

 史上初の現役高校生戦隊であった1989年〜1990年放映の特撮ドラマ・高速戦隊ターボレンジャー。ターボという単語とこれまでの戦隊モノにはない若々しさを前面に押し出すかのような溌剌さが売りのこの戦隊なので、当然音楽面でも若さ全開ということになります。オープニングテーマの「高速戦隊ターボレンジャー」を歌うのは主人公・レッドターボ、炎力役の佐藤健太です。佐藤はもともと歌手志望ということで、全く違和感なく、しかも戦隊モノらしく熱い歌唱で本職の歌手ではないものの主題歌という重責を果たしています。なお、エンディングテーマの「青春ジグザグロード」も、最終回エンディングの「DANCEときめく心」も一貫して佐藤が自ら歌っていることからも、彼の歌唱力が信頼されていることの証となっています。現に佐藤は3年後に「恐竜戦隊ジュウレンジャー」でも主題歌を任せられるなど、特撮系役者としては異例の抜擢を受けることになります。
 さて、その若さゆえのしっちゃかめっちゃか感がサウンドに表れているこのオープニングテーマですが、作曲は元コズミック・インベンションで当時は新進の作曲家として売り出し中であった井上ヨシマサを起用、編曲は当時期待のエレクトリック系アレンジャーとして頭角を表していた米光亮が任されるなど、アイドルソングと言わんばかりの布陣で、のっけからの高速ビートを軸にまさに若さ全開のスピード感溢れる熱い特撮ソングに仕上がっています。楽曲全体の隙のないメロディ展開は数ある特撮ソングの中でも1、2を争うキャッチー性を備えており、今もなお特撮マニアの間で愛されている楽曲の1つとして語られています。

【聴きどころその1】
 米光亮お得意の直線的なシンセベースとタムを多用したエレドラの強烈かつド派手なリズムトラック。そこにイントロのブラスが忙しなさを助長するため独特のスピード感が生まれています。
【聴きどころその2】
 Bメロからサビに入る前、そして最後の決め台詞までのタメが素晴らしい。王道の特撮ソングの醍醐味を十分に分析した上での井上ヨシマサの非凡なメロディメイクがここに発揮されています。


181位:「仕事場はタブー」 平沢進

    (1989:平成元年)
    (アルバム「時空の水」収録)
     作詞・作曲・編曲:平沢進

      vocal・guitars・programming:平沢進

      chorus:戸川純

画像21

 中野照夫(現:中野テルヲ)・ことぶき光・田井中貞利をメンバーとしてアルバム「モンスター」の制作を開始するも、諸々の事情でリリースが頓挫し、1988年にP-MODELとしての活動を凍結した平沢進は、翌年より早速ソロ活動に移行します。ニューウェーブなバンドスタイルを貫いたP-MODEL時代と打って変わって平沢がソロ活動開始に際して目指したのは、南米民謡やカントリーの影響が色濃い生演奏と、当時音楽界を席巻しつつあったシンセサイザー・KORG M1によるプログラミングを中心としたサウンドでした。KORG M1は生楽器のシミュレートを格段に進化させた非常にリアルなPCM音源を採用したシンセサイザーで、平沢の1stアルバム「時空の水」ではそのM1が大活躍、しかしPCM音源なのでいわゆるシンセらしいサウンドよりもゲストプレイヤーの演奏を含めた生楽器風の音色がメインになり、アコースティックギターや民謡ボイスもフィーチャーされ、現在の純度の高いシンセサイザー中心のエレクトリックサウンドとは一線を画した作風となっています。
 お蔵入りとなった「モンスター」に収録されるはずだった楽曲も多数救出されたこの「時空の水」は、どれもが含蓄のあるサウンド面でも濃度が感じられる楽曲ばかりが収録されていますが、その中でも5曲目の「仕事場はタブー」の存在感は群を抜いています。ギターでヨーデルを奏でてしまうという発想もさることながら、その奏法に合わせて戸川純のあの高音ボイスを重ねてしまうことによって、おどろおどろしさに拍車がかかる奇想天外なストレンジソングです。もともとがプログレ出身の平沢ということで、ギター嫌いとは言ってもギターテクニックについては言うまでもなく抜きんでたものがありますが、飽くなきフレーズへの探究心がモロに表面化したこの楽曲は、その後のどうしてもキテレツなギターフレーズを弾かなければ気が済まない(もちろんRobert Fripp風の美しいフレーズもお手のものですが)平沢のその後のギタープレイヤーとしての方向性を暗示したという点で、重要であったと言えるでしょう。

【聴きどころその1】
 何と言っても不思議なフレーズを連発するギタープレイ。ヨーデル奏法といわれた千切れそうなフレーズは衝撃的でした。それでいて楽曲はしっかり歌モノとしてポップに仕上げてくるところに、平沢進のひねくれた優しさが感じられます。
【聴きどころその2】
 間奏32小節のシンセブラスによるソロフレーズ。じわじわと低音のフレーズから始まり徐々に高音へと上がってくることが期待できる16小節までの譜割り、そして17小節からワクワク感が最高潮に達する高音フレーズで盛り上がりつつも、最後の8小節はまた元に終息するという、この展開は個人的に心躍るフレーズでした。


 というような感じで、まずは200位から181位でした。どうでしょう、ランキングとかもう関係ありませんよね。
 こういうのがあと9回残しているというのが天国なのか地獄なのかわかりませんが、今回はまずはこの辺で。次回は161位までです。お楽しみに。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?