MEANINGFUL CITY MAGAZINE vol.2/Generation-Y/1取材全文記事

イントロダクション

大谷 今日はお忙しい中ありがとうございます。たぶんみなさんよくわからずに収集されている感じだと思うので(笑)、説明しますね。これが、ミーニングフルシティ・マガジンの第1号なのですが、その第2号の中の記事のひとつの取材になります。

ミーニングフルシティというプロジェクトについて、改めて少し説明をします。森ビルで働いている友人の山崎さんという人がいるんですが、もともとは彼と2人で、イベントで会ったときに色々話して意気投合して。自分たちの「企画」や「デザイン」という視点では、何かを手掛けるとき、ひとつのビジュアルとか、ひとつの場所とか、スケールを上げていくと、「街」くらいのサイズになった瞬間に、急に誰がどうやってつくるのがかが、想像が及ばなくなってしまうことに気付いたんです。一方、都市計画とかを作ってる人たちからしたら、街の中で起きているリアルな営みやそれらをつくっている人たちの顔は見えていない。なんでそこが繋がってないんだろうね?みたいなところから話をするようになって、それをプロジェクト化して始まったのがミーニングフルシティです。

活動としては、イベントやったりとか、一緒に会ってディスカッションしたりを、仲間を増やしながらやっていたんですけれども、何か形に残るものとしてはじめてやったのが、ミーニングシティ・マガジンの第1号でした。第1号は、テーマだけ決めて、それぞれのメンバーが本当に自由につくってました。「コミュニティ」という、あえてキャッチーなテーマにして、都市について普段考えない人たちにも興味を持ってもらえそうなものにして。それまでかなり長い時間色々な議論をずっとしてきていたので、あんまり細かく編集方針決めずに、もうみんなが自由に取材して好き勝手コンテンツ化したものを、最後ギュッとまとめて1冊にした、という感じでした。

第1号が、全国のインデペンデント系の本屋さんとか含めて、想像以上に色々な本屋さんで置いてもらえて、わりと多くの人が知ってくれたこともあり、最近だと都市系の新書とかで引用されていたりもします。また、最近ではデベロッパー側からのプロジェクトの相談とかもあります、話聞かせてくださいみたいな。デベロッパーからの相談なんだけど、こっち側にもデベロッパーもいるし、うち(301)みたいなデザインや飲食をやっている人たちもいるみたいな。謎の集団的な感じになっています。坂本さんは第1号のときはまだ入ってなかったのですが、第1号を色々とまわりの人たちにも見せてくれていたらしくて、第2号から自分が引き込んで、ジョインしてもらったという流れがあったりします。
 
今回、第2号のテーマは「ジェネレーション」なのですが、このテーマ自体に実はそこまで深い意味はなくて。前回のテーマは「コミュニティ」だったのですが、それは都市の話らしからぬ入口をつくりたかった。「ジェネレーション」というとみんなマーケティング用語的に最近、Z世代がどうのみたいな話が好きですよね。そういう、「ミレニアルズ」とか「Z世代」とか、みんな好きな切り口を入口にしながら、今回はX、Y、Z、αというジェネレーションごとのチームを編成してやっています。この2人(大谷と坂本)のチームがY世代、いわゆるミレニアル世代なんですが、年齢でいうと20後半ぐらいから40前半くらいと定義されています。今回僕らのチームは、その世代の方々にインタビューさせてもらっています。

どういうコンテンツをつくるのかは各世代で自由にしていて、この2人で考えたやり方というのが、ただ誰かをインタビューするというだけではなく、普段から建物をつくるとか、街に関与せざるを得ないような仕事をしている人たちと、僕らがミーニングフルと感じられる場を実際につくり、実践している人たちとのセッション、というパッケージでやっていこうという話になりました。

 3割ぐらいわかりました(笑)難しかったので、ちょっと。

大谷 自分との関係も軽くみなさんにご紹介すると、梁さんはここのエアビルディングという場所をやられていて、猿丸さんと同じぐらいのタイミングではじめて会ったんですよね。一緒にご飯食べたときに、ここにも来て。

 そうですそうです。

大谷 今は、エアビルディングの事業やブランドの整理みたいな部分で関わらせてもらっているところなので、最近はエアビルの話をひたすらしている、という関係です。

金塚 ここ、ずっと気になってなってたんですよね。

大谷 本当ですか?

金塚 さすがだなと思いました、大谷さんのコーディネート力。

 そこ出してくるか、みたいなことですよね?

金塚 そうそうそう。ずっとコンタクトを取りたかった人だった。

 僕そんなこと言われ慣れてないです(笑)猿丸君はそういうの言われ慣れてますけど、僕そういうの言われてないので、すげえ嬉しいです。ちなみにエアビルと、あと不動産業を、彼女(高田さん)と2人で仲介業もやっていて。その両方をひとつの事業として見たときの、全体のコンサルと、WEBサイトも大谷さんにやってもらっていて。

大谷 UDSのお2人は、今一緒に場の立ち上げのプロジェクトを複数やっています。

 一緒に街づくりをやっているということですね。

大谷 街をつくっているかどうかはわからないですが…街をつくるかどうかは、たぶん歴史が決めることかと。

 30%しかわからないです(笑)

大谷 金塚さんは自分でも事業を立ち上げられていて。簡単に、どんな事業か

金塚 まさにこの施設みたいな感じの、あるときは事務所で、あるときはサードプレイスでみたいな、そういうスタイルを普及させたいなと思って。タイムシェアプラットフォームって呼んでるんですけど。そういう「自宅兼○○」とか、「飲食店兼○○」みたいな感じの中でも、ちょっとかっこいいやつだけをセレクトしています。

 そのプラットフォームをやってらっしゃると。WEB上で?

金塚 そうです。物件を持って貸すというのはやってないんですけど。それでここ、結構ベンチマークしてました。すごい良いなと。

 エアビルはホテルとして泊まれもするんですけど、宿泊業の許可を取れなかったので。基本的にアーティストに泊まってもらって、アート作品を対価として置いていってもらってます。だからお金はもらえない。

金塚 おもしろいですね。

 ありがとうございます。実は、最近驚いたことがあって。エンダースキーマっていうブランドあるじゃないですか。蔵前にオフィスを構えていて、その1階で月1回くらいでアーティストに場所を貸して、対価としてなにか作品を置いていってもらうみたいなことを今年から始めたんですよ、お金じゃない経済みたいな感じで。僕も同じことやってたんですけど、発表力や影響力が違うと、こんなにも評価が違うのかと。「すごいかっこいい」「そんな発想なかった」みたいに言われて。いやエアビルは3年前からやってたけど、と思いながら唇を噛んでました。すいません、話が逸れました。じゃあ、UDSでも働きながら自分の事業を?

金塚 そうです。

 UDSって副業は全然大丈夫なんですか?

金塚 初かもしれないですね。

 公式に。それは場所関係でシナジーがあるから良い?

金塚 そうですね。デメリットないですよねっていうことで。

 UDSの中では、特殊な動き方をしていると。

金塚 フリーランスみたいな感じになってます。UDSでやっているのは、(tefu)っていうブランドで、下北と上原に場所があって。下北が駅直結のところで、飲食の機能も混ざってるような場所なんですけど。

 下北は、ボーナストラックと(tefu)のあるところが、二大勢力みたいな感じですかね。

金塚 西側だとそんな感じかもしれない、商業施設としては。

 僕も代沢に住んでたんですけど、ああいうふうになるっていうイメージがなかったので、すごいなって思います。本当にごちゃごちゃした駅前やストリートと、そこから10分歩くと逆に端正な住宅街で、すごい住みやすかったんです。あと音楽やってたので、下北はバンドマンの聖地というイメージだったので、薄汚れててこそ、みたいなところがあったんですけど。ああやって大きな建物できて、人がワーって、活気があるのを見ると、なんかいいなって思います。特にこっちの日本橋側からすると羨ましさがありますよね。すいません、関係ない話ばっかりしちゃって。

大谷 いえいえ。それが一応バックグラウンドというか、あと自分との関係ですね。今回、梁さんと猿丸さんにお話聞けたら良いかなと思っていたのは、ゴリゴリカルチャーの人たちじゃないですか。最初にボーナストラックの小野さんと話しんですけど、「仕組みの人」だなってすごい思い。なので、2組目ではかなりリアリティに近いところのカルチャーを考えているチームで話せたら面白いんじゃないかと思い、全然毛色を変えたメンバーにしてみた、というのが背景にあります。

 ちなみに僕と猿丸君は、同じ時期にニューヨークに住んでまして、彼がPIZZA SLICEっていうニューヨークスタイルのピザのお店やってるんですけど。それをオープンするために修行をしてるときに、仕事終わりで一緒に遊んでたりとかよくしていて。その流れで今も続いてるっていう感じの関係でございます。

川口 UDSの川口です。猿丸さん、以前一度自分が倉庫をご案内したの覚えてますか?

猿丸 はいはい。

 覚えてない顔ですね。

猿丸 お久しぶりです、その節はどうも。

川口 お久しぶりです。

“見て5分ぐらいで「借ります」って言ったんです”

 エアビルのことを少し紹介というか、何をしようとしている場所なのか話してもいいですか、2分半で。もともとは、さっき言った通りニューヨークで遊んでまして。猿丸君が帰ってお店を始めたときに、僕が結婚して、子供ができたんですよね。そのときは、たまたまニューヨークで一緒にイベントやった中国人がやっている、イベントスペースみたいな場所をリノベーションして、そこで遊びながら稼いでました。昼は僕が営業して、夜はオーナーがやる、みたいな感じでやってたんですけど、なんかバチンと切られちゃって。いいものができた途端、「お前じゃなくても代わりはいるから」って。お金ないからどうしようってなったときに、今から妻のお父さんにも挨拶行くのに、ちょっとでもお金稼がないと申し訳ないという気持ちから、部屋貸したらお金もらえるサービスがあったなと思ってAirbnbを見つけて。

それが、たまたまうまくいって、ニューヨークでAirbnbを何回かやったんですよ、2013年ぐらい。ニューヨークってエリアごとに結構カラーが違うじゃないですか。SOHOはファッション系とか、もっと上のほうは大学教授とか、そういうカラーがあるので、部屋をつくるときに、ペルソナみたいな人を設定して、32歳、WEBデザイナー、ジェニファー、インSOHOみたいな、なんとなくのストーリーを考えて、その子が住んでそうな部屋をつくる、みたいなことをやってたんですよ。そうすると、自分の好みを超えてチョイスできたりするのでいいなと思って。

そんなことをやってて、日本に戻るってなったときに、東京でもちょっとやろうかなと思って。当時はAirbnbがまだちょっと日本ではグレーだったんですけど。それでたまたま、この物件良いなと思って問い合わせた物件を担当していたたのが彼女(高田さん)で、そのときは不動産屋の仕事をちゃんとやってた感じです。

高田 R-STOTEっていう、もとIDEEがやっていたWEBメインの不動産部隊がありまして。そこに勤めていて。基本的に、渋谷とか代官山あたりの物件を主に担当してました。

 一緒にAirbnbを何個かやることになって、結構調子よかったんだですけど。楽しかったし、いろんな人や海外のゲストと話して、一緒にご飯食べたりして。でもやっぱりグレーだったので、ちゃんとした形でやりたいと思って、ビルを探して、音楽コンセプトの宿泊施設みたいのをやろうと思ってたんです。それで探し回っていたら、たまたまここ(エアビル)が見つかって。でも、なんやかんやあった結果、ホテルは無理でした。いろんな、許認可の問題で。

高田 ここ本当は、R-STOTEがやっていた池袋のブックアンドベッドというホステルの2つ目の候補として挙がっていて。でも、ちょっとベッド数取れなくて採算合わないから、といって私が担当することになり。その当時、こういうビルを探してホステルやりたいという人が結構いて。

 ブームでしたもんね、7年前。

高田 問い合わせもらっていた5名に連絡を送って、一番最初に返事が返ってきたのが梁さんで。翌日に見に来たのかな。見て5分ぐらいで「借ります」って言ったんです。

 そうそう。本当に単純に、このビルに恋に落ちちゃって。ホテルができないというので、借りようか借りないかすごい迷ったんですけど、ホテルしかお金のつくり方がわからなかったので。でもどうしても借りたかったので、自分がニューヨークから帰る前にちょっと見てきた、アーティストが滞在しながらオフィスを持ったりするようなアーティストインレジデンスの、結構大きなのがニューヨークにあって。そういうのは、めちゃくちゃ売れてるアーティストで、公的なお金でやったりするものなんですけど、それを都会の真ん中で、スケールは小さいけども、個人がやったら面白いんじゃないか、と思って。ここが名刺代わりになって、そこからプロデュース業でもやってみるか、みたいな大きなことを考えてやり始めて。

アーティストインレジデンス(Artsit In Residence)というコンセプトでエア(A.I.R)ビルディングということなんですけど、だからここはアーティストが泊まる部屋とか、シャワーとかもあるんですけど、それをやりながら1階にはカフェがあって、地下にはライブができる音楽スタジオもあって、みたいなことをやってます。アーティストには、さっき言ったみたいにお金はもらってないので、作品でもらっていて。逆にお金の面は、いわゆる飲食店とか、イベント貸しとか、撮影とか。さっき言ったみたいにマルチな利用をしてなんとか食いつないでいるという状況です。自分がやってることは好きなんですけど、対外的にしっかりと、一行で言えたりがなかなかできないので、今も結構時間かかっちゃったみたいに。それで、伝え方の面で大谷さんに力を借りて、ブランディングをやってもらっているという。

高田 なんか迷子になって。

 そうなんです。コロナ前まで迷子になってた。

高田 コロナ中も迷子でしたね。いったい何者なんだ、私たちはっていう。

 猿丸君の場合は本当に、すごい強いニューヨークスタイルのピザっていう武器があって。それってニューヨークで一緒に遊んでたころから感じてたんですよ。「帰ったらニューヨークスタイルのピザを東京でやります」というと、まわりの人がすごい応援してくれて。僕はというと、帰ったら何かやります、なんかアーティストっぽいことやります、みたいな感じで。そもそも自分は音楽をやりにニューヨークに行ったんですけど、それが夢破れちゃったので、そんな感情がモヤモヤしてる。それをずっと今も引きずってる感じなんですけど。

高田 デビューするんですよね?

 デビューはします。43で。そんな感じでやってまして。その結果、アーティストとかも、共感してくれてる人はすごい深く共感してくれるので、コミュニティがちょっとずつできてきたかなっていうぐらいなところです、まだ。5年以内に、エアロスミスを呼ぶっていうのを目指してます。すいません、以上です。

“あまり上の世代の色がついてないところを最初に開拓して、若い世代が集まってくる”

大谷 ちなみに猿丸さんも、もちろんPIZZA SLICEの展開はみんな知っていると思うんですけど、今どういうことを見ていて、何をしようとしているのかみたいなこと、軽く聞いてみたいです。

猿丸 PIZZA SLICEは引き続き、やれるところがあれば、急いではいないですけど、これからもお店は増やしていこうとは思ってます。ピザ以外に新たに始めるビジネスで、ヴィーガンのチャイニーズとか、あとカフェとか、今年は新しいものをやっていこうと思っていて、2、3店進めています。今まで僕がまったく行かなかった場所に今店をつくっていて。未開拓の場所にすべてつくって、どうやって若い子を呼び込むかとか、ちょうど考えたりしているので、今回のテーマにすごいバッチリです。

大谷 飲食という軸でやっているのは、何故なんですか?

猿丸 本当に純粋に、僕が食べ物好きというのもあると思うんですけど、そんなに頭よくないというのが一番大きい。難しく仕組みを考えるというよりは、自分ができる範囲でやろうと。飲食で、純粋にイケてる場所に行ってるときは楽しかったなとか、みんな知らないようなお店つくれたら嬉しいなとか。新しい場所に誰よりも早く行って、ちょっとおしゃれな店があそこにできてたよ、と言うのが好きだったので、その等身大の自分でやれることってなんだろうなって考えると、やっぱり飲食しか思いつかなかったという感じです。本当はもっとかっこいい仕事がしたいんですけど、フードが一番僕にとって身近だなというか。

大谷 かっこいい仕事ってどういうイメージなんですか?

猿丸 皆さんみたいな。オフィスで仕事したいですよね。

 ネクタイ締めたことあんのやったっけ?仕事で。

猿丸 ないです。憧れますよね。

大谷 飲食店をやっていきたいというイメージなんですか?それともそういうカルチャーがある場所をつくっていきたいというイメージなんでしょうか。

猿丸 飲食しか今スキルとして持っていないので、飲食をやっていくんだろうなとは思うんですけど、場所をつくりたいというが根底にあるので、遊び場所であったり、たまる場所っていう視点ですね。お金儲けはもちろん考えないといけないんですけど、自分が若いころ路上とかコンビニの前でたまっていたので、マクドナルドみたいな感覚でもっとおしゃれな場所があったら良いなって。本当にそういう、若いころの気持ちのままで続けていて。だからたまたま飲食なだけで、そういうたまり場をつくる仕事をずっとしていたいなと思ってます。

大谷 たとえば場所をつくるときに、自分がめちゃくちゃいいなって思うひとつのクールな場所を追求していくみたいな考え方もあると思うんですけど。エアビルみたいに、この場所をひたすらハックしていくというか。でも店舗を展開していく、数を増やしていくみたいなところへの考え方ってどういうものですか?

猿丸 店舗ベースというよりは、気づいてもらうきっかけになる場所をつくる感じなので、たとえばエアビルみたいに、「三越前」って、僕たちからするとまったくチェックしてなかった場所だと思うんですけど、わざわざ三越前に降りるきっかけをつくってるじゃないですか。そういう感じです。ただ、今、堀越神社前にビルを借りたんですけど、本来借りなくても良いと思うんですよね。借りたところで、渋谷とかでオープンするより全然弱いし、めんどくさいじゃないですか、集客とか。だけど、新たなエリアというか、遊び場所をつくってあげることが、自分のやりたいことなのかなと思います。お店を増やすというよりは、渋谷ばっかりじゃ面白くないよねとか、そういう提案です、若い子に対しての。自分でそこに切り込んでいきたいというか。

 それに関してなんですけど、ニューヨークの中でいろんなところで遊んでたというのは結構影響してるのかなと思っていて。その頃って、マンハッタンからブルックリンにブームが結構移って、それを感じてたんですけど。よく2人で行ってたのが、クイーンズっていうところにあったロングアイランドシティっていう、今まであんまりイケてないとされていたエリア。そのへんのカフェを探したりとか、倉庫を見つけて、スケボー場にしたらいいんじゃないかとか、ずっとそんな話しながら歩いていたりした過去もあったので、もしかしたらそういう、ひとつのところじゃ飽きちゃうという意味では、僕と猿丸君は似てるかもしれないです。でも自分はここを掘り下げているっていうのは、ちょっと皮肉なんですけど。

猿丸 グローバルの街としては、東京ってすごいでかいんですよ。ニューヨークだとみんなが遊んでる場所って、だいたい渋谷区と新宿区が合体したぐらいの広さなので。小さいエリアなので、その中でみんな行き来したりするんですけど、東京ってこれだけ広くて、電車もこれだけ正確に人を動かす中で、やっぱり渋谷とか新宿とかだけだと、みんな心の中では「ここだけか」て感じているはず。どこへ行っても同じ街と形やし。なんか面白くないなって。外国人も、最初は楽しいと思ってても、2回目3回目東京に来たときに飽きると思うんですよね、街のつくりが。やっぱり、1時間ぐらいで鎌倉のほうも行けるし、30分ぐらいで浅草のほうも行けるしってなったときに、やっとその重い足を動かせるというか。30分かかるけど、あそこ行ってみようみたいな、そういうきっかけづくりがやっぱりやってて楽しい。

ニューヨークのとき、自分たちでブルックリンとか、マンハッタンから電車で30分掛けてわざわざピザ食べに行ったりとか。そういうことを思い出すと、渋谷の中でも、あんまり裏通りはまだみんな行ってなかったと思って。PIZZA SLICEの1号店も、駅からちょっと遠いんですけど、若い子からしたら、帰り道カップルで来てたらキスして帰れるなとか、そういうのって若いころすごい大事じゃないですか。いい場所がいっぱいあるのにもったいないなという。みんな普段通ってるけどまだあんまり知られていない路地にお店を出してとか。

大谷 まだ色がないところでやるのが面白い?

猿丸 僕たち世代は弱いと思っていて。50代がすべてをつくってしまったというか、カルチャー領域なんて、まだその世代が今も現役でいらっしゃる。でも彼らの時代によかったものが、今の僕たちの世代やさらに下の世代にとって100点ではなかったりする。渋谷も原宿も、彼らがつくったカルチャーで、今の時代にそれが合っているわけではないけど、ただあるからいるっていう感じ。でもやっぱり、あまり上の世代の色がついてないところを最初に開拓して、若い世代が集まってくる、みたいなことは夢見ている。

 原体験的にはニューヨークで、ブルックリンの工場地帯にお店ができてくるとか、そういうのを結構リアルタイムで体験しているので、それができるのだっていう実感もあるのかもしれないです。

猿丸 Z世代とみんなが言う世代の子たちって、そういう僕らが感じているような感覚がもっと強いのかなと思っていて。彼らって今、東京に居場所がない状態なんですよね。僕たちは、渋谷とか原宿に何かいろいろ理由づけて行けるんですけど、Z世代の子たちっていうのはそれがなくて。東京って昔の人がつくった街じゃん、みたいな感じで、どんどん地方に流れていったりとか、東京以外に興味を持ちだしていると思うんですけど。ただ、それはもったいないなと思っちゃうので、その世代に刺さることは何かって考えると、僕たちがニューヨークで思ったように、新しい街つくれるんだよっていう希望なのかなと。僕たちY世代がZ世代に向けて新たに街をつくるという姿勢を見せないと、街に人が残らないですよね。東京は面白くないところって、地方にどんどん流出しちゃうと思うので。そこはやっぱり僕らが頑張って、踏ん張りたいという気持ちもすごいあります。

“何も持っていない子たちに対して、1000円でかっこつけられる場を用意してあげてる”

大谷 徐々に本題に入っていければと思います。僕らは「ミーニングフルシティ」というコンセプトを掲げているんですけど、いきなり都市全体の話をしてもよくわからんって感じもするので、自分はミーニングフルと人々が思える場所の総体がミーニングフルな都市と解釈するようにしていて。ということは突き詰めると、機能的で便利な場所じゃなくて、そこにいること自体が意味深く感じられるような場所が街の中に増えていく、その積み重ねの先に、目指すべき都市像が立ち上がってくるのかなと考えています。なので、まずは「いい場所ってなんなの?」というところから、話を切り出していこうかと。

 正直あんまり深く考えたことないんですけど、いい場所か…。でもやっぱり、可能性とか希望とか…アーティスト性を創発すると言うか、刺激するというか。かっこよく言ったらそういうことかなって。それこそニューヨークで、自分がミュージシャンになれなくて、どうしようかなと思っていた時とかは、パソコン1台持って色んなカフェに行ってアイデアを考えたりとか、猿丸君とダイナーに行ってアイデアしゃべったりとか。その後コンサートに行って希望をもらったりみたいなことがあったんですよね。

傍観者からプレイヤーみたいなところにジョブチェンジできる、そういう可能性というか…アーティスト性みたいなものを高めてくれる場所みたいなものが、ミーニングフルな場所かなと思っています。

僕は個人的に、それが集団に影響するようなことも大事にしたいかなって。たとえばビジネスマンの方が来てくれて、ビジネス以外のこと…会社やめてお店をやってもいいし、昔やっていた書道をやってもいいし…そういうことが増えるといいなって思っていて。そういうほうが、社会はよくなると思ってるので、アーティスト性や創造性を刺激するみたいなところは、ひとつミーニングフルな場所として押さえておきたいですね。楽しいだけじゃなくてっていう。

猿丸 僕も本当に、考えたことないんですよね。いつも直感で、ここが良いか悪いかってやってるんで。なんだろうなぁ。飲食店の話だと、お金を儲ける、おいしいものをつくる、みたいな視点が強すぎて、あんまり面白くないじゃないですか。でも海外だと、コミュニティっぽいというか。たとえば自分をイケてるって認めてくれるお店があったりする。銀座でいえば、お金を持っていることを認めてくれるお店があったりとか。そういう場所って、その人たちにとってはめちゃくちゃいい場所、認められる場なんですよね。若い子たちにとってのそういうお店を、僕はやっているつもりです。彼らは社会に対していろいろ不満を持っていたりとか、お金がないとかでもいいんですけど、それでも、ここでは彼らが主役だよというような、そういうお店をつくりたい。

それが若い子たちにとっての良い場所になるのかなと思っているので、そういう場所をつくりたいというか。自分も歳をとってきて、認められたいものも変わってきてはいるんですけど、やっぱり思い出に残っているのは若い頃に認められた経験で。それで今に至っていると思うので、そこを、次を繋げるためにも何かしていきたいという思いがありますね。僕と剛石君みたいな、一般の人からしたら社会不適合者が、そういう人たちも自由に認められるというか、社会のルールに100%マッチしてなくても生きていけるような場所って東京に今すごい必要だなと思っていて。スーツじゃなくて、Tシャツと半ズボンだけで歩いていて仕事をしている街があってもいいじゃないですか。そういう街をやっぱりつくりたいし、そういう場所が僕はいいなと思うので、自由度の高いエリアというのが、僕はいい場所だなって思いますね。

ただそれだけだとつまらないので、徒歩20分ぐらいのところに真逆の街があったり、みたいなことを考えると、日本橋ってすごい面白い。銀座に行くと、まだ40年50年前のカルチャーが残っていたりとか、女の子のお店で10万払ったりとか、高級車で乗り付けたりとかしてるじゃないですか。そういう場所も20分ぐらいの距離。昼間はサラリーマン、スーツ着てる人がいっぱいいる中で、僕とか剛石君みたいな自由度の高い人間が、裏では着々と動いているというか。そういうところに、希望というか、夢がある。

 ちょっとだけジェネレーションの話になっちゃうんですけど、今日お話聞いてて、普段思っていてやっぱりそうだなと思ったことがあって。彼はよく「若い子」ってフレーズを使うんですよ。若いときからですけど、彼は本当にその意識が強くて。今からの子たちに、何も持っていない子たちに対して、1000円でかっこつけられる場を用意してあげてると言うか。

でも僕はどっちかというと、さっきも言ったことですけど、心が固まってしまっている人たち、今も働いている人たちとか、30代40代50代の人たちに対して、心のマッサージしてるというか。その違いが、お店のつくり方とかにも現れているなっていうのは、話聞いてて思いました。同じニューヨークを見てきても、違うところに行くので面白いなっていう。

大谷 何から生まれるんですかね、その違いは。

 品…かな…(笑)というのは冗談で。地元も近いし、結構似たような感じで育ってきてるんですけど、自分は音楽をずっとやってたんですよ。なのでアーティストとか、そっちの表現みたいなところにずっと浸っていて。彼はもっと、ストリートカルチャーというか。

僕はストリートカルチャーを彼に教えてもらったんですよ、実は。ニューヨークの街を革靴で歩いていたら、「その革靴、今すぐ捨ててスニーカー買ってきて」って本当に言われたことあったんです(笑)ひどいこと言うなと思ってたんですけどね。

育ってきた、自分が若いときにどっぷり浸かっていたカルチャーが違うので、差が生まれているとしたらそこかなっていう気はします。結局自分が憧れるミュージシャンって、若いけど、やっぱり大人じゃないですか。なので、そっちになりたいというか、そっちに近づきたいという思いがすごく強い。

“なるべくダサいところに居たくないっていうのはありますね”

大谷 UDSのお2人いかがですか? 

金塚 僕はあんまり、皆さんみたいな街づくりみたいな視点で考えてなくて。近所にいい場所をつくりたいな、みたいなのは結構あって。基本的に、電車で行けないところの仕事はあんまりやりたくないなっていう感じで思ってます。家が代々木上原と下北と池ノ上の間ぐらいなんですけど、全部一応自転車で行ける。自由が丘はちょっとチャリだと遠いっちゃ遠いけど、30分で頑張れば行けるし、池尻大橋も15分ぐらい。そういうところに、自分も使いたくて、居心地のいい空間で、そこに来る人もきっと喜んでくれそうだなと思える場所をコツコツ、都度都度考えながらつくっている。

実はあんまり戦略性とか、この立地にこうで、とかって考えてなくて、結構場当たり的にやっているという感じではあります。あとは一緒にやる人にもよって、「なるほどね」と感じる部分があったりするので、自分が確固たるものがないとダメだみたいのはあんまりなくて。

 でも場は欲しいんですか?

金塚 欲しいというか…仕事柄、UDSとしてやるんだったら場をつくるというのも仕事になってくると言うか。

(tefu)を簡単にご説明すると、家具のレンタルサービスなんです、根本的には。なんでそれをやっているかというと、デザインや空間の勉強をされている方だと、なにが良い悪いとかわかるじゃないですか。けど、そうじゃない人って、いい空間みたいなものに触れずに過ごしていくことも多いんじゃないかと思って。要はいい空間を民主化したいな、みたいなことが結構根底にあります。ただ、いい家具ってやっぱり高いし、いい空間って結構閉ざされていたりするし…というのがあるので、いい家具をレンタルしよう、と。高い家具でも、レンタルだったらちょっと試せるかな、みたいな。

そのソリューションがベストかというのは置いておいたとしても、敷居を下げるという意味だと、ありな手法なのかなと思い、レンタルサービスをやっていたり。下北とか上原も、結構内装費をかけた空間を作っていて。その上でタイムシェアという、一時的に利用することができるような仕組みを導入することによって、いい空間により多くの人がアクセスできる状況をつくることができる。いい空間に触れる人口を増やす、というのが(tefu)の事業の本質です。

そういう、自分が使いたくて、来る人も使いたいだろうなっていうデザインをしていくっていうのは当然やってるんですけど。場所とか街をどうこうしたいというのは、あんまりそういう視点で考えてきたことはないかもしれないですね。

僕ができることは、建築系のバックグラウンドというのもあって、シンプルにいい空間をつくる、素敵な内装の空間をつくるっていうことなのかなと思っていて。飲食は飲食のプロと一緒に組んで、というほうがいいんじゃないかなと。

 僕も結構そっち派なんですよ、本当は。空間の中だけだとあんまりノイズもないし。けど結局、僕たちの場合だったらカフェのお客さんとか、まわりの人も多いじゃないですか、どうしても。エリアの属性とか、エリアにいる人たちと、否が応でも関係してきちゃうなっていうのはありますよね。

金塚 それはそうです。

 だから同じ、シェアオフィスつくるのにも、上原につくるのと、浅草につくるのと、内装はちょっと違う可能性があるわけですよね。

金塚 はい、全然違うと思いますね。

大谷 いい空間って思う理由というか、ポイントは何なんですかね?

金塚 自分が気持ちいいかどうか(笑)かっこいいかどうかとか。かっこよさは、すごく大事にしてます。僕は…なるべくダサいところに居たくないっていうのはありますね。

一同 (笑)

金塚 1秒でもそこにいるということは、時間を無駄にしている感じがするじゃないですか。なるべくいい空間でいい時間を過ごしたいなと、シンプルに思います。

大谷 それは、家具が良いとか、インテリアがかっこいいとか、外見的部分の話なのでしょうか?

金塚 外見もありますし、音楽とか、人っていうのもあると思います。全体的な素敵さですね。ただ、僕の担当は空間なのかなと思っているので、そこだけはこだわりたい。

大谷 たとえば飲食で考えると、普段の話ですけど、空間が全然なにもしてなくても、そこに立つ1人の人間がめちゃくちゃパワフルだったら、スナックスタイルじゃないですけど、もうそれだけで成り立っちゃうところもありますよね。

金塚 いろんな居心地の良さってあると思うんですけど、わりと見た目は、僕の中では強いフィルタリングになっている感じはしますね。

 今の時代だと、それってすごい尖って聞こえるんですよね。僕も本当はそうやって言いたいんですけど(笑)かっこいいのが良いって言いたいんですけど、みんなそこで裏の意味をつけていったりするじゃないですか…僕もそうなんですけど。だから逆にそこまで言えるのがすごい。

金塚 見た目と言っても、もちろん本物であることも大事です。表層だけっていうのは嫌いなので。

“大きいものを作るときにも、できるだけ個の集合体であることを意識して作りたい”

大谷 川口さんはどうですか?

川口 自分は、引っ越しすること多いんですけど。ミーニングフルという意味で考えると、あまり作られた街には住みたくない、というのは正直ありますね。みんなそうだと思うんですけど。

地元が宮崎で、幼いころにイオンができて、そこでみんなたむろってる、みたいな世代で。そういう、どこにでもあるような場所の中で育ったんですけど。それがちょっとコンプレックスでもあって、東京に行きたいというのがありましたね。なので、たとえば武蔵小杉みたいな街とか、誰かが作った感じのある街には住みたくないっていうのは正直あります。なので、大倉山に住んだりとか、学芸大学とか、東横が多いんですけど、いろんな人の集合でできた街みたいなところは、大事にしてまして。やっぱりショッピングセンターとか行っても全然面白くないですし、もうやめてほしいなって言う感じも。

梁 それ言っちゃって大丈夫なんですか(笑)

川口 結構仕事の話にもつながっているというか、仕事での悩みでもあって。そういう大きい仕事がどんどん来るという状況が。

金塚さんは、UDS内でも、(tefu)を自分の事業のような形でやってるんですけど、僕はわりとクライアントが大きなデベロッパーで、そういう仕事が多くなってきていて。誰が作りたくて、誰のために作ってるのか、という部分がまったく見えない状態で、最大公約数的に作るものに対して「本当にこれでいいんだっけ?」みたいなことを思いながら進めている部分もあります…

大きいものを作るときにも、できるだけ個の集合体であることを意識して作りたいなと思っているんですけど、なかなかそういう考えをプロジェクトに乗せられないという、そういう課題感をずっとモヤモヤと抱えてます。

大谷 色々な人の集合的な街がミーニングフルだと感じるのは、何でしょうかね? 

川口 似たような街が多い中で、シンプルに新鮮に見えるというか。大井町線とかって、昔からやってる店が結構あるんですけど、代替わりしても店の内装を残しながら、新しくコンテンツを入れてやっていたり。その積み重ねが、新鮮に見えるんですよね。ただ新しいハコを作って、新しいものを作りました、っていうことにはあまり興味が持てないというか、ワクワクしないですね。

大谷 個々人の物語が感じられる、みたいなことですかね。

川口 はい、そういうことを妄想しながら街を歩けるか、みたいな。

“いい場所を作ろうと思っても、違うもの、違う要素を、取り入れようとする人が少ない”

大谷 今、皆さん話してもらったような場所を、実際に作っていくことを考えると、どうすればそれができるんでしょうか?多くの場合は、その部分が上手くいかないから、みんなモヤモヤを抱えながらもやっているのかなって思います。スケールが大きくなればなるほど、よりモヤモヤ感は高まって、一定以上のサイズになるとモヤモヤすら感じなくなる。そういう現状に対して、どういうアプローチをしていくべきだと思われますか?

金塚 僕からすると、お二人(梁さんと猿丸さん)は憧れの対象みたいな感じです。さっきみたいなお話、すごいかっこいいなと。ただ、それをUDSとかデベロッパーでやろうとすると…猿真似っぽくやったりしていた時期もあったんですけど、飲食運営したりとか。やっぱりひと味違う感じになってしまう。そこのモヤっとした感じがずっとあります。

結局僕の行き着いた結論としては、自分でやらないほうがいい、ということ。さっきも話したように、空間をかっこよく作るっていうことは最後まで責任をもってやるけれども、思いを持った方と一緒にやる方式にしたほうが、きっと最終的には素敵な空間になるんじゃないかなと。なので、そういうカルチャーやコミュニティは、憧れはしてるんですけど、自分たちだけだとなんか上手くいかないなという印象です。

今進めている自由が丘のプロジェクトで、そういういい形ができたらと思ってます。空間もいいし、コミュニティもあって、アートみたいな部分もあって。結構楽しみにしています。

大谷 カルチャーがわかる人たちに入ってもらって、自由にやってもらう、みたいなことがひとつの方法論だとしたときに、本当にそれができる人たちと、どうやって出会うのか、どうやって接続するのか、という課題も一方であるんじゃないかなと思いますが。そのへんは皆さんどうですか?

川口 今とかだと大谷さんに頼り切りになってる感じです(笑)

 でもそれがひとつの答えですよ。

川口 人と人のつながりですよね。

金塚 僕は直談判、直接お店に行ったりもします。「いやーいいですねー。今度メール送ってもいいですか?」みたいな。

一同 (笑)

大谷 飲食でもなんでもですか?

金塚 小田さん(自由が丘プロジェクトの共同事業者)とかは、大谷さんが紹介してくれて、それは人の縁って感じですけど、松島さん(パドラーズコーヒー等を経営、UDSの(tefu)にも関わる)とかはなんのつながりもなかった。普通にいいなと思って、ちょっと喋ってみたいなっていう下心もありつつ。会社のプロジェクト、というか仕事を使って、色んな面白い人とつながる口実を作っているような。

大谷 金塚さんの仕事の仕方もまた特殊だと思うんですけど、川口さんはどうですか?

川口 資料を作って、持って行って説明するっていうのは結構嫌で、本当は。猿丸さんのときとかも、友達のツテで紹介してもらったりしたんですよね。誰から声かけてもらうとかって、結構意識してやっています。

金塚 確かにそれは大事。

大谷 なんかスタックするポイントというか、モヤモヤに陥るポイントみたいなのってありますか?

川口 さっきも言いましたけど、デベロッパーが相手だと、その場にいない人が決定権者になっているケースも多くて。そこで共有した空気感とか、チームの目的意識みたいなものが、知らないところで跳ね返されてしまって、どうしようもできない、みたいなときが一番つらいです…

お金の話だったり、結局定量的なところでつまづくことが多いですかね。一個ずつ崩していけば、解決できるとは思うんですけど。けど、やりたい人ではなく、やりたくない人が口出して終わるみたいなことが結構あるのは悩みですね。

大谷 梁さんとか猿丸さんは、場所を作るとか、そういうことに巻き込まれることはないんですか?アドバイスしたりとか、一緒に入ってくださいみたいな。

猿丸 デベロッパーの話になるんですけど、日本橋のCOMMISSARYは、三井不動産と一緒にやっているプロジェクトなんですけど、コミュニケーションが上手くいかないところもあります。

あくまでも組織で働く上で、上司からどう評価されるかとかいろんな判断軸であったりすると、「こういうことをしておいたほうが、5年後若い子たちの流れが向いてくるよ」みたいなことを言っても、あんまり理解し合えないというか。そこで対立してしまうのは、さっきも言われていた、現場にいない人たちに決定権があるからだったりして。

一緒に現場にいる方たちが、上に報告を上げて決まっていくじゃないですか。そのときにやっぱり伝わらない。似たもの同士というか、同じようなスタイルで成長してきたような人や近しい考え方を持った人たちと一緒にいるほうが楽なので、そういう人たちの意見が上に上がっていくなという感じがしてしまうことがあります。僕たちみたいにまったく違う生き方でここまで来たタイプの人の意見は、やっぱり気に食わない部分がたくさんあったりすると思うので。

ただ、そこが今の日本のデベロッパーの弱いところだなと思いますよね。いい場所を作ろうと思っても、違うもの、違う要素を、取り入れようとする人が少ない。そういうことに巻き込まれてしまって、辛かったこととか、理解してもらえなかったこととか、面白くないなって思ってしまったこともありました。

大谷 確かに、わからないものを排除していくみたいなことは、大きなシステムの中ではありがちですよね。それって誰かが、「よくわからないかもしれないけど任せてください」と言って強引に突破していくか、あるいは「もうやっちゃいました」みたいな、事後報告パターンかしかないというか。

坂本 事後報告パターン、確かに有効なときありますよね。形になって見せるとわかるみたいな。

大谷 あとは「この人がやるんだったらOK」みたいな。謎の有名人フリーパスみたいなパターン。

坂本 そうですね。さっきも話に出たように、現場の人が上に上げるときの理由が少なすぎるっていうのが原因にありそう。何故いいのかの「何故」をきちんと伝えて、受け取ってもらえないことが多いというか。

猿丸 極論言うと、これもただの文句になってしまうので…それすら突破できるぐらい結果を出さないとダメなんでしょうけどね。でも、やっぱりそれだと間に合わないというか、危機感はすごいありますよね、日本に対して。ニューヨークとか他の国を見ていると、若い子向けの、Zジェネレーションと言われる世代の人口が圧倒的に多いので、それに向けた街が急スピードで作り上げられているというのを、この10年間ずっと見てきたんですよね。けど日本ってめちゃくちゃ高齢者が多いので、そっちに合わせて街づくりが行われていて、ちょっと危ないというか…彼らの居場所がなくなってるんじゃないかなと。

渋谷もそうなんですけど、結局渋谷の再開発って、若い子向けじゃないじゃないですか。あくまでも30代とか40代の人が渋谷で遊べるように押し切ってるだけで、若い子たちからしたらまったく嬉しくない開発で。そういうことがやっぱり、あんまり責任を持たずに街を作ってくるなと思いますよね。

「なんとなくその時流行ってるからこれやったらいいんじゃない?」みたいなところで、埋め合わせでやっちゃってるので、5年間これ続くのかな?とか、そういう不安な商業施設開発とか街づくりが行われているような気がして。最近は、東京自体に居場所がないというか、居心地が悪くなってきていて。その中で、下北とか蔵前とか清澄白河とかは、そういう人たちの受け皿になってるだけで、今は100点じゃないですけど、たまたま居心地が悪くなってどうしようもない人たちが流れている。

日本橋は、三井さんとか、大きいデベロッパーが関わっているので、そういう子たちが、こっち(日本橋)に来てくれたらめちゃくちゃいい居場所になるんじゃないのかな、と僕はすごい夢見てるんですけどね。電車で10分ぐらいで家賃5万円とかあるじゃないですか、まだ。錦糸町とか、上野のほうとか、浅草のほうも。住む街はいっぱいあるので。たぶん発展する要素がたくさんあるというか。でも下北とかはやっぱり、ある程度周辺も値上がりしちゃって、今若い子たち、無理して住んでると思うんですけど、家賃が高くてみんなたぶん今、無理矢理いるという感じだと思うので、そういうのってやっぱり良くないなとは。発展する限界が見えるというか。

“上司に褒められるためにやっているか、本当に次の世代に楽しんでもらう場所を作るか”

梁 何かトラブルになった時って、お互い言い分があるじゃないですか、当たり前なんですけど。その言い分って立場が違うから、お互い理解できなかったりするんですよ、当然。だから話の落着地点がどうしても見えないん。だから、局所的にトラブルをどう収めていくかということは、僕個人的にはちょっと諦めモードで。

そういうことも踏まえると、大谷さんがいつも言っているように、時間軸を巻き戻す必要があると思って。ある商業施設を作るんだったら、そのプロジェクトのスタートから猿丸くんみたいな人とかが入って、上の人もいる段階で、なんとか作っていくみたいな。僕たち社会不適合者なので、資料とかちゃんと作らないんだけど、それをサポートしてくれる人がいたとして、上手く伝えていく。最初からブレンドさせることでしか、自分たちみたいな存在が異物にならない方法はないんじゃないかという気がします。

坂本 考え方とかを上流からすり合わせておくみたいなことですか?

梁 そうですね。上流からイメージと言語を揃えておくしかないのかな。なんか色々考えたんですよ、期待値を調整して、お互い50ぐらいのやりたいことしかできない方法とか。けど、それだったらやりたがる人いないよな、とか色々考えると、今言ったような方法しか解決の方法がないんじゃないかって。最初からいなかったのなら、最初のところまでわざわざ巻き戻してやり直すという、精神的タフネスも必要かも。

猿丸君は、アイデアとプロデュースの力に関してはすごいあるんですよ。なので、今回の日本橋での話とかも、彼の力、影響力とかまで含めて、もっと利用したらいいのにと思うんですよね。おだてて、猿を木に登らせて、じゃないですけど、好きなことをやらせてあげて、そうすればすごいいいものが生まれるんじゃないかな。もちろんその上で、コンプライアンスとか含め色んな問題で、できないことはあるんでしょうけど。

坂本 お互いできないところを頼りあって、けど同じゴールを見て、という形が本当はいいんですよね。

梁 そういうふうにポジティブな話し合いにするためには、結局やっぱり最初のところで、ある程度の希望みたいなものを共有しておかないと、前を向いた解決策を出し合うということにならない。

坂本 猿丸さんがデベロッパーと話をされていて、一番ここがわかりあえないみたいなこととか、ここが解けないみたいなことって、どういうポイントなんですかね?

猿丸 僕が言うのもあれなんですけど、たぶん僕世代はみんな同じことを思いつつ働いているんだろうなと思います…評価軸の問題というか。上司に褒められるためにやっているか、本当に次の世代に楽しんでもらう場所を作るかって、人によって違うなと思うんですよ。僕は結構若い子たちに評価されたいと思うタイプなんですけど、上から評価されたいタイプの人と喋ると、やりづらいなと思いますよね。見ているところが違うから共通言語が生まれづらい。僕なんかは逆に上世代を悔しがらせたいと思ってやっているところがあるんですけど、上に評価されたい目線だと、今まであったブームの中でのことしかできなくなっちゃうじゃないですか。

坂本 上の世代の人と、どうやったらわかりあえるんですかね?

猿丸 理解し合うっていうのは、なかなか難しくて。歴史を見ていると、多分一生ないんじゃないかって思うんですけど、圧倒的なものを作らないと納得してもらえないなと思いますね。僕もまだ力不足ってことなんだと思います、もっと頑張らないとな。

梁 彼、政治家なところもあるので、「実は上司にこういう人がいて」とか「社長はこういう考え方で」っていうのを共有してくれたら、担当者さんと一緒に、それに合わせる形で提案もできたりするんじゃないかなと思うんですよね。今は正直、見えない状況で戦っているので。そういうことのためにも、企画の最初から入れておくと、一番手っ取り早いのかなと思います。それが無理でも、なんとか顔を突き合わせる…それこそ飲みに行くとかでも、そういう意外とアナログなことが効果を発するんじゃないかなっていう。顔も見えない相手と戦うのって結構つらいですよね。もちろんデベロッパー側から見ても彼のことが意味わかんない宇宙人って見えると思うので、人間同士でやるっていうことを再確認できたら良いんじゃない?っていう気もします。

猿丸 ニューヨークのことばっかりで面白くないですけど、ニューヨークは、ついこの間までドラッグ漬けのどうしようもなかったようなアーティストを急に抜擢したりして、お店や建物を作っちゃうとか、あるんですよね。一般的な評価がない人でも、センスがあれば評価されて抜擢できる。そういう人が、デベロッパーサイドでいたりとかするからだと思うんですよね。僕はまだ評価されるような人じゃないと思うんですけど、今後はそうやって「こういう人に仕事を頼めば、今までなかったものが作れるよね」みたいなこととか、これまでになかったアイデアが出るような雰囲気を作っていくしかないと思うんですよね。

梁 デベロッパー内に、クリエティブディレクターやプロデューサーみたいなポジションってあるんですか?

川口 ないと思います。

大谷 事業担当者って感じですよね。

猿丸 もしかしたらそれって、これから必要なのかもしれないですね。大谷さんなんかはまさしく最適だと思うし。坂本さんも一緒に、2人が来たら、事業者側もすごいわかってくれるっていう感じとか。

坂本 すごい必要だと思う。この人が言えばっていう人が中にいるとかは結構大事、中じゃなくても、パートナー的なことでもいいのかもしれないけど。

剛石 そうですね。もしかしたら外部でも良いかもしれないですけど、そういう、街づくりのクリエイティブディレクターみたいな人たちって、いてくれたらすごいありがたいなって思うかもしれないですね。

大谷 さっき梁さんが上流まで巻き戻す必要があるって話をしてくれたように、自分は「ゲームの初期設定を変える」って表現しているんですけど。面白くない初期設定で進んでしまっているゲームだったら、この先どう頑張ろうが、そのゲームのルールの中でしか遊べないから、ルールが決まる前段階まで戻して、ゲームの初期設定をセットし直す、というイメージで考えていて。

初期設定のときに自分が何をやるかといったら、問い掛けなんですよね。このゲームは何を楽しむゲームなんだっけ?というのを問い掛けると、そこで初めて言語が合ってくる。使っている言語が違っても、頑張って合わせておけば、何が面白いんだっけ?という部分だけ握れていれば、わりと上手くいくような気がしていて。それが、クリエイティブディレクション的なことなのかな。

猿丸 ご協力お願いします(笑)

“ストッパーみたいな役っていうのは、お金払ってでも入れたほうがいい”

大谷 結構政治的な動きとか、どのタイミングで誰になにを話してもらうかとか、そういうのが結構大事な気がします。

梁 それって、プライベートの時間を使って、クライアントと飲みに行ってみたりとか、現場を見に行ったりとかってことまでするんですよね。そういう人がいたらすごいですよね。街づくりというか、不動産業界でそういう会社とか人っているんですかね?なかったら、むしろ皆さんで作ってほしいですよね。そういうのってプロジェクトマネージャーになるんですかね?プロジェクトマネージャーはデベロッパーの中にいるのかな?

大谷 事業担当者がプロジェクトマネージャー的な場合が多いですよね。事業オーナー兼プロジェクトマネージャー。

梁 そう考えると、やっぱり外部のほうがいいのかなっていう気もしますね。

坂本 上流に外部を入れるとかって、今までの既定のやり方で進めていると、デベロッパーの中からは生まれない発想だったりするんだと思うんですよね。だから巻き戻されちゃうのかなって。梁さんが言ったみたいに「最初のところから、外の目線が入っていたほうがいいよね」みたいな視点って、内部からは生まれてこないんだよなぁ。

大谷 そういう相談をする会社とかって、あるのかな?

梁 K5でのメディアサーフがいてっていうのは、わかりやすいですよね。平和不動産がメディアサーフをうまく活かしているというか。店舗の選定だけじゃなくて、現場との言語のすり合わせとか、たぶんやってたんだと思うんですよね。

大谷 確かに。

梁 これは絶対、やったほうが良い仕事ですよね。それになってくださいよ。

猿丸 兜町で、オイスターバーをやる案があったんですけど、そのときにメディアサーフが間に入ってくれて。やっぱり彼らがいることでスムーズだなと思いましたね。彼らはスウェーデンとか、ヨーロッパのほうに留学していた組が結構いっぱいいるんですけど、彼らが向こうで見てきたものがあって、それでいい街に対するイメージがあるんですよね。彼らの友達、ヨーロッパの友達とかが日本に来たときに、「東京面白いよね」って思ってもらえるような街づくりを目指してる感じがする。そういうのってすごい大事だなと。日本人だけでなくて、グローバルで見たときに、かっこいいと思われるものを作らないといけないなと、彼らと仕事をしたときに思ったんですよね。

デベロッパーの中でも留学してた人はいっぱいいるとは思うんですけど、「自分たちの仕事帰りにこんなんあったらいいよね」で店を作ったりするじゃないですか。それだと目線が足りないんですよね。自分達目線が強くなったりとかするのを「ちょっと待て」って言ってくれる人って、大事なんじゃないかなって思うんですよね。ストッパーみたいな役っていうのは、お金払ってでも入れたほうがいいのかなって思いますよね。月5万とかでもいいんだと思うんですけど。

梁 月5万はちょっとやめてください(笑)

猿丸 でもそれぐらいカジュアルでもいいと思うんですけどね。「それって今、実際あんまかっこよくないですよ」とか、カジュアルに喋れる存在って大事やなと。社内で盛り上がっちゃって「それやろうぜ」みたいになって、まわりの意見を聞かずに突き進んじゃうことって結構あるじゃないですか。それをストッパーとして止めたりとか、「本当にそれでいいのか?」みたいなことを確認できる人がいるといいですよね。

兜町はたぶん、平和不動産とメディアサーフが話し合って、メディアサーフが「こういうことしたい」っていうのを、平和不動産がしっかり受け止めて。すごい成功例だなと僕は思いますね。結果やっぱりおしゃれな、今までいなかった層がちゃんと兜町に来てくれていますよね。観光地としても、旅行の人が来たりしている、そういうのを見ると、素晴らしいなと思いますよね。こちら側(日本橋)はまだそれができていないんですけど、メディアサーフみたいな人がいたりしたら、一気に変わりそうだなとは思います。

梁 僕はもう見えましたけどね。ミーニングフルシティチームのお2人が政治担当して、アイデアと人のつながりがある猿丸くんが、ある意味クリエイティブディレクターとしてそこにいて、こういう3人でプロジェクトをやっていくとかね。彼はもう前に出ないで、うしろでぐちゃぐちゃアイデア言ってるだけみたいな。メディアサーフと同じように、面白いことができるんじゃないかという気がしますよ。どうですか?そんな会社があったら、UDSさん、ちょっと使っていただいてもいいですか、月5万で!

一同 (笑)

“説明可能かどうかのほうが重要。カルチャー的に良い悪いって判断は難しいから。”

坂本 けどほんと、何かいろんなことの中間にいる会社が求められている感じしますよね。

梁 本当にそうだと思います。

大谷 まさにマガジンの1号目で、K5のインタビューをしたんですよね。当時「館長」というポジションだった山下君に。そのときに彼が、「友達としか仕事しない」みたいなスタンスで兜町は立ち上げていったと言っていて。それが結構メディアサーフのイズムっぽいところがあった気はしていて。

それってもうちょっと拡大解釈するなら、「友達と思えるやつとしか仕事しない」っていうことだと思うんですけど。仕事の関係性を増やしていくというよりは、仲間を増やしていくっていうスタンスで、関係性を広げていきながら仕事を作っていくみたいなやり方なのかなと。

こういう話をしている中で、いつも同じ結論に至るんですけど。街を作ろうってなったときに、その担い手が今いない。飲食ちゃんとできて、カルチャーをつくれて、かつ建物をつくれる。そういうことにちゃんと応えられるような会社って、意外とないよねって話。必ずそこに帰結していくんですよね。

梁 ちなみに、なんで今ある会社は、そうなれないんですか?

大谷 やってる人が自分事化してないからですかね?ファッション的な感じというか。この人とこの人のコラボでこんな店できたよ、素敵でしょっ、みたいな感じ。リアルなカルチャーには落ちていかないというか…

梁 でもそういう会社は、仕事が早いとかもあるんじゃないですか。上司に報告する上では、ちゃんとしてるのと、期日を守ること。当たり前のことはちゃんとやる。そして表面的には若い子向けのコンテンツが充実してるから、取り組みやすい、みたいな感じはあるでしょうね。

坂本 1回フォーマットができちゃうとロスも少ないし、予期せぬことが起きない、という視点では頼みやすいというのはありそう。

猿丸 そうですよね。でもそういう会社が、選択肢として、もっとたくさんあったらいいのになっていうのは、ほんまこっちサイドとしても思いますよね。

梁 ちなみにUDSさんってデベロッパーっていう立場なんですか?

川口 違いますね。まさに間の存在というか。

梁 そうなんだ。

金塚 ただ、中途半端ではあります。デベロッパーの社内で詰まるのってそういう社内政治的な話か、収益性じゃないですか。それに対して、誰がどの順番で話すか、みたいなところとか、どうビジネスに組み立てられるのか、みたいな提案が強みだと思ってるんですけどね。UDSとしても得意な人がいる。

たぶん、先ほどお話されたような話とか、飲食の方がこれまで経験的にわかっていることって、言語化できていないだけで、ロジカルに説明できることもあったりするじゃないですか。多分社内では、「なんでこれがいいのか」っていう理由があればいいだけなんですよね。説明可能かどうかのほうが重要。カルチャー的に良い悪いって判断は難しいから。これで報告しますっていうセリフが作れることが重要。

梁 なるほど。脚本家になってってことですか?

大谷 翻訳作業的な。

金塚 そうです。間に立って。

川口 社内を通していくためだけの資料を作るっていう仕事も結構あります。対外的にじゃなくて。

梁 UDS内でってことですね。

坂本 デベロッパーのための、っていうことですよね?

川口 そうそう、担当者が上げていくための資料を作るみたいな仕事も結構多いです。結構それがメインな気がします。

梁 めちゃくちゃいい会社じゃないですか!

川口 その中で、抜け落ちてるところもたくさんあるんですけどね。それこそ、僕らもデベロッパーとしか対話せずに組み立てていくこともあるので、大谷さんが言っているような、つくる前からちゃんとチームを組成して、その上で提案していくという作業が必要だなっていうことも感じてます。

大谷 現実的にはそれは可能なんですか?

川口 可能だと思います。そういうスタンスでやりますって最初にお伝えすれば、むしろそれは信頼にもなりますし。けど、UDSはそこが弱いっていうのは正直ありますね。

大谷 なんで弱いんですか?

川口 そもそもつながりが弱い、個人レベルで。意外と遊んでる人が少ないですね。それで言うと、机上の人が多いかもしれないです、ちょっと反省。

大谷 例えば、やばいやつが1人入れば、いい方向にいくんじゃないですか?どの担当者もその人にとりあえず聞きに行くみたいな。そういう人が社内にいて、「飲食は今、何が熱い?」って聞いたら、「あいつ」って感じで言える人みたいな。

川口 そういう人がいたらめちゃくちゃ変わると思います。

金塚 メディアサーフさんと、結果的にやっていること、かぶることもあると思うんですよね。けど、想像ですけど、メディアサーフさんの方が、ビジネスサイドというよりは、「面白いですよね」「やるべきだよね」とかっていう、文脈優先で説得してるんじゃないかなと。僕らは逆にそこがあんまり強くないので、ロジカルに数字を手掛かりに崩していって、今までと違うものをどうやるかというような形なんですよね。

川口 もともと不動産出自の会社なので、ロジカルに、社会の仕組みの中でどうやるかって考えるところが強み。

金塚 だから新しいビジネススキームをやるときとかって絶対抵抗があって。やったことないからロジックなんて考えないじゃないですか。それも、だから、なんとなくそれっぽい感じで作って、確率的にはいけるはず、とするしかない。

大谷 銀行から資金調達するときの資料みたいな。

金塚 そうです。仮説を作ってあげないと。

梁 たとえば猿丸君みたいな、彼も飲食業界のインフルエンサーみたいな感じの人と契約して…月20万とかで契約して。生々しい話で申し訳ないけど(笑)。なんかないですか?みたいなときにつないでもらったり、聞けたりするというのは結構有用なんですかね?

川口 めちゃくちゃ有用ですよ。

梁 仕事あったわ!プロデューサー!

一同 (笑)

猿丸 軽い感じでやれたらいいですよね。僕、子供のときの感覚が結構強く残ってて。場所づくりも、秘密基地を作るみたいなノリなんですよね。小さい頃って、親に決められたエリアで遊んでて、その中で自分たちで秘密基地みたいなのをつくったりしたじゃないですか。あの感覚に意味があったりするので、そういう、直感で動くことに対して許可してくれるような大人がいたら嬉しいなと思いますよね。

理由っていうのは、後からいくらでも作れると思うんですけど、実際そのときに、遊び感覚でパッと思いついたことが一番良かったりとかすると思うんですよね。そういう表現ができる場所をつくれたらおもしろそうだなって思うし、そういう企画を、若い世代に投げれるようになっていくといいですよね。

地方の商店街のお店を全部、同時期に、みんなでオープンさせて、一気に観光地作ろうぜみたいなこと。そういうのってビジネスっていうより面白そうみたいなのがあるじゃないですか。そういう企画を立てて、みんなで動けるようになりたい、お金の問題はあるけど。

梁 逆に言ったら、事業者から見たデベロッパーの魅力って豊富な資金力。自分たちだけでは絶対にできないレベルのことができるというのはすごく魅力なので、本当は信用性すごい高いはずなんですよね。商店街のアイディアはすごい面白いと思うんですけど、1人で商店街の土地を全部買うって、お金があっても無理だろうなと思うので。あとは翻訳者がいればって感じですよね。

猿丸 なんかありがとうございます(笑)

“めちゃくちゃ若い子をぶつけるっていうのはありかもしれないですね”

大谷 そろそろ時間ですが、最後に何かあれば。

川口 そういう中間をちゃんと埋める媒体というか、そういうものがあったらすごく変わりそうですね。

大谷 そうですよね。ミーニングフルシティは、チームというか、誰でもアクセス可能なプラットフォームのようなものであるといいなと個人的には思っていて。そこにはアカデミックな視点を持っている人、実際に事業を行っている人、飲食をやっている人、カルチャーをつくっている人、デザイナー…そういう人たちが、今日話したような議論を常にできるような場をイメージしていて。「何かしたい、変えたい」ってときにアクセスすれば、めちゃくちゃインスピレーションを得られるし、誰にアクセスすればどうなるのか、という答えも得られる、みたいな。そういうものとして成立させていくといのが、今後のビジョンとしてはあります。

猿丸 つくる世代の話に、ちょっと戻っちゃうんですけどいいですか?日本ってつくることの決定権とか、中間に入る世代って、年寄りになっちゃうじゃないですか。上下関係があると。

敬語とかもそれの一部だと思うんですけど、年上が年下を押さえつけるとかっていうの、僕結構見るなと思っていて。年上だから偉い、という価値観が一部ではあるので、まずそれをなくせるようになったら、きっちりいいものつくれると思うんですよね。年上が年下のアイデアを先に仕切ってあげるみたいな構図ができたりとか。もちろん、長く生きている分経験値があると思うんですけど、でも、アイデアに対してはだんだん面白くなくなってきているとは思うので。

例えば21歳ぐらいを大抜擢して、彼らのやりたいことを、上の人たちが大人が理解できるように仕立てていってあげるような。王様を支える部下みたいな構図みたいなのができたらめっちゃ面白いものを作れそうですね。

坂本 そういう役割分担、理想ですよね。ちゃんとそれぞれが役割を担っている。

猿丸 クリエイティブディレクターも、結果残してる人を入れようとするじゃないですか。そうなってくると同じものしかできないし、そういうものって、実際は流行ってるか流行ってないかわからないものがいっぱいあるじゃないですか。その人がすごいだけで。「あの人がやってるんだって」っていう言葉だけで終わっちゃうことがすごいある。クリエイティブディレクターは全然有名じゃなくて良いと思うんですよ。逆に陰に隠れてまったく表に出ないぐらいの人がいいと思うんです。すぐに知名度のあるフィーの高い人と組もうと思っちゃうんだと思うんですけど、大学生とかでもいいんちゃうかなと思って。どうしたらいいと思う?っていうくらいのレベルで会話をして、「こっちのほうが俺たち友達と遊べるかな」みたいな意見を聞くだけでも良いなって思いますよね。

そういうチームであれば、クリエイティブディレクターという肩書きすらもいらないかなと思って。いろんな世代がちゃんといて、若い子たちの意見を30代が引き上げて、上の世代にわかりやすく説明するみたいな組織ができたらおもしろいものがつくれそうだなと、今日話して思い出して。

大谷 大学生の意見を聞いたとしても、それを説明する人が上の世代になっちゃうと、どうしてもそっちの言語に翻訳されちゃうんですよね、結局。「ヒアリングしました」という事実だけで終わってしまうことがよくあるというか。なので、そういう横断的な視点が、上の世代にフィルタリングされることなく、ローデータのまま活用されていく状態をいかにつくるか、というのが一番のポイントだったりする。

猿丸 そうですね。

梁 ちょっと知りたいんですけど、たとえば大学生を王様のところに連れていくとするじゃないですか。あ、多様っていうのはデベロッパーの中の偉い人みたいなイメージで。その時って、その大学生は海の者か山の者かわからないから、すぐ弾かれちゃうと思うんですよね。そこに、たとえば大谷みたいな「世界の珍妙なものを王様に紹介する職業」みたいな人がいたらいいなと思ったんですけど。

さっきの「ローデータのまま」っていうことで言うと、王様の立場にいる人たちってどういうスタンスなんですかね?海の者とも山の者ともわからない人の言うことはそれだけで納得しないのか、それとも「自分にうんって言わせてくれよ」、形さえ整えてきてくれたら「うん」っていう準備はできているのに、っていうスタンスなのか。本当に自分の価値観で判断しているのか、どっちなんですかね。

王様は王様に求められることだけやって、現場に近いところはよろしくっていう形もあるのかなとも思ったんですけど、どうなんだろう。意外と積極的に関わってくる感じなのかな。

大谷 何が好きなのかっていうことを問うみたいな感じじゃないですかね。

梁 王様は自分のセンスを入れていきたいんですかね?

大谷 あるものを提案すると「これは違う」、「じゃあこれは?」っていうと「これも違う」っていうことだけを繰り返していると、それがどこに向かっているかわからなくなっていくって感じがありそうですよね。「そもそもあなた何が好きなんですか?」みたいなことを問うていくというか。

川口 本当にすごい人って柔軟じゃないですか。そういう柔軟性がないのは結局ちっちゃい人っていうだけなんじゃないですかね?

梁 でもちっちゃい王様がいっぱいいるわけですよね、実際は。違うのかな。

坂本 王様の立場にいる方たちって、過去の大きな成功体験をすごく持っている気がしていて。金融商品として不動産を扱ってきた人たちだから、大きい金で大きい利益を生む、それが不動産業の揺るぎない価値だっていう価値観はとても強いと思うんですよ。その世界では、確かにものすごい優秀な方たちなんですよね。で、その方たちは、「そのルールのことは俺が一番わかってる」ってやっぱり思っていると思うんですよ。事実そうなのかもしれなくて。

その上でどうしたらいいかって話なんですけど。彼らは下の世代とかをあんまり信用してないんですよ。たとえば60代の社長は50代を信用しづらくて、「君たちが知ってることを俺は全部知ってる」ってなっちゃう。「だから君の言うことは信用できない」ってなっちゃいがちというか。価値観とかルールがほぼ同じだから。

けどもしかしたらなんですけど、たとえば経営会議とかに20代の子とかが入っていって、別の価値軸とか目線で「これイケてますね」「それイケてないっすよ」って言ったほうが、意外と「あ、そうなんだね」ってなりやすいんじゃないかって気もして。価値観が違うからこそ受け入れやすい、みたいなこともあるんじゃないかなと思って。

グラデーションで世代が存在していることによる弊害もちょっとありそうだなって。中間をパーン!って取り払っちゃった方が、上も決めやすいみたいなこともあるのかなとか、ちょっと思ってて。

金塚 なるほど。

猿丸 それありますよね。

川口 中間が一番価値観を持ってなかったりとか、ありますよね。中間にいる人が一番資料を作らされたりするから、とかもあるのかも。自分が納得するというよりも、情報を色々集めて持っていったりとか。

坂本 たぶん中間にいる方もそう思いながらやってたりすると思うんですよ。「これ王様にはわかってもらえないだろうな」って。辛い…

猿丸 外国の企業とかが入ると「うんうん」って言っちゃうみたいなやつに近いですよね。

坂本 そうそう。「よくわからないけど、まあいいんだろうな」みたいな。

梁 めちゃくちゃ若い子をぶつけるっていうのはありかもしれないですね。

坂本 そう。中途半端にわかりあわないほうが判断しやすいところありそう。

“自然発生的に、場所だけ提供して、あとは自由にやらせるみたいな形が一番面白い”

猿丸 今の藤原ヒロユキさんとか、山本康一郎さんとか、カルチャーを作っていた50代60代の方って、デビューしたのが18歳とかなんですって。彼らが作りたいことを、大人たちが作らせてあげたというか。今も彼らは存在感があって、まだ現役バリバリで、トップに君臨してる感じじゃないですか。

大人が若い世代に、未完成のままでも良いからやらせてみるっていうスタンスが、すごい大事なんだろうなと。バブル期に10代20代だった方の話を聞いてるとすごいそれを感じるんですよね。

秋元康さんとかも、16歳ぐらいからラジオ番組を作って、18歳のときにおニャン子を作ってる。今考えるとすごいことじゃないですか。もちろん若い世代の人口が多かったっていうのもあるとは思うんですけど。大人たちは若い世代にムーブメントを作らせた、仕事を振っていたというのが、バブル期は普通にあったんですよね。

お笑いで言えばとんねるずとか、ダウンタウンとか。当時18歳とか20歳とかの少年に冠番組やらせたりしていた。それで結果が出ていたから、というのもあるとは思うんですけど、当時は若い子たちに新しい世代を作らせた、たくさん大人たちが投資していたってことだと思うので、それが今、色んなジャンルでできるようになったら面白いんじゃないのかなと。

それに、一歩日本を飛び出せれば、若い世代の人口ってめちゃくちゃ大きいので、日本だけじゃないんですよね。18歳とか20歳ぐらいの子たちが売れたら、日本以外でも売れる可能性がかなりある。日本でどうこうというよりは、世界で売れるための仕組みを、上が抜擢してやらせてあげられるようなことができたら、すごい面白くなりそうだなと。三井不動産さんとか、大きなデベロッパーとかがそれをやるとめちゃくちゃメッセージ性があって面白そうだなと思いますよね。

梁 もしくは違うプラットフォームってないですか?テレビとかも80年代はすごく盛り上がっていたけど、今同じことをやろうとしても、視聴率取れるのかって言うと、もう難しい。その中でYouTubeという新しいプラットフォームで若い子たちがバンと出てきたみたいな。都市づくりのYouTubeみたいな、新しいプラットフォームみたいなのがあってもいいかなって。

坂本 規制が少なくて挑戦がしやすい領域ってことですよね。

梁 そういうのないですかね?

坂本 ありえますよね。コンプライアンス緩くてもここはいいよ、みたいなね。

梁 緩くても良い、そうそう。山の中とかでも良いので、何かね。

金塚 治外法権みたいなところ。

猿丸 日本橋とかって、大きな商業施設を建てたりとかだけじゃなくて、中小のビルを増やして、そこに若い子たちに入らせようというコンセプトが今も残っていると思うんですけどね。

今、TikTokとか見てると、若い子たちの中で、ラーメン屋をオープンさせるコンテンツとかが結構流行ったりしてて。若い子たちにそういうのをやらせるのはちょっと面白いかもしれないですよね。家賃どうこうっていうよりは、売上の何%を取るみたいなイージーな形で。

坂本 できるはずですよ。

猿丸 挑戦しやすいですよね。

梁 ですね。そういうゾーン作ってくださいよ。

大谷 現状であるものでいえば、「暫定利用」みたいなのは、それに近いんじゃないかなと。

坂本 近いですね。あと、ビルを抱えている開発とかって、ある程度の負担力はあるはずなので、商業的なコンテンツは少し遊べるはずなんですけどね。

梁 上で収入があるから。

坂本 そうそう。オフィスもきつくはなってくでしょうけど。

猿丸 僕今、浅草橋に家があるんですけど、あるビルに、若い子たちがブワーっていたんですよ。話を聞いたら、同世代のクラブみたいなのを月1でやってるって言ってて。そういうのを商業施設とか、オフィスビルとかがある場所で、若い子たちがもう始めてるんだなと思うと、それをちゃんとデベロッパーサイドが提供したりするとすごく面白くなりそうだなと思ったんですよね。自然発生的に、場所だけ提供して、あとは自由にやらせるみたいな形が一番面白いものが生まれるかなと。

坂本 責任を解放する、みたいなことも大事かなと思っていて。デベロッパーの見てる物件はデベロッパーが全部責任を持たなきゃいけない、って形だと、「コンプラが」とか「地域住民がとか」ってどうしてもならざるを得ない。けど「ここは僕たちは責任持ちません」みたいなところがあると、もう少し遊び代みたいなのが出てくるのかなって。

大谷 特区みたいな。

坂本 そうそう。

大谷 ひとつでも、そういう「あれいいよね」っていう事例ができちゃえば、他のデベロッパーもやり出す気がしますよね。「あれやってるじゃないですか」って言えば上が通るみたいな。

梁 無法地帯作りたいですね。

猿丸 お金の問題で若い子たちって動かなくなっちゃうので、そこをうまく解放する場所を作れるといいなと思いますね。オフィスもなかなか埋まらなくなってる、そんなに簡単にテナントが決まる時代じゃないじゃないですか。であれば、そういうところが出てきたら、若い子たちに無料で解放する方が面白そうというか。お金がかからずに挑戦できる場所を用意する。行政っぽくなるんじゃなくて、自由にできるように。

梁 でも本当に、デベロッパーが責任を持たなくていい状態にする、そのための契約なりなんなりをやっていけたらめちゃくちゃいいですよね。

坂本 外に向けてもそう打ち出しとくみたいなね。

梁 そうそう。「僕は知りません」みたいなね。(遅刻してZoom参加する猿丸さんに対して)てか、そのモデル風の写り方はもうええわ!

猿丸 すいません(と言いながら背景の海を移す)。

梁 いやいや、海見せんでええねん!

坂本 けど、目の保養だ(笑)

大谷 そろそろ大丈夫ですかね(笑)、みなさん今日はありがとうございました。

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